(25.11.16) 徳洲会のウォーターゲート事件 徳田虎雄氏の悲しい挫折
これはウォーターゲート事件とそっくりだなと思ってしまった。
徳洲会の徳田毅衆議院議員派の選挙違反事件のことである。
ウォーターゲート事件とは1972年のアメリカ大統領選挙で、再選確実だった共和党のニクソン大統領が、それでも心配になって秘密裏にウォーターゲートビルにあった民主党本部に盗聴器をしかけようとした事件である。
何が徳洲会の選挙違反とニクソンの選挙違反が似ているかというと、① 再選が確実なのにもかかわらず、それでも心配になって選挙違反を行ったことと、② 従来からそうした選挙違反行為を行っていたが逮捕されなかったことに味を占めていたことだ。
「大丈夫だ、いつも問題は発生しない。今回も同じ方法で圧勝しよう!!!」
私は徳洲会の前理事長徳田虎雄氏のことは知らなかったが、世間では医学界の風雲児として知られ医師会からは蛇蝎のように嫌われていた男だった。
何が嫌われるかというと、全国に350もの総合病院等を建設し、特に離島や過疎地の病院経営に熱心で、救急医療にも積極的に対応していたからだ。
「なんだ、実に立派な人ではないか」と思うのは一般市民で、医師会、特に個人の開業医にとっては死活問題になる。
患者が設備の整備された総合病院に行ってしまい、個人病院は閑古鳥が鳴くからだ。
日本では個人病院と総合病院との医療分担がなされていない。最近でこそ大学病院に紹介状がなくいくと手数料がとられるが、長い間どこの病院でも患者の支払う費用は同じだった。
「やはり病院に行くのなら大学病院か総合病院ね、何しろ設備は整っているし、先生は優秀だし、そして費用は同じだもの」ということになる。
一方医師会は自民党の基盤であり、かつ地方の首長にとって医師会の意向は無視できないから、徳洲会から総合病院建設の申請が上がってくると、何とか理由を付けて認可を先延ばしにしてきた。
徳田前理事長はこうした医師会の圧力に抵抗してそれでも過疎地を中心に総合病院の建設を進めたが、大都市部になるとちょっとやそっとでは建設の許可が降りない。
注)総合病院を建設するときは地方公共団体の許可が必要になる。
「それなら俺が政治家になって、医師会の政治的圧力を打ち負かす以外に方法はない」
平成2年、徳田虎雄氏は3度目の挑戦で鹿児島2区から衆議院議員になり、鹿児島県下においては隠然とした力を示すことができるようになったが、全国規模ではマイナーだった。
徳田氏はより影響力を発揮すべくその後自民党からの立候補を狙ったが、一旦了承されたものの医師会の大反対でつぶされてしまった。
「くそッたれども、それなら俺が政党を立ち上げる!!」
平成6年に自由連合という新党を立ち上げたが、都合361人の候補者を擁立したものの徳田虎雄氏を除いて全員落選し、選挙使用の負債は70億円規模まで膨らんでしまった。
この資金はすべて徳洲会からの裏資金から賄われていた。
その後徳田虎雄氏は平成14年にALSという筋肉が委縮する難病を発病し、平成17年に政界を引退した。
選挙地盤は次男の徳田毅氏が引き継いだが、選挙は実質的に徳田虎雄氏が指揮をとり、今回の選挙違反事件に及んだものだ。
注)徳田毅氏は当初自由連合から立候補し当選したが、その後自民党に入党していた。昨年12月の選挙では自民党から立候補していた。
今回の選挙違反の方法は徳洲会病院関係者を研修目的で鹿児島2区に集め、実際は選挙運動をさせたものだが、その間職員は欠勤扱いになり、その給与の補てんをボーナスで行っていた。
研修だから選挙運動でなく、報酬を受け取っていないのだから選挙違反でないという論理だが、ボーナスで補填されていたのは明白で証拠もそろっているから、言い逃れは難しそうだ。
公職選挙法では親族が禁固以上の刑を受けた場合や、選挙の統括責任者が罰金以上の刑を受けた場合、議員資格を失うことになっている。
今回徳田前理事長が統括責任者として陣頭指揮していたことを特捜部はすでにつかんでいる。
しかしなぜこのような選挙違反をわざわざ起こしたのだろうか。
鹿児島2区での徳田毅氏の優位は絶対的で、無理をしなくても勝利は確実だったのにと思う。
おそらく徳田前理事長はニクソン大統領とおなじ粘着質の体質で、100%勝利が確信できなければ落ち着いていられない性格だったのだろう。
私は徳洲会が展開した全国に350もの総合病院等を建設する方策に賛成だし、特に過疎地ではなくてはならない病院になっている。
救急医療に対しても積極的に対応しており24時間、365日受け入れを行う等明らかに日本の医療行政の穴を埋めている。
徳田虎雄氏自身は相当な暴君として知られていたが、行ってきた医療分野での貢献は非常に大きく、医師の利益だけを目的とする医師会に挑戦してきた態度は立派だ。
今回の徳洲会のつまずきはひどいものだが、徳洲会自体は重要な社会的使命をになっているので、再建を果たしてもらいたいものだ。
なお医療合成に関する記事は以下にまとめて入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat51979874/index.html
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