(26.4.2) とうとう調査捕鯨も終わりだ!! モビー・ディック《白鯨》の勝利
長い間オーストラリアと日本の間でもめていた南氷洋での調査捕鯨について結論が出た。
ハーグの国際司法裁判所が「調査捕鯨は条約に違反しており調査捕鯨とは認められない」との判決を出したからだ。
この裁判は一審制だから判決は確定された。
そもそも調査捕鯨というのがなぜ始まったかというと、1982年に南氷洋での乱獲が心配された商業捕鯨を一旦中止し、その間に調査を行って資源が回復したことを確認されれば捕鯨を再開するとの取り決めがIWC(国際捕鯨委員会)でなされたからだ。
日本はそれに従って調査捕鯨を始めたが、一方捕鯨反対国は当然そのような捕鯨を行わないから、資源量についての報告に全く一致点を見いだせなくなってしまった。
「ほれ見ろ、こんなにクジラ資源が復活しているではないか」
「とんでもない、死滅しそうな資源を日本はさらに乱獲している」
本来は1990年に商業捕鯨の再開の是非を検討することになっていたが、全く話し合いが行われずその結果日本は調査捕鯨を継続し、一方オーストラリアはシー・シェパードを資金援助することで実質的な妨害工作を行ってきた。
現在調査捕鯨で捕獲される頭数は南氷洋で約100頭、北西太平洋で約400頭の500頭程度で、商業捕鯨が禁止になる前の3000頭前後に比較すると約6分の1の水準になっている。
注)南氷洋での調査捕鯨はシー・シェパードの激しい妨害にあっていたので、北西太平洋に漁場を変えている。
IWCは全く機能不全だからいくら協議をしても駄目なので、オーストラリアは国際司法裁判所に訴えたのだが、正式に訴えられると調査捕鯨については最初から分が悪い。
一番の問題は「なんでクジラを殺さなければ調査にならないのか。ライオンの頭数を確認するためにライオンを殺すか!!」という主張に反論できないからだ。
もともと調査捕鯨自体も妥協の産物で、「単に捕鯨をしないだけでは頭数の確認ができないので調査を行う」と日本を含む捕鯨国が巻き返しをした結果で、捕鯨国はそうして捕鯨を継続しようとしたが、一方で捕鯨反対国は調査捕鯨を妨害してきた経緯がある。
考えてみればクジラを殺さなければ頭数の確認ができないというのはかなり乱暴で、本当に調査だけなら飛行機や船舶による目視やソナー等による調査が可能で実際の動物の生態調査はそのように行われている。
日本はクジラを食べる食文化があると主張してきたが、一般の人が鯨肉を食べることは今はほとんどない。私が子供の頃は肉と言えば鯨肉で、あの硬く味覚からは完全にかけ離れた鯨肉の他に食べ物がないために致し方なく食べたものだ。
だから私などは「鯨肉だけは一生食べたくない」というのが本音で、とても食文化を支持する気持ちになれない。
別に日本人は鯨肉を食べなければ餓死することもないし、それ自体おいしいものでもなく、またオーストラリアやアメリカと反目してまで捕鯨を継続する理由もない。
昔はアメリカを中心にモビー・ディック(白鯨)を追い求めていたのだから、何をいまさらという感じもするし、「あんたら、牛や豚の肉はよくてなぜ鯨はダメなんだい」と皮肉の一つも言いたくなるが、鯨は養殖ができないのだからいくらでも繁殖できる牛や豚と同じにするわけにもいかない。
注)オーストラリアの反捕鯨運動は非常に厳しいものだったが、その内容は以下参照
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/20526.html
日本は法治国家で世界の法体系には従うのが定めだ。
国際司法裁判所の判決は南氷洋での調査捕鯨の禁止だが、このさい北西太平洋を含めて調査捕鯨から一切手を引く方が日本全体の判断としては正しいと私は思う。
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