(26.3.3) コズミックフロント 「宇宙の果てを測れ」
私は物理学にとても弱いのだが、最近宇宙物理学の番組「コズミックフロント」を見てすっかりはまってしまった。最も理解したというよりはなんとなくわかったというレベルだがまるで分からなかったときに比べれば偉い進歩だ。
今回のテーマは「宇宙の果てを測れ」で地球と星との距離の測定方法だった。確かに考えてみればこれはどうやって測ったのか興味津々だ。
天体と言っても月だがその距離を最初に測ったのは2000年以上も前のギリシャ人ヒッパルコスだった。
ヒッパルコスは三角測量の技法を月に適応してその距離を計算した。離れた2地点から月を見ると角度が違って見えるのでその角度を利用すれば月までの距離が分かることに気が付いた。
注)私たちが中学で海岸線から遠くに航行している船までの距離を測定することを学んだがあれである。忘れた人は以下参照。
https://www.google.co.jp/search?q=%E4%B8%89%E8%A7%92%E6%B8%AC%E9%87%8F+%E6%96%B9%E6%B3%95&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=3cwSU_-dCoOZkQXjuoCoDA&ved=0CDkQsAQ&biw=1093&bih=520
しかし月よりも遠い恒星までの距離となるとヒッパルコスの方法ではとても測れない。どんなに離れても自分の歩ける範囲を出ないからだ。
そこで地球が太陽を公転している距離3億kmを利用してその両端に来た時に星の角度を測る方法が考案された。この角度を年周視差と言って、この視差が求められれば地球と星までの距離が求められる。
注)月の次に近いのは惑星だが惑星の軌道は地球から見るとジグザグなので年周視差を利用できない。こちらはニュートンの万有引力の法則で計算した。
ただし年周視差を求めるには重要な制約条件があってまず望遠鏡で見える星でないと分からない。さらに地上からでは空気が邪魔をして光が曲がるので地上での観測は誤差が大きすぎる。そして遠くの星だと光は平行になってしまい、視差を求められないので近い星しか測れない。
これで求められる範囲は300光年までの星で、それ以上は遠くとしか言いようがなかったのだそうだ。
宇宙が生まれて138億年だから、地空誕生時の星は138億光年先にある。300光年ではイメージ的には地球全体の測量をしたいときにここおゆみ野の測量ができた程度の範囲になってしまう。
注)高解像度の光学望遠鏡を宇宙に飛ばせば3万光年程度まで年周視差を求めることができる。これはガイヤ計画として実施されている。
この年周視差の限界を破る発見は信じられないことにハーバード大学天体研究所のパートタイマー女性作業員リービッヒによって成し遂げられた(自給600円のパートタイマーだった)。
リービッヒは当時発見されていたセファイド変光星を二枚の写真乾板で見つけるスペシャリストだった。
セファイド変光星とは周期的に光の明るさを変える特殊な星で、その周期が一定だということが分かっていた。
そしてここがポイントなのだが、同じ周期をもつ変光星は同じ明るさであることも分かってきた。
そうなると本来の計算上の明るさと地球から見た明るさの差によってこのセファイド変光星の距離が測れることになる。
リービッヒは世界の誰よりもセファイド変光星を発見し、その明るさの周期を観測したことで宇宙の距離の測定に大きな足跡を残した。
この結果人類は6500万光年先の星の位置を測定することに成功した(これ以上無理なのは変光星の光を測定できないから)。
この6500万光年の限界を打ち破ったのはダークエネルギーの存在証明でノーベル賞を受賞したパールムッターだった。
彼はセファイド変光星より100倍も明るいIa型超新星の爆発を利用することが可能なことに気付いた。
この思いっきり明るいIa型超新星の利用は、乙女座銀河団の中にIa型超新星とセファイド変光星が同時に見つかったことでIa型超新星の距離が確定した(セファイド変光星の距離は分かっていたので、Ia型超新星の距離が確定できた)。
あとはIa型超新星の光の変化を分析すれば、地球からの距離が分かることになる。これによって一気に70億光年まで距離測定が広がった。
宇宙の端までは138億光年だから人類は宇宙の端にまた一歩近づきたことになる。
現在の最新の研究はIa型超新星爆発では知りえない100億光年レベルまで距離が測れると期待されているガンマー線バーストを利用する研究だそうだ。
この研究は日本の金沢大学の光徳氏の研究が進んでいて、この分野で日本の研究者が多大な貢献ができるかもしれないと番組は報じていた。
注)他の番組ではすでに130億光年の星の観測ができたと言っていた。このあたりになると私には判断ができない。
宇宙の果てまでは138億光年だ。もう少しで人類は宇宙生誕の始まりだった光を捉えることができそうだ。パールムッター氏は「わくわくする」と言っていたが、私のように宇宙物理学に無知なものでも気持ちがたかぶるのだから人類の英知とはすばらしいものだ。
なおコズミック・フロント「宇宙の終わりに迫れ」は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-b77d.html
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