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(26.10.21) 水道事業の危機 人も工場もいなくなってどうしたらいいの?

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 市町村における水道事業が危機に瀕しているとNHKのクローズアップ現代で報じていた。
最近まで日本の水道事業は世界の最先端で、水の品質においてもまた安定供給においても他の追随を許さない水準を誇ってきた。
これほど安心して飲める水道水は世界屈指といえる。
ところが最近高度成長期に一斉に敷設した水道管がここに来て耐用年数の40年に差し掛かったのだが、その更新がままならないのだという。

 番組では秩父市の事例が紹介されていたが、秩父市には総延長600㎞の水道管が敷設されているがそのうちの約20%が40年の耐用年数を経過しているという。
耐用年数が経過していても立派に機能していれば問題はないのだが、実際は40年持たない事例の方が多い。
市の担当者のところに水道管の破水事故の報告が年に約700件届くのだそうだが、担当者は一人しかいなく応急処理に飛び回っていた。
本来ならば古い水道管をすべて取り換えれば問題がないのですが・・・・」と担当者は述べていたが、市には老朽化した水道管を更新するだけの十分な予算がないのだという。

 日本全国どこの市町村も似たり寄ったりだが、基本的に人口が減少しさらに工場が閉鎖されているため水需要は減少に転じている。
住民がいなくなれば住民税等の税収入も減るので、本来ならば水道事業を縮小していけばいいのだが、どっこい「そうはいかない」ところに公益事業の難しさがある。
かつては多くの住民が住んでいたが今はたった一人になっても水道水を安定供給しなくてはならない。
あんた一人のために水道事業をやっていけない」といえないところがつらい。

 こうして維持するだけでも多大な費用が必要で、しかもその費用対効果は限定的であり、一方予算措置がほとんどないとしたら一体どうしたらいいのか。
一般的には受益者負担で水道料金を値上げする案があるが、これにも限界がある。
公共料金があまりに高いと第一住む人がいなくなってしまい、税金を納めてくれなくなる。
さらに公共料金の値上げは議会の承認が必要だが、議会は住民の反発を恐れておいそれと値上げを了承してくれない。

 岩手県の矢巾町では住民参画の会議が催され、その中で町の担当者と住民の話し合いが行われていた。
町の担当者からすべての要望に対応するだけの予算がないので、住民に優先度をつけてもらいその優先度に応じて水道管の更新作業等を行う取り決めがなされていた。

 現在水道事業は全国一律で同基準で運営されているが、これは高度成長期のどこもが成長する時代の運営方法で、一方現在のように地方の衰退期の場合はどのようにしてうまくソフトランディングさせるかが重要になる。
もはやその地方にあった方法を模索し少しでもコストを下げて効率的な運営をする以外対処のしようがないというのがゲストで出ていた専門家の意見だった。

注)ただし個別の市町村の実情にあった方法と言っても、どうやって撤退するかの方法論の模索になる。

 現在の日本の水道事業の苦境は、かつてローマが滅んだ後の残された地方都市の苦境によく似ていると塩野七生氏の「ローマ亡き後の地中海世界」という本を読んで思ってしまった。
当時と言っても8世紀ごろのことだが、アフリカに跋扈していたイスラム教徒の海賊の襲来におびえたイタリア半島の元ローマ人は、港近くの便利な都市を捨て山奥の辺鄙で断崖絶壁に囲まれた城壁都市に避難した。
そのため都市から人が消えてローマの残した多くのインフラはメンテされないまま朽ち果てることになった。その一つが上水道だ。

 私は旅行が趣味だからイタリアや南フランスやスペインやトルコと言ったかつてのローマ帝国の領土に残された遺跡を見に行くが、その中で特に目立つ物の一つに水道橋がある。
8世紀の当時ほとんどの水道橋は都市から人々が逃げてしまって放りっぱなしになったが、それでもローマ人の建築技術は際立って高かったからその後キリスト教社会が安定するにつれて再び使用されたらしい。

 人口が減り、工場が地方都市から出て行くということはその地方はローマ亡き後の中世都市になるということだ。
自給自足のこじんまりとした共同体の中での生活になって公共インフラは少人数相手の施設でないので見捨てられていく。

 先進国はいくら頑張っても経済成長はしないし、人口は日本が典型的なように減少するから中世と変わりがない。
公共施設を維持することは地方都市にとってますます難しい時代が到来してきた。

注)現在安倍政権は地方の再生を唱えているが、人口減少下にあってはどのようにしても再生は不可能だ。地方の村落を見ているとそこに住んでいる人の寿命がその共同体の寿命になっている例があまりに多い。

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