« (25.10.10) トラブル続きのみずほ銀行 経営者不在体質が続いている!! | トップページ | (25.10.12) クローズアップ現代 「父子家庭急増の陰で」 「虐待死事件の波紋」 »

(25.10.11) 文学入門 南木 佳士 「ダイヤモンドダスト」

Dscf5265 
(ネパールの4000mクラスの山。日本のイメージでは2000mクラスに見える)

  今回の読書会のテーマ本は南木 佳士なぎ けいし)氏の「ダイヤモンドダスト」だった。
私は小説というもの30歳ごろからはほとんど読むことがなくなっていたので、この読書会のテーマ本を読むのが唯一の小説との触れ合いになっている。
南木 佳士氏と言われても、また「ダイヤモンドダスト」と言われてもさっぱりだったが、この小説は第100回の芥川賞を受賞した作品だった。

 南木 佳士氏秋田大学医学部を卒業した後長野県の佐久総業病院農村医療問題で著名な若槻俊一氏がいた)で勤務をしながら、1981年に難民医療日本チームに加わりタイ・カンボジア国境で医療事業に従事している。
氏の小説は私小説に近い内容が多く、このダイヤモンドダストは主人公が医者ではなく看護師であり、妻に死なれて父親と息子の3人暮らしをしていることなどは実際と異なるが、主人公の精神の軌跡はほぼ作者の精神の軌跡と言っていい
私が読んだ文春文庫本には他に3編が収められているが、すべて氏が佐久総合病院で経験してきた事実に基づいて小説が構成されている。

 ダイヤモンドダストの内容は導入部にかなりの無理がある。本人はとても優秀で医学部の進学を目指したかったが父親が脳溢血で倒れ看病する人がいなかったため(母親は死別している)、医大入学をあきらめ近くの看護学校に進学した。
その後佐久総合病院と思われる病院に勤務していた時、大学生だった妻(足をくじいて入院してきた)とであうが妻は4年間の闘病生活の後子供を残して死別する。
すでに主人公とあった時には悪性腫瘍であと数年の命だということは分かっていたが主人公には告げず結婚をしたことになっている。

 この導入部分は「やはり無理だな・・・・」と思う。第一に医学部はどこの都道府県にもあり看護学校に通うのとさして変わりはしないから、看護学校に行かねばならない必然性が弱い。
さらに末期がんと宣告されていた女性が結婚をし、さらに子供まで設けるというのはやはりやりすぎだ。これでは最初から子供の面倒は主人公に任せることを想定していることになるし、末期がんの患者が妊娠して子供を産めるかどうかも怪しい。
南木 佳士氏は無理やりこうした状況設定をしたが、これは主人公が持つ人生に対するあきらめをどうしても表現したかったからだろう。

 南木氏の小説には何かどうしようもない人生に対する挫折感が漂っている。本人は秋田大学医学部を卒業しているのだから現在の日本人としてはエリートの一人だが、秋田大学という新設の二期校の医学部にしか入れなかったことを心の底では悔やんでいる。
また本人が就職した佐久総合病院は今でこそ若槻俊一氏の努力で日本でも有数の農村医療のメッカだが、1970年代はまだそうした名声からは程遠い病院だった。
南木氏が長野の田舎のこの総合病院に就職し、また途中で難民医療日本チームに加わりタイとカンボジア国境で医療業務に従事したのも、南木氏のもつ人生に対する何かあきらめのような気持ちがそうさせたのだろう。
俺は出世とは無関係の人生を選択するのだ
こうした状況は結果的になることが多いのだが、南木氏は意図的に自分をそうした人生に追い込んでいる。

 私はこのダイヤモンドダストという小説をとても気に入ったし、この小説の持つ諦観と言ってもいい静かな調べは好きだ。
実は私も南木氏が持つメランコリーと言っていい感情にしばしば襲われてきた。
私は南木氏とは異なりある金融機関に就職したのだが、つねにそこでの生活に違和感を感じていた。
今思えば同僚はほとんどの人が紳士で聡明な人が多く、かつ会社も従業員の面倒をよく見るとてもフレンドリーな職場だったが、私はいつも逃げ出したいような衝動に駆られたものだ。
結果的には37年間もその職場に勤務したが、常に異邦人だった自分は出世とは無関係だったし、人からほめられるような足跡も残していない。

 南木氏の持つこの社会に対する不適応症は深くDNAに刻まれたもので、本人にはどうしようもないものなのが私にはよくわかる。
南木氏に対し非常な共感を覚えたが、「互いに人生に対する不適応症だが、それでも何とか歯を食い絞って生きようじゃないか」という人生の挽歌ばんか)のような調べを共有しているからだろう。

なお文学入門のシリーズは以下にまとめて入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43898465/index.html
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat31264874/index.html

 

 

|

« (25.10.10) トラブル続きのみずほ銀行 経営者不在体質が続いている!! | トップページ | (25.10.12) クローズアップ現代 「父子家庭急増の陰で」 「虐待死事件の波紋」 »

個人生活 文学入門」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (25.10.10) トラブル続きのみずほ銀行 経営者不在体質が続いている!! | トップページ | (25.10.12) クローズアップ現代 「父子家庭急増の陰で」 「虐待死事件の波紋」 »