(28.5.19)アメリカと中国がコケて世界同時不況に突入した。
何度も同じことを言って恐縮だが、成長しきった経済がさらに成長を続けることはない。そうした意味で、日本もヨーロッパも1%程度の成長がやっとで成長限界に達していたが、意外にもアメリカは3%程度の先進国としては信じられないような成長率を維持していた。
アメリカが新興国のような成長を維持できたのは、シェールガス・オイル革命という資源国経済を享受してきたからである。
この革命によってアメリカは天然ガスと原油の輸入国から輸出国に転換してサウジアラビヤのような資源特需に沸いていた。
しかし14年夏ごろからバーレル当たり100ドルを越えていた原油価格が急激に低下しはじめ、15年に入ると30ドル前後にまで急下降したためアメリカのシェール産業は軒並み赤字になってしまった。
それでも15年度を通してあまり生産量が減少しなかったのは、資源開発会社の資金調達方法にその原因があった。
ほとんどの資源開発会社は返済資金を原油や天然ガスの売上代金で充当することになっていたため、価格が下がっても生産量を落とせずかえって増加しなければ返済ができなかったからだ。
だがこの方法にも限界がある。
15年に入りアメリカの資源開発会社の債務不履行は24社にのぼり、うち15社は破産申請を申し出ている。
注)シェール産業の実態については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/ppppp-7.html
アメリカはこれまで先進国としては異例なほど高成長をしていたが、16年1月~3月期のGDPは年率で0.5%の増加にとどまり、日本とヨーロッパの仲間入りをアメリカもすることになった。
シェール革命が頓挫した以上アメリカが特別に高成長を遂げる要因がなくなったからだ。
経済も人間と同じでいつまでも成長するものではない。人間でも二十歳を過ぎると身長は伸びないが、それでも体を無理やり大きくしようと過食するとひたすらメタボになって行く。
外見上は体重が増加する分大きくなって行くが、高血圧や糖尿病等に悩まされて本当の健康とは言い難い状況になる。
アメリカや日本や西洋が行ってきた金融緩和策とは成長しなくなった経済に無理やり資金を供給してメタボ経済にすることだが、GDPが体重計と同じようなものだから世界は経済成長を遂げていたことになる。
しかし日本では昨年の夏場ごろから資金緩和をしても経済停滞があらわになり、今年の2月には黒田日銀はサプライズとしてマイナス金利の導入を決定した。
これにより貸出金利が低下したため住宅資金の借り換えは大いに進んだが新規の借入は黒田氏の予想に反してほとんど増加していない。
「おかしいじゃないか。これほどの低金利なら絶対の借り時だ。それなのに企業も個人もなぜ資金借り入れに走らないのか・・・」黒田日銀がため息をついている。
だがマイナス金利の本当の意味は、投資機会が全くなく借り入れをして工場を建設したり、不動産を購入したり、株式投資をすると必ず損失が出るということを意味している。
投資資金としての資金の価値は全くなく、借入れなどして生産増加を図ると損失が発生するから企業は借り入れを行わず、個人は住宅資金の借り換えしか行わない。
黒戸日銀には気の毒だが、毎月10兆円規模の資金を投入し、さらに一部の預金にはマイナスの金利を設定しても、世間に投資機会がない以上誰も資金調達に走らないのだ。
14年夏に中国経済がピークを打ち奈落の底に陥っており、今またアメリカ経済がシェール革命に失敗して通常の先進国病に陥った。
このため世界経済は低迷期に入って上昇の機運がつかめない。
安倍首相は先進国が財政出動をすることでこの危機を乗り越えようと各国に提案しているが、それは一時的なカンフル剤になっても成長しきった経済を浮揚させることは不可能だろう。
世界経済は新たな元気のいいプレーヤー(おそらくインド)が現れるまでこの低迷状態が続きそうだ。
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