(25.8.5) ようやく減産を始めた中国鉄鋼業界 増産時代の終焉
(トシムネさん撮影 妙高山)
中国の鉄鋼業界がついに減産に乗り出した。それまではただひたすら増産の一途をたどり気が付いてみたら世界の鉄鋼生産量の約半分を中国のメーカーが生産していた。
世界の10社中6社が中国企業で河北鋼鉄集団が3位、宝鋼集団が4位である。
注)一位はアルセロール・ミタル、二位が新日鉄住金
しかしいくらなんでもこれでは生産過剰だ。世界第二位のGDPと言っても日本とどっこいどっこいなのに、世界の半分の粗鋼生産だから在庫が積み上がり、「どこに販売するの」という状況になっていた。
12年度の生産量は6億8千万トンだったが設備能力は約9億トンで稼働率は75%だ。
ここにきてようやく世界第4位の宝鋼集団が減産に乗り出した。現在の生産能力を5年以内に3割削減するという(12年の生産量4270万トン)。
これは中国鉄鋼業界としたら驚くべき決定だ。生産すればするほど赤字が出るので、他の国だったらすぐさま減産に突入するのだが中国はそうはならない。
中国のGDPはこうした国有会社が稼ぎ出しているので、減産などしたら目標のGDPが達成できない。また国有企業には共産党幹部やその子弟が大挙して就職しているので、レイオフなどもっての外ということになる。
さらに国有企業には銀行融資が殺到して特に最近までは貸し込みが行われていたので赤字になっても資金は潤沢だった。
注)国有企業は銀行から無理やり貸し込まれていた融資金を地方政府や不動産会社に高利で転貸して鞘を稼いでいた。こうした中国金融業界の実情は以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-d9d9.html
かくして景気動向に関係なく生産は続けられるが、鋼材はいくら作っても利益は出ない(だから利ざや稼ぎのサブビジネスに走る)。
「我々はナゼこのように出血生産をし続けなければならないのだろうか・・・・・・」正常な感覚の人間だったら耐えられないだろう。
今回宝鋼集団がようやく減産に踏み切ったので、他のメーカーも追随しやすくなった。
それまでは減産などという言葉は禁句で、ひたすら生産拡大に走っていたのだからこれは中国鉄鋼業界の転機と言えそうだ。
何度も言うが中国のGDPはこうした無駄な生産を行うことで維持してきたのだが、それにも限界がある。道路建設にしろ鉄道建設にしろ利用する人がいて何ぼのものなのだが、中国と言えども経済効果が見込まれる投資案件がなくなってきた。
日本と同じようにイエティーが雪合戦をする道路とか、空気を運ぶ鉄道ばかりになりつつある。
注)最近私は気が付いたが、中国では生産=GDPという計算方法(在庫という概念がない)が採用されているのではないかと思われる。「売れようが売れまいが作ればそれでおしまい」というのは社会主義国特有の体質でソビエトロシアのGDPはそうした計算方法だった。
政府や地方政府主導の投資案件がなくなれば後は国内消費ということになるが、中国は貧富の差が大きな国で、金を持っているのは共産党幹部とその取り巻きに限られており、一般大衆は貧困にあえいでいる。
だから国内消費も中間層が薄いので全く火がつかない。
「投資案件はなく、国内消費も駄目、輸出もさっぱりだ!!」ということになり中国経済は大失速し始めた。
注)貧しい農民の地方政府に対する反逆は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-1cbe.html
この影響が端的に出ているのがブラジルやオーストラリアといった中国への資源輸出国で、成長率は大幅に減速し、また資源価格の低下で中小の鉱山業者が倒産し始めている。
アメリカのINSS(米国家戦略研究所)は北京に乗り込み調査を開始したが、その内容は「中国経済の崩壊が米国家安全保障に与える影響の調査」で、アメリカもハードランディングを見据えた戦略の練り直しを開始した。
今や世界の関心は中国経済の失速は明確だが、それがハードランニングになるかソフトランニングになるかの一点に絞られている。
注)ブラジル経済の失速については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-5760.html
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