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(2511.12) 文学入門 道尾秀介 「光媒の花」 悪くはないが私の趣味ではない

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(軽井沢 雲場池)

 「うぅーん」唸ってしまった。今回の読書会のテーマ本「光媒(こうばい)の花」の読後感である。
この作品は道尾(みちお)秀介氏の作品で、第23回の山本周五郎賞の授賞作だが、全体が6章になっていて、それぞれが独立している短編集だ。
氏はこの「光媒の花」という短編集をほぼ2年間かけて書き上げている。

 通常短編集は全く人物も内容も時間も別なものだが、この短編集はそれぞれ独立していながら人物がつながっている。
第一章の「隠れ鬼」でかくれんぼをしていた少年が、第二章の「虫送り」の主人公になっている。
そして「虫送り」に出てきた兄妹に「ここは殺人現場で犯人は君たちだと知っている」とあいまいに子供たちを諭すおじさんが、第三章の「冬の蝶」の主人公だ。

 この「冬の蝶」に出てくる主人公は40歳前後の浮浪者で橋の下で生活していたが、仲間の浮浪者が少女を誘惑して犯そうとしたことに憤り、その浮浪者を撲殺する。
この主人公が浮浪者になったのは中学生2年生の時に、自分が愛したサチという同級生が義理の父親から性的関係を続けられ、その生活から助け出そうとして結局はサチが義理の父親を刺殺してしまう。
その後主人公は社会に不適応になり浮浪者になったという設定だ。

 そしてそのサチが今度は第四章「春の蝶」の主人公になって耳の聞こえない少女がバックしてきたトラックに危うくひかれそうになったのを助けるのだが、このトラックの運転手は第五章「風媒花」の主人公になっている。
そして第六章「遠い光」は亮のお姉さんの小学校の先生が主人公だ。
物語は全くの独立した短編なのに人物が横糸でつながっている。
実に漸進的な構成だなあ・・・・・」感心と驚きが入り混じってしまった。

 形式以外ではそれぞれがミステリー小説仕立てになっている。「犯人はだれか」ということが隠し味になっていて最後にどんでん返しが繰り返される。
たとえば「隠れ鬼」の主人公は中学生二年生の時に父親の愛人を愛してしまい、父との逢瀬を見てその女性を撲殺するのだが、読んでいる間は撲殺したのが主人公の父親で、それを苦に父親は30年前に自殺したのだとばかり思わせている。
そして最後の最後に「殺したのは自分だ」という少年の告白がある。

 また「虫送り」では妹をおもちゃにされそうになった兄弟が仕返しに浮浪者の住んでいた橋げたの下にある小屋に大きな石を落とし、それが原因で死亡したように書いてありながら、実際はこうした行為を見て憤っていた浮浪者仲間の「冬の蝶」の主人公がその石を使って撲殺したという筋だ。
必ず最後にどんでん返しが用意されていて「真犯人はこの人です」なんて感じになるので、読んでいると意表を突かれてしまう。

 私は大学生時代に読んだサマーセット・モームの短編「赤毛」を思い出した。
昔赤毛と呼ばれた若いハンサムな脱走兵とカナダ人の美しい少女との恋があり、意図せぬ別れの後その脱走兵が数十年たってその女性の面影を求めてやってくる。
読者は「いや素晴らしくロマンチックな話だな、その美しかった女性はどうしたのだろうか」なんて読んでいくと、その目の前に食事を運んできた恐ろしく肥満した老婆が、それが昔恋をした女性だというどんでん返しだ。
いくらなんでもそれはないでしょう、モームさん」と若かった私は憤慨したものだ。

 道尾氏の小説はそのどんでん返しの連続でまさにミステリー小説だが、一方で登場人物はみな物悲しい過去を持っており、また最後に殺人を犯すという設定で、弘兼憲史氏の漫画、「人間交差点」ばりの人間の悲しみがあって、人生の悲哀を感じさせてくれる。

 だが私の率直な印象は少し形式の目新しさに目が行きすぎ、またどんでん返しをするために筋があざとくなりすぎているというものだった。
あざといというのはシナリオ作家がよく用いる言葉だが、無理やりに筋書きをこしらえているという感じで使用する。
たとえば悲劇的状況を作るために主人公を必ず末期がんにするというような設定で、私のシナリオを指導してくれた先生は「それは作り物と言って、見る人が見ればすぐに筋がばれてしまいます。できるだけ無理のない合理的な筋立てを作りなさい」と言っていた。

 特に第一章「隠れ鬼」で殺人者が高校1年生だというのはあまりにも唐突だ。恋に狂った高校生ということだが、そんな話は受け入れるのが難しい。
また「春の蝶」の主人公の中学2年生のサチが性的関係を迫られた義理の父親を刺殺するというのも、「少しね」という感じだ。
第一交わされる会話のレベルは大人の会話で、中学2年生の会話とは思われない。

 文体は恐ろしいほど単純明快で、まったく読むのに苦労しないが、どんでん返しに驚かされてばかりいるという小説だ。
悪くはないが殺人事件が多すぎて私の趣味でないことも確かだといえる。

なお、文学入門については以下に記事をまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43898465/index.html

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat31264874/index.html

 

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