(25.8.28) 夏休みシリーズ NO9 奇特な人
(パリ セーヌ川にかかるナポレオン3世橋)
夏休みシリーズ NO9
私は冗談話を書くのが本当に好きなのだ。この話もそうした類の話なのだが、時に生真面目な人が読んで注意をしてくれることがある。
(20.2.17)奇特な人
「おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
「pianotokurarinetto.mid」をダウンロード
世の中には奇特な人がいるものだと思う。Kさんという。
私が四季の道の清掃をしている途中で氷雨に濡れ、もう少しで肺炎になりそうな時に傘を貸してくれたのはこのKさんだ。
「拙僧は修行の身、たとえ雨に濡れようとも傘をさすわけには・・」
辞退しようとしたが
「お坊様の身に何かあれば、この地区の老若男女が生きて生活することができません。是非、是非、お持ちください」
今でもこのときの傘を大事に使わせてもらっている。
都川源流の里山のゴミを清掃していた時も、ペットボトルや果物の差し入れをしてくれた。
「せめて水を飲まなければお身体にさしさわります」
この日はとても暑い夏の日で、私をはじめ修行僧は全員脱水状態だったから、このときもKさんのおかげで救われたようなものだ。
そして今回、Kさんは私を食事に誘ってくれた。
「何もございませんが、おむすびとけんちん汁を召し上げってくださいませ。せめてもの功徳を施しとうございます」
実は最近私はやせ細っている。毎日の食事はジャスコのトップバリューの食パンだが、かつて70kgほどあった体重は60kgに落ちてしまい、腹と背中がくっつきそうだ。
また私の妻は天女のような女性であり、お布施のほとんどを貧しき子らに分け与え、残ったわずかなたくわえも亀ゴンのレタスとキャベツにまわしている。
私と妻に残された食料は切干大根だけだ。
Kさんは見かねたらしい。
「せめてお坊様に人並みの食事をしていただきとうございます」
妻と私を誘ってくれた。
さらにKさんは私と一緒に修行している I さんも誘ってくれた。
I さんはかつてある著名な航空会社のチーフパーサーをしていたのだが、乗客の残したパンくずを食べて飢えをしのいでいた人である。
三人は嬉々としてKさんの家を訪問した。四季の道の近くの瀟洒な住宅が立ち並ぶ一角の、植栽がことのほか美しい家がKさんのお宅だ。
Kさんはおむすびとけんちん汁を用意してくれていたのだが、私の目からは豪華なお刺身や、京料理、栗ご飯に見えた。
いつもは「飢餓線上のアリア」を奏でていた身であったが、この日は実に楽しいひと時を過ごさせてもらった。
「お坊様には、日夜四季の道を掃き清めてもらい、仏の心を教えていただいております。そのせめてものお礼でございます」
Kさんはあくまでも奇特な人だ。
私はお礼にKさんが、市原の宿で行なわれている素走りの術の大会で、上位入賞が可能な秘伝を伝授した。
幸いにもKさんは、2位に入賞したが、これは秘伝の祈祷「人払いの術」により3人以上の出場を出来なくしたからである。
この日はまことに得がたい一日だった。ふたたびこのような仏の日が来ることを願ってやまない。
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