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(27.9.27) 文学入門 森敦 「月山」 興味深い本だが面白さに欠ける。

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 今回の読書会のテーマ本は森敦氏の「月山」だった。これを選んだのは読書会の主催者の河村さんだが、読んでみて「えらい本を選択してくれたものだ」と思ってしまった。
通常の小説のような筋書きがあるわけでもなく、また人間相互の激しい葛藤があるわけでもなく、何か淡々と月山と作者が暮らした村落の話がつづられている。
どちらかといえば民俗学の報告書のような話だからだ。

 第一私は「月山」という山がどこにあるのかもしらなかった。地図で調べると山形県のほぼ中央あたりにある山で、羽越本線鶴岡の駅から赤川という川をさかのぼっていくとあることをようやく知った。
しかしこのあたりの地理については私は全く不案内のため主人公が目指した大網の注連寺といわれても、全くイメージングができない。
この小説は「月山」と森氏が過ごしたこの注連寺やその近在の部落の報告なのだから、地理的イメージがないと何とも理解不可能なのだ。

 注連寺といっても住職がいるわけでなく老人が一人でこの寺を守っており、かつては相応の構えだったのが雪崩等で崩壊の危機にあり、森氏はその2階で隙間風におびえながら一冬を過ごすことになる。
ただし注連寺が崩壊寸前の寺というのは小説の虚構かもしれない。写真など見ると相応の立派な構えをしている)

 非常に山深い場所で冬はバスも通わないので街に出るには山越えをしなければならないと説明があるので、私は長野県の上高地をイメージしてしまった。
かつて道路が整備されていなかった頃は上高地に入るのには徳本峠を越えていかなければならなかったからだ。

、森氏の報告によればこの集落の生業は密造酒作りで成り立っていて、もちろん摘発されれば罰金物なので、特によそ者に対して警戒心が強い。
もしかしたら税務署か警察の回し者でないか?」と疑うからだ。
森氏も当初そう疑われて村人からうさんくさげに見られるが、単なる世捨て人と分かってからは仲間の一人として迎えてもらえる。

 森氏はここに昭和26年の夏から翌年の春先までとどまっていたが、その時のルポルタージュだと思えばいい。いまから60年前の日本の古い山村の原風景だ。
この時の経験を素材に森氏は「月山」を書いたのだが、この作品は1973年(昭和48年)年度の芥川賞を受賞している。その時森氏の年齢が62歳だったのでマスコミを騒がした。
私は当時サラリーマンのなりたてのころだったが、芥川賞に62歳の老人が選ばれたことにひどく驚いた。
へー、こんな老人でも小説が書けるんだ!!」
今私は69歳でこうして平気でブログを書いているから今なら驚かないが、当時は芥川賞の受賞者は若者と決まっていたからだ。

 もっとも正確に言えば森氏は新人作家ではなかった。昭和9年というから芥川賞を受賞する40年近く前に東京日日新聞に連載小説を掲載するほどの実力作家だった。
その森氏がなぜ40年の沈黙を挟んで再び脚光を浴びたのかというと、森氏には放浪癖があり新聞小説などを生真面目に連載するよりは漂泊の旅に出ていってしまったからだ。
この人の放浪癖は生涯収まらず、ここ山形県の注連寺に一時寄宿したのもその放浪癖の一種である。

 小説の内容を説明するのは非常に難しい。特に内容などなく自然と部落の住民の観察だといってしまった方がいいくらいだ。
民俗学の報告書のようだと私が思ったのはそのせいで、あえて類似を求めれば鴨長明の「方丈記」に似ている。
森氏は長明と同じようにこの寺の二階で方丈の庵を古紙を使って作りその冬を過ごしたことになっている。

 興味深い本だが普通の人が読むには面白さには欠ける。血沸き肉躍るというものからもっとも遠い小説であり、何か淡々と事実が述べられているから学術研究、特に民俗学の資料といった方がよさそうだ。
私は読んでいて疲れ切ってしまったが、古い日本の山村がどのようなものだったかに興味を持っておられる方には研究対象になるのではなかろうか。

 

 

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