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(25.10.20) 安倍内閣の国家戦略特別区 これじゃ成長はおぼつかない

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  私は安倍首相が目指す成長戦略を支持し期待しているのだが、今回出された規制改革メニューにははっきり言って落胆してしまった。
まずこれじゃー、日本の再生戦略はおぼつかないな」そう思ったからだ。
再生戦略の骨子は「国家戦略特別区」を指定して、その特別区内では従来の規制を排除した自由な経済活動や医療活動を目指そうというものだが、省庁の反対が激しく、なんとも中途半端な弥縫策になっている。

 今回発表された中で成長戦略といえるものはたったつしかない。
一つは都市再生のために建物の容積率と利用規制を見直すというものだ。
これはもっとも簡単な規制緩和で日本の建物の耐震技術は非常に高度なのだが、一方建築基準法では昔から都市部の建築の高さをほぼ30m程度に制限してきた。日本の都市が外国の都市に比べて低いのはこのせいだ。
もっともこれには多くの特例がすでに存在し、丸の内周辺の容積率は大幅に緩和されているから、いわば実態が先行したことの後追いに過ぎない。

注)従来の容積率緩和の方式は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-1e26.html

 また道路でヨーロッパによくあるようなカフェを出店することを認めようということだが、歩道が整備されている場所では道路の有効利用になることは間違いない。銀座などでは昼間交通を遮断して道路を解放しているがその拡大版みたいなものだ。だがこれの経済効果は容積率の拡大に比較したらあまり高いとは言えない。

 もう一つの成長戦略は雇用規制の緩和で、従来労働契約法で5年を過ぎて同一業務に従事していた契約社員は本人が希望すれば本社員として採用しなけれなならないという規定があった。
これを5年でなく10年に延ばそうということだ。
世の中の実態は本契約にしたくない会社は(ほとんどの会社がそうだ)5年前に契約を打ち切るか、仕事の内容を変えさせてこの5年規定をクリアーしていた。

 私がシステムの担当者だった頃、契約会社から「3年(当時は3年だった)同じ業務についていたので、派遣職員を他の会社に変えます」と言われて困惑したものだ。
せっかく業務を覚えたのに移動かい!!!」企業にとっては何とも扱いずらい規定だったが、本採用はできないので致し方がない方式だった。
5年を10年に延ばすことは、派遣労働者は半永久的に派遣労働者のままというのと等しいが、従来から企業は本採用にするくらいなら解雇していたのだから、実態追認という側面が強い。
これで企業の派遣社員採用がよりしやすくなることは間違いない。

 しかしそれ以外の規制緩和は何としても中途半端だ。
特に医療については私は期待しており、日本は世界最速の老人大国で老人医療の先進国なのだが、その対応が十分といえない。
世界各国から老人を受け入れて世界の老人医療のメッカを目指すべきだと私は考えているが、厚労省の反対は根強い。

注)老人医療を成長戦略の柱に据えるべきだとの記事は何回も書いてある。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-03c8.html

 また高度医療を特に新興国の患者に開放すべきだと私は思っているが、こうした取り組みをしているのは千葉の亀田メディカルセンターと隅田川沿いに建っている聖路加病院ぐらいだ。
アメリカの医療機関認証制度JCI)の認証を得て、さらに医療通訳の拡充を図っているが、日本には多くの先端医療病院があるにかかわらず取り組みが行われていない。

注)高度医療についても日本が十分なレベルに達していることは明白だ。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48360072/index.html

 高度医療現場で問題になっているのが混合診療の問題で、日本では保険診療と自由診療の組み合わせが原則認められない。
もし自由診療を行うと保険診療部分を含めてすべて患者の自己負担になってしまう。
通常高度医療に使用する薬や器具は自由診療だから、患者がもし高度医療を求めるとその費用は途轍もなく高くなってしまうから、誰もがこの治療を受けることができない。

 私は今回の規制緩和で医療特区にはこの混合診療を認めるのかと思っていたが、厚労省の反対で実現しなかった。
実現したのは海外でその有効性が確認されている新薬については厚労省ができるだけ早期に日本での使用を認めるという、何とも微温的な措置にとどまった。

 前にも記載したが厚労省は日本での新薬開発も、また海外で使用されている新薬についてもその安全性が確認できたと判断されるまで、承認を延期してきている。
これはサリドマイド等で何度も失敗した経験から医療事故などが起こることを極度に警戒し、新薬の承認をできる限りしないことにしたからだ。
もし副作用が出たら大変だ。すぐに裁判を起こされるからそんなことなら最初から承認しないのが厚労省にとって最も安全な戦略になる

注)日本の医薬品の認証制度が実際は認証させない制度であったことは何回も書いてきた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-b386.html

 だが、日本の再生のためには相応のリスクをとらなければ再生は不可能だ。官僚はリスクをとらないから政治家がとるのかと思ったら、今回もまた混合診療は先送りになってしまった。
これじゃ、日本再生も夢のまた夢だな」ため息が出そうだ。

 他に農民が農民が農地内でレストランが経営できるようにするとかあるが、本命は農地を株式会社が購入して企業経営をできるかどうかで、これは農水省の大反対でつぶれている。

 また公立学校を民間が経営するという案は栄光ゼミナールが積極的で、小・中・高の一貫教育を行うという案だが、当然文部省は大反対だ。
そんなことをすれば小学校のうちから東大の受験勉強をさせるものじゃないか。日本では中ぐらいの人間を多数育てるのが日本社会の安定に資するのだ
今からどうしたら足をすくえるか虎視眈々と狙っている。

 安倍首相の目指す国家戦略特別区の構想は上記のように前途多難で今回はがっくりしたが、それしか日本再生の方法はないのだから私は安倍首相を応援し続けることにしている。

 

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評論 日本の政治 安倍内閣」カテゴリの記事

コメント

いつも素晴らしい情報を掲載いただきありがとうございます。
私も山崎さんがおっしゃる医療分野で未来を切り開いていくという考えに大賛成です。

たまたま、いつも覗いているブログで面白い情報を見ましたので参考までにそのURLをご紹介いたします。
    いまアメリカのバイオテクノロジー産業で起きている事
    http://markethack.net/archives/51896794.html

参考になれば幸いです。
今後とも山崎さんのブログ楽しみにしております。

(山崎)どうもありがとう。照会されたブログはのぞいてみます。

投稿: 青い空 | 2013年10月21日 (月) 13時14分

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