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(28.9.29) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオ等を掲載しています。 「桃ノ木 栗の木 左遷の木(第二回)」

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シナリオ「桃の木 栗の木 左遷の木」(その2)

この作品は私が喜劇に挑戦しようとして作成したシナリオです。第一回目からの続きです。


〇 A銀行本店の業務室(翌日の昼間)


 瀟洒な事務室。窓から皇居のお堀が見える。精力的に仕事をこなしている山崎。利発そうな男性の部下3人。これも精力的に仕事をこなしている。今日は転勤の辞令が発令されるため山崎は落ち着かない。

部下A「課長 今日はなんか落ち着きませんね」
山崎「はは、そうだね。転勤の辞令が出る日は他人事とは思っても落ち着かないものだ」
部下A「ひとごとじゃありませんよ、課長が支店長に昇格するって、もっぱらの噂です」
山崎「(うれしそうに)いや、そんなことはない。支店長には同期のトップがなるから、それは僕じゃないよ」
部下A[いえ、課長は間違いなくトップですよ。いつも中枢のポストばかりにいるじゃありませんか。それにこれは酒の席で聞いたのですが、人事部長が同期の中でトップは山崎課長だと言っていました」
山崎「(ほくそえみながら)いやいやそれは君の聞き間違いだろう。(辞令が送られてくるファックスのほうを見ながら)しかし、今回は辞令が出るのがやけに遅いね」

部下B[きっと、A町支店の支店長の辞令でてこずってるんですよ」
山崎「(どきっとしながら、しかしさりげなく)ほう、それはどうしてだね」
部下B[あれ、課長は知らないんですか。あそこは左遷者のたまり場だし誰を左遷者にするか決めかねているんでしょう」
部下A「しかしなんでうちみたいな大銀行があんなちっぽけな街に支店を構えているのかな、農協や郵便局並みだよ」
部下B「僕もはっきりしたことは知らないんだけど、あそこは政治銘柄で何か特別の場所らしい。あそこの代議士の大川大作とつながっているらしいけど、大川大作といえば保守政界の裏のドンといわれている政治家だからな」

部下A「だからと言って何の仕事もないところに支店を構えているのは収支上問題があるはずだし・・・・まあしかしわが社にも島流しの場所がなければならないからそのためじゃないかな」
山崎「おいおい、僕も15年前にA支店にいたんだよ」
部下A[あ、いえ、言っているのは支店長とか管理職のことですよ。課長が左遷だったはずはないじゃないですか。課長は間違いなく当行のエリート中のエリートです。しかしA支店の支店長にだれがなるか見ものだな。課長は池袋か新宿とうわさされてますよ」
部下B「いや、大手町じゃないかな」
山崎「(威厳を込めて)おいおい、君たち、勝手にそういうことを言っちゃいかん。人事はあくまで公平なものだ。A町の支店長になるのはその人がそれにふさわしい実力だからだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 急にファックスの受信を知らせるブザーが鳴る。

部下A[おお。やっと来たぞ」

 部下が全員ファックスのそばに集まる。山崎は気になるがあえて机を離れない。

部下A「辞令が出たぞ、おお、新宿は木村さんか・・・」

 名前が出るたびに心臓の鼓動が高鳴る山崎

部下B「大手町は高木さんの返り咲きか」

 ヒア汗が出てのどが渇く山崎。前に置いてある紙コップから水を飲む。ファックスは次々に出てくるが山崎の名前はない。部下もだんだん興味を失っていく。

部下A「あれ、大支店はこれでおしまいだ。(山崎に向かって)残念ですが課長は今回対象外みたいですよ」
山崎「(がっかりしながら)はは、君たちと仕事が続けられるんだからこんないいことはない」

 まだファックスを見ている部下A。興味を失って席に戻ってきた部下Bが部下Aに声をかける。

部下B「いつまでも見てても、あとは雑魚ばかりじゃないか。(おどけて)下らんものを見てないでちゃんと仕事をしなさい」
部下A「いや、まだA町が残っている。ここに一番興味があるんだ。ここは何しろ左遷者の巣だし、前任者の川俣さんは悲観して自殺をしたじゃないか。だれがビケかわかるし、興味がないほうがおかしい」
 
 最後のファックスが出てくる。

部下A「さて出てきたぞ。世紀の不幸の王冠は果たして誰の頭上に輝くのか・・・・ジャンジャカジャン・・・それでは発表・・・・・・・・・」

 部下Aが急に黙る。

部下B「おい世紀の王冠は誰の頭上なんだ、早く言えよ」

 何も言わない部下A.山崎が気にしてファックスに近づく。

山崎「どうしたの。はは、だれがA町の支店長になったの」

 ファックスを手に取る山崎。一瞬呼吸が止まる。蒼白になる山崎。部下Bが声をかける。

部下B「課長、だれが不幸の王冠をかぶったんですか」

 部下Aが慌てて制止して部下Bに何かささやく。驚く部下B。山崎はファックスを手に持ったままうわの空で廊下に出ていく。黙って見送る部下たち。

 

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