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(27.4.28) 国債の市場消化と日銀引き受けは何が違うのか 「質問に対する回答」

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 ブログの読者のhiromiyaさんから、昨日記載した「再びバーゼル委員会が動きだした。「日本の金融機関の活動を制限しろ!!」に関して、以下の質問を寄せられた。実はこの疑問は誰もが抱く疑問なので回答をしておきたいと思う。

昨日のブログの内容は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-e0e3.html


質問

現行の日銀の民間銀行からの国債買い上げと、山崎所長が危惧されている日銀の直接引き受けでは、民間銀行が間に入るだけの違いであり、市中に円が増加するのはどちらも実質は同じで、結果はどちらも円の価値を薄めることになります。
したがって、直接引き受けの方がインフレ大であるとは言えないと思いますがいかがでしょうか。
浅学の私の理解では、民間銀行を介する現行方法は、直接引き受け時の、日銀、政府の拙速判断、あるいは癒着を防ぐ程度の機能であって、その実質的な差はない思うのですが


解答

 この問題の根は深く、政治家と伝統的日銀マンが鋭く対立してきた争点になっている。
2010年に鳩山内閣の金融担当相大臣だった亀井静香氏は盛んに「中長期的財源確保のための国債を日銀に引き受けさせろ」と吠えていたがこれが政治家の一般的な態度であり、一方時の日銀総裁だった白川氏はこれに激しく抵抗した。

 亀井氏の主張の趣旨は「国債の民間への売却も日銀引き受けも同じなのだから、面倒なことを止めて直接日銀が国債を買い取れ」ということでこれはhiromiyaさんが思っていることと同一である。
これに対し当時の白川総裁は「日銀が市中から購入する国債には限度を設けており、それ以上の購入はしないことにしている。それは日銀の独立性の問題であり日銀が国家の財布でないことの証だ」と反論した。
これは日銀の自主規制と言われ、「国債は通貨発行額の範囲に抑える」というものだった。

 hiromiyaさんの質問の「間に金融機関を入れているだけではないか」との質問の回答としては市場にある国債のすべてを日銀が購入すれば市場消化と日銀引き受けは同じだという回答になる。
実際は広義の国債残高1000兆円のうち現在日銀が金融機関等から購入した残高は約250兆円であり、残りの750兆円は市中で消化されている。
だから現状では市場消化と日銀引き受けは全く同じとは言えない。

 問題の本質はそこにあって政治家は全額国債を日銀に引き受けさせようとしているのに対し、当時の日銀は部分的にしか引き受けないと反論していたのだ。
もし全額日銀が引き受ければそれは通貨の印刷とおなじで単なる造幣局になってしまう。
日銀の独立性とは日銀は通貨の番人で「物価を常に安定するように通貨を供給する使命がある」というのが当時の日銀のスタンスだった。

 だが現在の黒田日銀総裁はそうした立場をとらない。日銀は通貨の番人ではなく、それどころかインフレを誘発して景気を上向かせる使命をもった政府の一機関だという認識だ。
黒田氏ははっきりとは言わないが実際は「日銀は政府の犬」だといっているのだ。
そして無制限に国債を購入すると公言しているため、現在の25%の比率が加速度的に上がっていく可能性が高い。
50%を越えるころから「中消化も日銀引き受けも実質同じじゃないか」という議論がかまびすしくなりそうだ。本質的に市中消化と日銀引き受けは程度の差だからだ。

 日銀が従来「通貨発行額の範囲内という自主規制」を設けて激しく抵抗してきたのは、少しでも油断すると日銀が政府の便利な財布になるのが確実だからだ。
もし今でもこの白川日銀の自主規制を守っていれば通貨発行額は約100兆円だから、とても250兆円の国債購入はできなかったことになる。だからすでに黒田日銀は150兆円相当政府の財布の役割をはたしたことになる。

 日本において日銀の独立性をやかましく言ってきたのは、戦前は戦争遂行のための戦時国債のほとんどを日銀が引き受け、その結果敗戦後のハーパーインフレ(計算方法にもよるが約500倍)をもたらしたとの深い反省によるからだ。
民間が購入する場合は金融機関等が保有する預金の範囲内になるが、日銀の場合は自分が通貨の発行権限を持っているので無制限に可能になる。いわば縛りがなく糸の切れた凧と同じだ。

 これは本当にそのたとえ通りで市中消化は糸で引っ張っている凧、日銀引き受けは糸の切れた凧と全く同じだと思っていい。
中国やロシアは中央銀行と政府が癒着しているから、無制限に国債や通貨を発行したりできる。実際エリツィンが国内視察に回るときは印刷したルーブルを飛行機に積んで現地でばらまいていた。

 さてこれでhiromiyaさんへの回答になっただろうか。現状は日銀の国債保有割合が25%だから市中消化と同じではないが、黒田日銀総裁の政策を進めていくと日銀引き受けに急速に近づいていくというのが実際のところだろう。

注)山崎経済研究所を立ち上げ自分がその所長になったというのは冗談なのだが、所長などと言われるとすっかりその気になってしまう。いや恐ろしいものだ。
 


 

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評論 日本の経済 財政金融政策」カテゴリの記事

コメント

いつもこのブログを興味深く読ませて頂いております。
日本国債の件は私も強い関心を持っています。
「山崎所長」がおっしゃる様に日銀の国債保有割合は発行額の25%
でしょうが、最近は国債の年間新規発行額(126兆)の7割(84兆、月に7兆)を
日銀が吸収しています。
これは事実上の日銀の直接引き受けと同じと言わざるを得ないのでは
ないでしょうか?
今後数年後になにか大きなカタストロフが生じるのではないかと心配しています。

投稿: 笠井 澄 | 2015年4月28日 (火) 13時27分

山崎所長殿

早速の丁寧なご回答ありがとうございます。
市中銀行を介する方法と日銀直接引き受けは、実質に差はないと理解いたしました。
直接引き受けになろうと、何らかの縛りがあれば、円の無制限発行は防げると思います。通貨発行に普遍的な縛りを付けるのか、時々の柔軟な対応を許すのかが、白川氏と黒田氏の違いでしょう。現行は、かなり柔軟な対応をしています。これまでの通貨の番人は、守り過ぎて通貨価値を高めてしまった(物価安)からです。

国債大量引き受けは時限的な措置であり、経済状況が良くなり、税収が上がれば、当然縮小するものでしょう。

投稿: hiromiya | 2015年4月28日 (火) 23時41分

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