(26.9.3) 日本のGDPの推移と景気はなぜ連動しないのか? GDPは単なる仮構
どうしてなのだろうかと考え込んでしまった。
日本のGDPの数値と実体経済の動きが一致しないのだ。
今日本経済はとても好調で企業の所得は増収増益で、労働市場は人手不足なのだが、一方GDPは年率にして1%程度の伸び率だ。これは2000年代のリーマンショックまでの期間とほとんど同じだ。
一方韓国はGDPは3%程度なのに企業所得は減収減益を続けており、サムスンのような大企業以外は赤字経営に陥っている。
また中国は7.5%程度の成長を遂げているとされているが、不動産・鉄鋼・造船・非鉄金属・海運等の基幹産業は在庫が積みあがったりして赤字経営で、シャオミのようなサムスンのスマートフォン市場を奪っている電気産業や自動車産業ぐらいしかまともな経営は見当たらない。
なぜGDPの推移と実体経済の間にはこのような乖離が発生するのだろうか。
私がかつてサミュエルソンの経済学を学んだときに一番不思議だったのは、GDPの計測方法でGDPは賃金、利子、利潤等の付加価値を積み上げたものだという説明だった。
「本当かい、こうしたものは所得税の対象だから個人にしろ法人にしろ収益を隠すものじゃないかい。農家や中小企業者は経費を水増しして所得を隠し、大企業は法人税がないか低い国へ利益を移転するから、いくら付加価値計算してもGDPにならないのではないか???」
経済学的には正しくとも実態はこうした付加価値計算はできない。
付加価値で計測できなければ他の方法は消費財の購入高で計算する方法で、財やサービスの購入を個人と法人と国家等でそれぞれ計算し、企業のように販売と購入がある場合は産業連関表を使用して純粋の購入額を計算すればいい。
これならできそうだが問題は産業連関表が5年に一回程度の見直しであり急激な経済実態の変化を反映できないことだ。
注)産業連関表とは通常の人にはなじみがないが、たとえば鉄鋼業界は通常鉄鉱石、石炭を購入するがその比率が一定として産業を関連づけるもの。これを使って産業間の差し引き計算をする。
簡単にいえば景気が回復局面では企業は価格設定に強気で物の値段を上げ利益率が高くなる。一方景気後退期は反対に物の値段が加速度的に低下し利益率は低下する。
しかし産業連関表では常に一定の利益率(5年間は比率が一定で動かないと想定)を前提にしているからこうした経済実態を反映できない。
実際に日本のGDPの計測では産業連関表や国勢調査、消費者動向調査、機械受注統計調査、法人企業景気予測調査等の統計数字を基に推計するのだが、ポイントはあくまでも推計であって実態ではないことだ。
一種の仮の数字であり統計の特色から「今までと同じ経済実態であればGDPはこうなる」という仮構に過ぎない。
数学に最小二乗法という手法があって、今までの状況が変わらないならば経済成長は何%になるというような予測法だが、GDPも前提条件が一定とした計測方法といえる。
これでは質的変化には対応できない。
簡単に言えば景気の上昇転換点ではたとえ企業の売上高は一定でも収益率は向上するから企業収益は向上する。
現在の日本の状況がまさにこれで、安倍総理の言うデフレからの脱却とは質的変化を意味するし、反対にデフレ下の経済は収益率は低下して企業は赤字経営に堕ちてしまう。
だからGDPをいくら見ていても経済実態の変化は補足できないことになる。
さらに言えばなぜ中国経済のGDPが7.5%かの説明もこれが単なる仮構だとすれば説明できる。
かつて私が社会主義経済の計測方法を学んでいた時、「社会主義国では生産、即消費だから生産額を計測すればいい」と学んだ。
計画経済では生産されたものはすべて売れるとの前提だが、実際は大量の在庫が積みあがって生産と売り上げは一致しない。
中国のGDPの統計はどこの国よりも早く前月の数値が翌月の18日に確定数字(その後修正がない)として発表される。日本が2か月後に1次集計数字がでてその後修正されるのとえらい違いだ。
これは中国のGDPの基礎数字が国営企業の生産高の数字を基にしているからで、生産高 即売上高となってすぐに集計が集まる。
だが実際は大量の鉄鋼の在庫や売れ残った石炭や非鉄金属の在庫等があるのだが、そんなことは知ったことではない。何しろ社会主義経済における統計処理は生産一辺倒だ。
だから中国各地に売れないマンションが林立しても、生産したのだからGDPにカウントされることになる。
「我が国のGDPは7.5%の推移で経済は順調だ」
やはりGDPを見ているだけでは経済実態は反映しない。それよりも企業業績や失業率(アメリカではこれ後最も大事な指標になっている)や消費動向を追った方がはるかに景気実態が分かる。
近代経済学の最大の成果の一つがこのGDPだが、実際は経済の転換点では全く役立たずでかえって判断を誤ると思った方がいい。
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コメント
増税前の駆け込み需要と為替のマジック効果がだいぶあったと思われる。
輸出企業は円高のときの安価で仕入れた原材料を使って製造した製品が、円安になることで円換算で高価で海外に販売できる。そのため、利益実現に即効性がある。輸入企業は円高のとき仕入れた輸入品の在庫があるうちは円安による利益の圧迫を免れる。
アベノミクスの初年度は輸出依存企業の利益の即効性と過剰性、輸入依存企業の損失の遅効性が働くことで好調だった。
海外の要因では中国経済と欧州の経済が低迷し、新興国も元気がない。唯一好調なアメリカと言えども、金利が自律反発できないくらい回復が鈍い。海外のバブルに頼れないと日本からの高額商品の輸出の量は伸びない。最後まで円安による輸出増の効果が生まれなかった。
今の日本は財政出動で景気を押し上げているのが現状だ。増税と財政出動と日銀の財政ファイナンス。健全財政へ復帰の政策として整合性がない。
投稿: pij | 2014年9月 3日 (水) 14時23分