(25.9.7) ロドリゴ 北アルプス縦断記 その5 薬師岳への道
(北アルプスの中央部分にはまだ多くのライチョウが生息していた)
ロドリゴ 北アルプス縦断記のその1,2,3,4は以下のカテゴりーに入っております。
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天候は5日目に入ってようやく回復の兆しを見せてきました。この日(8月24日)は朝方は弱い雨が降っていたものの、段々と晴れ模様になってきてロドリゴの気持ちもようやく晴れやかになってきたのでございます。
黒部渓谷を挟んで対岸にはかつてロドリゴが登った事がある烏帽子岳や野口五郎岳が見え、その向こうには鹿島槍や五竜といった、安曇野からも見えるなじみの山岳が姿をあらわしてまいりました。
「やれやれ、雷はもう来そうもないし、稜線歩きは快適だし危険な場所も全くなくなった」
北アルプスの中央部分は2500mから2900m程度の山が数珠つなぎに連なっており、標高差は400m程度で、剣や穂高のような断崖絶壁は全くなく、時にブロックのように積みあがった大石の上を飛ぶように歩く以外は危険とは無縁の場所なのでございます。
眼下には黒部川の上廊下と呼ばれる断崖伝いの道が見えておりました。
山登りで遠くの山が見えるというのはとても気分を爽快にし、「今日はあすこまで行こう」なんて気持ちになるのですが、一方土砂降りの雨や霧にまかれると自分の立ち位置が全く分からなくなり、「なんでこんなつまらないことを自分はしているのだろう」とひどく懐疑的になるものでございます。
(ようやく黒部渓谷を挟んだ対岸の山並みが見えてきました)
今日登らなければならなかった山は薬師岳(2926m)ですが、この山は横にだだっ広く広がっており、五色ガ原方面からくると、行けども行けども頂上が現れてこないという不思議な山でございました。
ようやくたどり着いたと思われた頂上は北薬師岳(2900m)でそこからさらに1時間以上歩かないと薬師岳の頂上には到達しないのでございます。
薬師岳の稜線はなにか大きな馬の背中といった感じで、晴れてさえいれば全く問題ないのでございますが、霧にまかれると方向が全く分からなくなり過去にここで愛知大学登山部の大量遭難事故が発生しておりました。
間違った尾根を降りてしまい一旦沢筋に入り込むと引き返すことができなくなって遭難するというパターンで、登山でははっきりしたルートになっている沢筋以外は絶対に入らないのが鉄則なのでございます。
注)沢には必ず滝があってここを降りてしまうと引き返すことができなくなり、さらに下に降りていくと滝の規模がだんだんと大きくなってどうにもならなくなるのでございます。
かつてロドリゴは伯耆大山の沢に降りてひどい目にあった経験がございます。
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(薬師岳の下降ルート。霧にまかれると全く方向が分からず、尾根筋を間違える)
何ともだだっ広い尾根伝いに降りると薬師岳小屋が見えてまいりました。
ロドリゴは正直に白状しますが最初はすべてキャンプどまりにする予定でございましたが、山が大荒れに荒れていた関係で小屋どまりをしているうちにすっかり野性味を失い、山小屋をあてにするようになってしまいました。
この小屋から1時間程度下ればキャンプ場があったのですが、時間が3時ごろですでに10時間弱の時間が経っていたので、ここで草鞋を脱ぐことにいたしたのでございます。
「姉さん、一晩泊めてやっておくんなせい」
ここ薬師岳小屋から見る景色は360度の遠望というような感じで、特に夕焼けは美しくうっとりするような眺めでございました。
しかしロドリゴは「日が暮れるまで歩く」という当初の目論見が崩れ、山小屋ばかりに泊まっている自分が情けなく思われたのでございました。
「ロドリゴが山小屋ばかり泊まるのは、たまたま金があるからだ。いっそこの金をすべて破いて捨てれば二度と山小屋に泊まることはあるまい」
注)ロドリゴがお金を持っていたのはクナーカ様から支給される伝道費用の一部をひそかにためていたからでございます。
ロドリゴは強い決心をして残っていた万円札をすべて破り捨てようとしたのですが、そうすると山にごみを残してしまうことにはたと気が付きました。
「主に仕える者が山を紙幣で汚しては主に対し面目が経たない」ロドリゴは(決して金が惜しいのではなく)自然を愛する心ゆえにこの行為を思いとどまったのでございます。
(薬師岳小屋から見た夕焼け)
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