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(25.11.27) EUの拡大の終わり。ロシアのウクライナ取り込みの成功

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 EUの拡大がとうとう終わった。EUへの参加を希求していたウクライナが急遽EUとの協議を止めて、ロシアとの関税同盟締結に舵を切ったからだ。
EUは突然のウクライナの造反にびっくりして、バローゾ欧州委員会委員長が「ロシアの立場と行動は全く容認できない」と声明を発したが、この造反はプーチン大統領の揺さぶりによるものだ。

 プーチン大統領はかつてのソビエトの夢の再現を目指してベラルーシ、カザフスタン関税同盟を締結していたが、これにウクライナを加盟させれば旧ソビエトの大半の国土が回復したことになる。
関税同盟とはロシア版EUで人や投資や貿易の自由化を目指すものだから、実質的なロシア共同体だ。

 しかしなぜウクライナがEUに見切りをつけロシアを選択したかというと、EUが経済的に停滞し全く魅力を失ったからだ
EUはリーマンショック以降、EU 内の持てる国と持てない国の格差が広がり、持てない国はギリシャがそうであるように厳しい緊縮財政を強いられている。
EUから資金援助をしてもらえると期待してたら、実際は財政再建か!!」持てない国が悲鳴を上げている。

注)EUの加盟国は財政赤字をGDPの3%以内に抑えるルールがあり、このルールの履行をドイツが厳しく求めている。

 当然ウクライナは持てない国で13年1月から9月までのGDP伸び率は▲1.3%と惨憺たる状況で、財政赤字は▲5%前後だから、これでEU並みの健全財政を義務づけられたら、国民の怒りが頂点に達してしまう。
そこにロシアが硬軟取り混ぜての揺さぶりをかけた。
もしウクライナがEUへの参加協議を続けるなら、ロシアはウクライナからの輸入をストップする。もしロシア版関税同盟に参加するなら天然ガスの価格を大幅に引き下げよう

注)ウクライナとロシアの天然ガス価格を巡る戦いは以下参照
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2117-a928.html

 この要請に元々親ロシア派だったヤヌコビッチ大統領が飛びついた。
何しろウクライナの輸出の4分の1は対ロシアだし、天然ガスはロシアからの輸入に限られている。
ロシアは親露政権には特別価格で、一方親西欧政権には市場価格で天然ガスを供給しており、2005年のオレンジ革命以来ウクライナの天然ガスは市場価格になってしまった。
そのため競争力のないウクライナ産業は悲鳴を上げている。

注1)なおオレンジ革命時のプーチン大統領の天然ガスを武器にした選挙干渉は以下に詳しい。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-e5b1.html

 もう一つヤヌコビッチ氏としてどうしてもEUとの協議を止めざる得なかったのは、前首相で政敵のティモシェンコ氏の釈放をEU がEU参加の前提条件にしていたからだ。ティモシェンコ氏とは髪の毛を特別なウクライナ様式で束ねていたあの美人の首相である。
ティモシェンコ氏親西欧の野党党首でかつ首相だったが、経済的には節操がなくかなり危うい闇取引を行っていたため、それを理由にヤヌコビッチ大統領が逮捕した。
逮捕をするだけの理由はいくらでもあったが、しかし怪しげなのは誰も同じだ。

 EUは「ティモシェンコ氏の逮捕は親西欧派の追い落としで、ウクライナがEUに入りたいならティモシェンコ氏を釈放しろ」と言っていたが、もし釈放して次の選挙でヤヌコビッチ氏が敗れれば今度はヤヌコビッチ氏が投獄される。
かなり後ろ暗い取引をしていることではヤヌコビッチ氏ティモシェンコ氏に負けない。
だめだ、ティモシェンコが復活すれば俺の将来はない。ここはEUへの参画はあきらめてロシアの軍門に下ろう」ということになった。

 1990前後のロシア民主化革命でいったんはロシア陣営から離れたウクライナが20年の歳月ののち再びロシア陣営に吸収されることになった。
プーチン大統領は外交的に勝利し、先のアメリカのシリア空爆停止措置に続いて二連勝だ。
こうしてEUの拡大は終わり、ロシアがかつての栄光を取り戻しつつある。

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コメント

山崎さんのパワーにいつも感心しています。
わたしも、現政権の決めれる政治に拍手しています。
政治は本当に変わるものとですね、ロシアの手腕もあざやかですね。
あざやかといえば、米軍の爆撃機も飛んでくれました。中国はダンマリでしたし、
国内では、秘密法案も進んでいます。我が国の手枷、足枷がだんだんとれていきます。
アメリカが武力強化を勧める時代になりましたね。中国に感謝です。
はやく国民が誇りを持てる国、日本になるといいですね。

投稿: サザンカ | 2013年11月27日 (水) 23時00分

自分はロシアを普段から期待半分で見ています。ですが「アメリカのシリア空爆停止措置に続いて二連勝」これはあまり意味のないように感じます。実際に直近で2連勝したのは事実ですけどソ連崩壊してからは西側に対してやられっ放しでした。この20年間を総合的に評価するならばロシア「3」に対して西側「7」でしょうか?削られているのは事実なのです。実際に今回ウクライナは締結を延長しましたがモルドバやグルジアはEUに接近しました。ロシアといえど限界があるのでしょう。またロシア自身は全く改善していませんので自分は全く満足していません。少し良くなっただけのことです。それにウクライナはベラルーシと並びルーシ3兄弟(識者によって変わります)ですからロシアとしては絶対に阻止するべき場所なのです。それをギリギリで死守できただけです。

「栄光を取り戻しつつある」ご冗談はよしてください。GDPの伸び率ですが今年は凄く低いのです。それもこれも既得権益の利害の対立で構造改革が進んでない所為です。海外からの投資も伸び悩んでいます。自国の経済が確固たるものになってこそ国際社会で力を発揮できるのではないでしょうか?ロシアは2000年以後の原油価格高騰に支えられていただけです。その繁栄も終わり自分達が創造しなくてはいけなくなったのですが何もできてないのが現状です。

厳しい事を言いましたがこれも愛情ゆえであり「全てに迎合していけ」とは思いませんが、もう全体主義に舵を切るのは難しいと思います。到底受け入れられる内容ではないですしね(自分がではなく周りの反応を見ていてそう思います)。

投稿: 名無しさん | 2013年12月 1日 (日) 17時33分

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