« (26.10.17) 百寿者の時代 百寿者は感謝しながら死んでいく | トップページ | (26.10.19) 紙幣印刷経済の限界。 きな臭くなってきた国際経済!! 再びリセッションか?  »

(26.10.18) 文学入門 吉田満 「戦艦大和」

107 

 今回の読書会のテーマ本は吉田満氏の「戦艦大和」だった。この本を選択したのは読書会の主催者である河村さんだが、なんとも難しい本だ。
難しさの原因は二つあって、当時の状況が今一つ分からないことと文章が文語で記載されていることである。

 私を含めて現代人はこの文語が読めない。たとえば「報いざるべからず」などと書いてあると報いるのか、報いないのかさっぱり分からないのだ。仕方がないので前後の文脈から推定して読むのだが疲れることはなはだしい。
ちょうど受験英語で問題を読まされているような感覚になる。

 この本の初稿が記載されたのは戦後すぐで、吉田氏は戦艦大和の数少ない生き残り乗務員として是が非でも当時世界最高と言われた戦艦大和の最後を記載したいという情熱から書かれていた。
今から約70年前の話だからすでに歴史のかなたに消え去ろうとしている内容だ。

注)大和の乗員は約3000名でそのうち300名が日本艦船によって救出された。吉田氏もそのうちの1人。

 当時沖縄にアメリカ軍が上陸し、日本は航空機による特攻作戦を継続していたが、天皇陛下から「海軍は投入する兵力はないのか?」と下問され窮した海軍軍令部は大和による特攻作戦を計画したという。
しかしこの特攻作戦は最初から無理があり、援護する航空兵力はなく制空権を米軍に握られていたからいわばカモがねぎをしょって出て行ったようなものだった。

 実際大和の指揮官だった伊藤中将はこの作戦に反対を唱え「無駄死になる」と訴えたが、軍令部は「一億総特攻の魁になってほしい」と言って押し切った。
この作戦には大和以下数隻の駆逐艦が随伴したが、これが日本海軍の最後に残された船隊のすべてだった。

 吉田氏は学徒兵であり職業軍人でなかったが昭和19年から少尉として副電測士として大和に配属されている。
電測士と言われてもどんな役割か今一つ分からないが、ウキペディアによると「電測員は 航海・作戦行動に必要となる情報の収集作図整理評価をし各部署に配布することを目的とする。 一般的には電測員はCICにおけるレーダー機器の操作員と捕らえられることが多いが、それは所掌任務の一面でしかない。 電測員の究極的な任務は、航海/作戦行動における情報の取捨選択を行い、指揮官の意思決定を補佐することにある」と記載されていた。

 吉田氏によると米軍機の大和の偵察飛行は頻繁に行われていて出航前から補足されており、出航してからも刻々と情報が米軍の作戦本部に送られていた。
その情報は暗号文でなく平文で送られていたから、大和の情報担当乗務員から「米軍が大和の動きを手に取るように知悉している」と報告されている。

注)平文で送ったということは米軍は完全に日本軍をカモと見なしていたことを意味する。

 この作戦は一種のおとり作戦で、特攻機が米軍艦隊を襲うのを容易にするため、米軍艦載機を大和攻撃に引き付けることにあった。
なぜそのような作戦をしたかというと、大和は不沈戦艦と言われていたからで、ちょうど潜水艦のようにブロックで仕切られブロックのハッチを閉めればあるブロックが浸水しても他のブロックには影響が及ばない構造になっていたからだ。
だがこの構造も蜂の巣のようにすべてのブロックが浸水しては元も子もない。

 沖縄に到着するはるか前に米軍機の猛攻撃にあって鹿児島沖の海上で轟沈している。
吉田氏は大和出航から轟沈するまでの経緯をルポライターのような冷静さで記載しているが、何としてもこの散華を後世に残しておきたいとの悲しいほどの情熱が感じられる。
今から70年前の若者が何を考えどのようにして死を決意していたかを知るうえでは重要な歴史文書だが、何しろ文語で書かれているため今の人がこれを読むのは至難の技だろう。

注)なお文学入門のその他の記事は以下のカテゴリーに入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43898465/index.html

|

« (26.10.17) 百寿者の時代 百寿者は感謝しながら死んでいく | トップページ | (26.10.19) 紙幣印刷経済の限界。 きな臭くなってきた国際経済!! 再びリセッションか?  »

個人生活 文学入門」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (26.10.17) 百寿者の時代 百寿者は感謝しながら死んでいく | トップページ | (26.10.19) 紙幣印刷経済の限界。 きな臭くなってきた国際経済!! 再びリセッションか?  »