(27.8.19) 夏休みシリーズ NO14 日本の金融機関の反転攻勢とアメリカの金融危機

夏休みに入ります。この間は過去のブログ記事の再掲になります。
日米金融機関の逆転が始まったのはこのリーマンショック以降で、アメリカの金融工学が地に落ちてからである。それまで日本の金融機関はひたすらアメリカをまねて努力していたが、ようやく目が覚めた。
(20.9.26) 日本の金融機関の反転攻勢とアメリカの金融危機
野村證券は倒産したリーマン・ブラザーズのアジア部門とヨーロッパ部門の人材、M&A、株式部門を引き継ぐと発表し、三菱UFJはモルガン・スタンレーに9000億円出資し、株式の20%を取得すると発表した。
思えばアメリカにやられっぱなしだった日本の金融機関がようやく世界に再び羽ばたこうと言うのだから喜ぶべきことだが、こうしたチャンスを物にできる金融機関は上記の2社だけであるらしい。
「そうか、日本で世界と太刀打ちが出来る金融機関は三菱UFJと野村HDだけなのか」
かつては世界の金融機関だといってはばからなかったみずほも三井住友も1000億円程度のはした金しか出資が出来ないらしく、これでは数兆円規模で赤字が続いているアメリカの金融機関を乗っ取ることは出来そうもない。
「みずほも三井住友も日本のローカルな金融機関として生き残るだけなのか」かつての栄華を知っている者としては感無量だ。
失われた10年で日本の金融機関は三菱UFJと野村HDを除き徹底的に衰退してしまったようだ。
当時アメリカの金融当局は「不動産や株式の含み資産経営をしている日本の金融機関は全く信用できず、時価会計を採用できないならばアメリカ市場から撤退しろ」と迫っていた。
おかげで地方銀行のアメリカ支店は次々に撤退に追い込まれ、大手都銀でもアメリカ市場では二線級プレーヤーとみなされて、高い金利を払わなくてはドルを入手できない状況だった。
「悔しかったら格付をあげなさい。そうすれば安いドルを供給してあげますよ」まるで子供扱いだった。
しかもその間アメリカの金融機関は金融工学という手法で証券化商品を次々に開発し、世界に売りまくり莫大な利益を上げていた。
一方日本ではようやく「金融工学とは何か」を学ぶために大学院の数学専攻の学生を採用し、リスク評価部門を作って盛んに意味不明のレポートを作成しては経営者に報告していたものである。
報告者「現行の我が行のリスクを計測すると約○○億円になります」
経営者「そのリスクはどのようにして計測したのかね」
報告者「アメリカのA行で採用されているリスク計算の方法で計測しています」
経営者「そうか、それならきっと正しいのだろう」
本当は誰も理解できないリスク評価方法に振り回されて、頭を抱えていただけだ。
しかし人生は何が幸いするか分からない。アメリカの金融機関は金融工学にのめりこんで最大限のリスクをとった結果、サブプライムローンでものの見事にひっくり返ってしまった。
一方日本の金融機関はほとんど勉強だけしかしていなかったので被害を最小限にとどめることが出来た。
「よかった。リスク管理を理解できなかったおかげで、変な商品を買わずに済んだ」これが本音だ。
アメリカが世界に教訓をたれていた時価会計やリスク管理方式は結局何の役にもたたなかった。
金融工学という博打を体よく見せるためのイチジクの葉に過ぎないことが、ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズ,AIGの破算で世界に知れ渡たった。
だが、それにしても反転攻勢をかけられる金融機関が三菱UFJと野村HDだけだとは、日本の失われた10年がいかに大きな痛手だったかがわかる。
そしてこれからアメリカは日本の失われた10年を追体験するのだが、日本と同様その傷の深さに愕然とするはずで、生き残る金融機関は数社になるに違いない。
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