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(25.10.8) NHK 激動中国 「空前の農民大移動」 素晴らしい番組が始まった!

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(バリ島の海岸)

 NHKが放送を開始した「中国激動」シリーズは期待がもてる。最近のNHKの中国報道は中国ベッタリズムから抜けて非常に公平な視点で報道するようになったからだ。
それまでの報道は中国は破竹の勢いで拡大し世界の超大国になるというものだったが、最近はとても冷静だ。ちょっとやそっとでは超大国になれないことが分かってきたからだろう。

 第一回目は現在重慶市で行われている「空前の農民大移動」の実験を取り上げていた。
中国の抱えている問題の中で最大の問題の一つが都市と農村の所得格差で、都市住民は先進国の市民とさして変わらない生活水準だが、一方農民はかつての農奴とさして変わらない。

 なぜこのようなひどい格差が発生したかというと農村と都市が実質的に別の国家で、農民はいつまでたっても都市市民になれないことが根本的な原因だった。
いわゆる都市戸籍と農村戸籍の問題で同じ中国人でも戸籍によって国家が異なっている。
その結果都市が改革開放の波に乗ってGDPが急拡大したが、農村は清朝の時代からの停滞そのままだった。

 最も農民は農民、都市住民は都市住民として相手のことを知らず暮らしていた間はさして問題は起こらなかったが、1990年ごろから始まった移動の一部自由化(出稼ぎの場合のみ農村を離れられる)によって、農民が都市住民の生活を知ってしまった。
俺たちは同じ中国人なのに都市住民だけが裕福な生活をしている。これは毛主席が唱えた平等主義に反するのではないか

注)農村と都市の住民の間で一種の階級闘争が始まっていることは前に記した。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-1cbe.html

 各地で農民暴動が発生(年間100万件規模)してきたので習近平政権は危機感を抱き、農民の都市住民化政策を強力に進めることにした。
君たちも都市住民になれれば文句はないだろう!!」
その実験が重慶で行われている農民大移動だ。
重慶特別市は人口3000万人、内農村戸籍を持った住民は2000万人だという。このうち1000万人を都市住民に変えてしまおうという計画だ。

 農村戸籍を持っている農民は国家から土地の耕作権を付与される。耕作権は30年程度認められ問題がなければ更新される。いわば所有権とさして変わりがなく農民はこの権利によって自給自足の生活が保障されてきた。
一方で土地があるという理由で都市住民が受け取っている年金や医療保険は無きに等しい状況にある。
政府は君たちに土地の耕作権を与えた。後は政府を頼らずに自給自足してくれたまえ

注)中国には13億の国民がいるが、このうち9億人が農村戸籍。この人たちには政府は何ら保護を与えず自給自足の生活を強いた。残りの4億の都市戸籍の住民だけが中国政府が年金や医療措置を講ずる市民という位置づけになっている。

 番組では農民から土地の使用権耕作権)を取り上げる代わりに安置房と称する32階建ての高層マンションを与え、さらに老人には1万6000円の年金が支給されていた。
安置房は日本的感度では間違いなく高層マンションで、都内だったら1億円程度はしてもおかしくない立派な建物だった(地方でも3000万円から5000万円はしそうだ)。
さらに老人には今まで与えていなかった年金までもらえるのだから、ほとんどの農民はこの政策に大賛成で、どのマンションが抽選で当たるかだけが何か人生のすべてと言った大騒ぎをしていた。
俺たちは農業を止めた。高級マンションをただでもらってあとは年金暮らしだ!!!」

 確かに驚くべき政策だが経済などというものは日本であれ中国であれ同じメカニズムが働くもので、こうした高層マンションや年金支給の財源は、すべては土地の値上り益にかかっている。
重慶市は農民から取り上げた農地を今度は工場団地に変えて、沿岸部の企業家や外国資本に使用権を高く売りつけ、さらに進出した企業に重税を課して年金の財源にしようとしていた。

 しかし問題はこうして再開発した工業団地が予定価格で販売できるかにかかっている。
沿岸部から来た企業家に重慶市が説明会を開いていたが、企業家の感度は「これじゃ沿岸部の土地の値段とさして変わらないじゃないか・・・・」というものだった。
重慶市は沿岸部で成功した土地開発方式を内陸部の重慶でも可能と考えているが、これは遅れて出てきた英雄のようなもので、はっきり言えば時期を失している。

 日本では地方自治体が農民や漁民から土地を地上げし、そこに大々的な工場団地を造ったが、日本経済の失速によってそうした場所はぺんぺん草が生え自治体の財政をひどく圧迫した。
現在重慶市が行っている農民大移動はその中国版で、土地を収用したまではよかったが工場は進出してこず重慶市には借金だけが重くのしかかるだろう。
重慶の農民はマンションをただでもらって得をしたように見えるがそれは短期的な見方で、工場団地に工場が建設されない以上かつての農民には職場がない。

 仕方なく昔のように出稼ぎに行くか、まだ残されている農地で無断で農作業をするしか方法はない。しかも安置房を建設した資金は中国中央銀行が通貨元を印刷して銀行を通じてばらまいただけだから、当然のこととしてインフレが起こってくる。現在の16000円の年金も瞬く間に輝きを失うだろう。
すべては土地の値段が上昇することを想定して計画が立てられており、バブル経済そのものだが、反対にリーマン・ショックのように値下がりでもしたらすべての計画は逆回転する。

 習近平政権の農民の都市住民に変える政策は、中国が世界の工場として外国資本が雪崩を打って進出していた時期ならともかく、現在のように反対に逃げ出そうと懸命になっている時期には全く有効とは言えない政策だ。
だから重慶市の大実験は市に膨大な借金を残して失敗するだろうと私は思っている。

注)中国の社会問題全体については以下にまとめて入っております
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48428075/index.html

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