(27.5.31) スカイマークは再び飛びだてるか? ANAとエアバスの水面下の攻防
民事再生法で再建を図ろうとしているスカイマークの再建計画案が29日に示された。
再建計画のカギは大口債権者の2分の1の同意を得ることで、現在把握されている債権額(スカイマークにとっては債務額)は3089億円だという。
最大の債権者はスカイマークに航空機をリースしているアメリカのリース会社イントレピッドの1040億円で、次がエアバス社に対するA380大型旅客機代金の支払い850億円(違約金)だそうだ。
再建計画では2社に対し5%の返済を行い、95%は債権放棄を要請する計画になっており、イントレピッドとしてはとても応じきれないと大反対だ。
「そんなことをすればわが社は倒産だ、絶対に駄目だ!!」
再生計画の主体は国内の投資ファンドインテグラルとANAと政策投資銀行と三井住友だが、資本金180億を出資してこの債務額の5%相当の返済金に充てるという。
注)新たに再建される資本金の割合はインテグラル50.1%、ANAHD 16.5%、政策投融資と銀行団が34.4%になる。
イントレピッドが反対してもウェイトは33%程度だから他の債権者が同意すれば再建計画は承認されるのだが、現在はエアバス社もこの計画に反対しているため両社が否決に回ると50%を越えて再建計画が了承されないことになる。
だからこの再建計画の帰趨はいかにエアバスを説得できるかにかかってきた。
スカイマークとエアバスとの契約は散々で大型機のA380機を6機導入しようとしてキャンセルを行いエアバス社から850億円の違約金を請求され、これに対する違約金230億円を支払うことになっていたが最終決着は持ち越されている。
、他に小型機6機を(A330~300)導入済みで倒産前にはさらに小型機4機の導入を予定していた。
こちらはイントレピッドからのリース契約による導入だが、イントレピッドはこのA330シリーズの落とし前をつけてもらおうとしている。
「リース契約の航空機全部をキャンセルするなんてひどいじゃないですか!!」
しかも倒産後はスカイマークではエアバス社の飛行機は一切飛行しておらず、リースバックをおこなおうとしているのでイントレピッド社は完全にへそを曲げている。
注)スカイマークの倒産劇の詳細は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-ea5e.html
現在はANAとエアバス社の間で水面下の交渉が行われているが、スカイマークが導入する予定だった大型機A380をANAが引き継いで使用するかどうかが交渉のカギを握っている。だが市場では大型機は時代遅れと見なされまともな航空会社なら見向きもしない。
当初の話ではANAがA380を全機引き受けるような話になっていたが再建計画発表時には「そのような約束をエアバス社とした覚えはない」とANAは表明している。
注)エアバス社のA380の開発は完全に時代の動きを見誤っており、スカイマークがキャンセルしたものを他に転売するめどが立っていない。
またA330と言った中小型機については需要はあるが、ANAはすでに多くの中型機を抱えているためスカイマークのA330を引き受けても飛ばす場所に苦慮しそうだ。だからイントレピッド社とスカイマークのリース契約を引き継ぐ気持ちもない。
スカイマークは無理に路線を拡大し特に地方路線などは当初から赤字覚悟だったが、倒産後は羽田等の収益路線に縛っており、羽田枠がある限りは収益確保のめどはついている。したがってANAがエアバスを説得できさえすれば5年後の上場再開も夢ではなく、さらに最近の旅行ブームで航空各社に神風が吹いているのだから、この機会を逃したら再建は不可能だろう。
私は個人的にはスカイマークのようなチャレンジ精神の旺盛な会社は好きだが、西久保前社長の経営判断の誤りでエアバスの大型機を導入しようとして大失敗してしまった。
経営者の能力で小規模企業はどうにでも転ぶのだが、JALも倒産したのだから西久保氏だけを責めるのもかわいそうだ。
再建計画が了承されて再び上昇気流に乗ってほしいと思うが、ANAとエアバス社との交渉がすべてを決定しそうなので今後も目を離せなくなった。
注)現在の航空業界はLCC等の新規参入で過当競争になっており、メガキャリアといえども多くの乗客を集めることができない。かつてのようなジャンボ機で多くの乗客を運ぶのではなく中小型機でちまちまと運ぶ以外に方法はなくなっている。
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コメント
スカイマークはA380導入計画発表時は無借金経営でしたね。
ブリジストンのタイヤを履いたA380は離発着距離も短く乗客も大量にと優秀機体ですが身の程をわきまえず暴走した結果アッと言うまにこの事態ですか。
一寸先は闇 先を読んだつもりだったのでしょうが得意の絶頂から債鬼に追われる身に転落するのが素人目で見ても早すぎ, こうなると失礼ながらお笑い草です。
私の知ってる中小零細企業の強いところは現金取引, リースだのレンタルだの組んで先々を縛るようなことをしないのが鉄則, 身の程知っての経営。 見栄ハッタリの韓国人社会と全く違う律儀な社会です。
西久保さん 世界の航空運送業界はそんなみみっちい根性ではダメ, 先を読みハッタリと度胸, 猪突猛進あるのみ・・・・、だったのでしょう, どこかの国の人ソックリ そして今日の状況も。 ああ 日本の信用失墜です。
投稿: 絶望人 | 2015年5月31日 (日) 09時37分
リース契約にしろ、販売契約にしろ、売る方買う方の互いの信用を見極めたうえでの判断だったわけで、
スカイマークの一方的な非だけではないでしょう。例えば、前金で払ったのに製作メーカーが破産すれば
製品はいただけません。大きな契約は、それなりの担保確保と相手の信用をどう見極めるかにあります。
このケースは、どこまで傷みを分かちあえるかにかかっているのです。潰しても何も取れないので、
再建計画に沿う以外にないと思いますが、どうでしょうか。
投稿: hiromiya | 2015年6月 1日 (月) 00時08分