(27.6.27) 21世紀のフレームワークを作るのはアメリカか中国か! TPPとAIIBの戦い
(友達のブログ「ちば公園のベンチから」に掲載されている利根川の夜明け。定点観測のように夜明けの写真を撮っている)
長年の懸案だったTPP(環太平洋パートナーシップ)がようやく前進し始めた。
もともとアメリカが仕掛けた枠組みだったが、思わぬところでアメリカが足踏みして議会の承認が得られず「一体どうなるだろうか」と気をもませたが、ようやく交渉の準備が整ったといっていい。
アメリカ議会には大きな通商交渉の権限があって、大統領が締結した通商交渉の内容を修正することができる。
「だめだ、もう一度交渉をし直してこい」
そんなことになったらアメリカ大統領の信頼は地に落ちてしまうから、あらかじめ議会から全面的な交渉権限の委任を受ける必要があり、それをTPA(貿易促進権限法案)という。
このTPAをアメリカ議会両院でようやく採決したので、あとはオバマ大統領が要請しているTAA(貿易調整支援法といい、アメリカの労働者に影響が出た場合その人を救う制度)を下院で承認すればいいだけになった。
下院がこの法案を通すことは確実だからオバマ政権は晴れてTPP交渉に議会から縛られることなく臨ことができる。
注)TPP自体は最初、2000年にシンガポール、、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間で調印されたものだが、それをアメリカが太平洋をまたぐ大々的な協定につくりかえようとしている。
TPPのメンバーは12か国だが主要なメンバーはアメリカと日本とオーストラリア
strong>である。
この3か国が太平洋地域の貿易に関する経済的な枠組みを決めようとしており、ここには中国が入っていない。
中国を入れないのは意図的なもので、もともとTPPでは特に知的財産権の保護を重要視しており、知的財産権を保護することで中国等新興国から特許料をせしめ上げようとの意図がある。
一方中国は知的財産権は黙って奪うものと思っており、人民解放軍のサイバー部隊がアメリカや日本の先端産業の知識を盗みまくってきた。
「中国の強奪をなんとかしてやめさせなければならない・・・・」
この強奪に対して制度的な歯止めをかけようとしているのがアメリカと日本で「中国さん、TPPに入りたいなら無断で情報を盗むのは止めて特許料を払ってください」という意味である。
注)世界で最も特許料収入が大きい国はアメリカで約10兆円、日本が次で約2兆円規模。日本とアメリカが知的財産権で圧倒的な優位に立っている。
21世紀は知的財産権の多寡がその国の力を示す時代で、単なる物の輸出入のウェイトは相対的に低くなる時代といっていい。知識が世界を制する時代だが、それに対し中国は簡単には応じない。
「うるせい、中国人民解放軍はアメリカから知識を解放する部隊だ!」
現在知的財産権の保護で加盟国間で意見の相違があるのは新薬データの保護で、アメリカは10年を主張しているのに対しオーストラリアは3年を主張している。
アメリカは製薬会社とそこが開発した新薬の特許をできるだけ長く保持しようとの戦略だ。
注)新薬データの保護とは分かりにくい概念だが、ジェネリック会社が安い医薬品の開発をするときに当初開発した会社の医学データを使えない期間。そのため独自に医学調査をジェネリック会社がしなければならなくなり、実質的な特許期間の延長になる。
他に日本とアメリカの間では農産物の関税の引き下げ交渉が行われていて、米や牛肉や豚肉にかけられた関税を段階的に引き下げる交渉が行われている。日本ではもっぱらこの農産物わけてもコメの関税の引き下げが問題になっているが、これはTPPの本質的な部分ではない。
本質はあくまで知的財産権の保護であり、「知識は盗むものではなく対価を払って入手しろ」というルールを太平洋の両岸の大国アメリカと日本がスクラムを組んで中国に申し入れをするためのフレームワークだ。
現在世界はアメリカ組と中国組に分かれているが、このアメリカ組の経済連携の枠組みがTPPであり、一方中国が目指している経済的枠組みはAIIBによるインフラ投資である。
簡単に言ってしまえばTPPとAIIBの戦いということになり、最近まではAIIBの方が優勢だったがこのTPP交渉がまとまればアメリカ組の巻き返しが可能になる。
日本ではどうしても農産物の関税問題に矮小化されるが、本当の戦いは知的財産権に移ってきており、これが21世紀の主戦場になっている。
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