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(25.7.21) 中国最後の虚勢 「経済は崩壊してもGDPは高成長だ」

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北海道東部 キトウシの海岸線。海岸線の道路はほとんど人の気配がなかった

 笑ってしまった。NHKクローズアップ現代国谷キャスターが「新興国の経済に異変」という番組で当惑していたからだ。
国谷キャスターは「なぜ中国のシャドウバンキングが問題なのですか」と専門家と言われる人にさかんに質問していたが、回答が「それは規制外の金融だからです」という答えだった。
ならば規制を排除すれば問題が解決するではないですか」とくいさがっていたが、実は規制が問題なのではない。この回答では国谷キャスターならずとも「わけが分からん」と思うのは当然だ。

 今中国経済の一番のアキレス腱はシャドー・バンキングからの融資がいくらになっているか誰もわからないことで、しかもこのシャドウバンキングには大手や中小の国立銀行が関与している。
はっきり言えば簿外の融資で、アメリカのリーマンショック前に膨れ上がったサブプライムローンと言われたディリバティブと何ら変わりがない。

注)シャドーバンキングとは中国版ヘッジファンドや中国国有銀行が行う簿外の融資の総称で中国中央銀行が把握していない融資額のことを言う。

 リーマンショック後中国は65兆円規模の景気刺激策を行い、地方政府に積極的に公共投資と不動産投資住宅投資)を行うよう奨励した。
これを受けて地方政府は競争して公共投資住宅投資を行ったが、問題は住宅投資をして次々に建設したマンションがさっぱり売れなくなってしまったからだ。

注)もっとも象徴的な例はオルドスに地方政府が100万人都市を建設したが、そこに住む人はほとんどおらず、幽霊都市になっている。
購入者は共産党幹部のような資産家だが、転売目的の投資物件なので実際に住むことはない。


 日本でもバブルが崩壊した後は住宅公団や地方の住宅公社が建設したマンションが全く売れなくなり、最終的に当初の値段の3割程度まで引き下げて販売したのを覚えておられるだろう。
中国で今発生している現象は日本のバブル崩壊の再現である。

 しかし中国は一筋縄でくたばるようなやわな国ではない。
地方政府はマンションが売れなくなり金融機関からの借り入れの返済ができなくなってきたので、この売れ残っているマンション群(実際はほとんど売れていない)を担保にしたり信託財産にしたりして、一般大衆から資金を調達する方法を思いついた。
投資会社や金融機関に依頼して小口の投資物件にし、高金利(定期預金の利率が3%なので、ほぼその倍から10%程度の利回りにする)で大衆から資金調達を始めた。

注)この方法の詳細は以下の記事で述べておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b399.html

 これが理財商品と言われるものだが、サブプライムローン債権が返済不能の住宅融資の寄せ集めだったのに対し、理財商品は売れるあてのない地方政府のマンション群の寄せ集めだ
どちらも最終的に返済が不可能なことが同じだが、とりあえずは利回りがよく地方政府のお墨付きがあるので人々は競ってこの理財商品を購入した。

 そしてこの金額が一体どのくらいあるのか誰にも分からなくなって、最低でも130兆円、いや本当は350兆円規模だと疑心暗鬼になっている。
こうなった時の政府や中央銀行が行うことはどこも同じで、「簿外だった理財商品の残高を正確に報告せよ」と通達を出すことだ。
しかし金融機関もどれが理財商品かさっぱり分からないから(グレーゾーンの融資がいくらでもある)、実際の報告はかなり怪しげなものになる。

注)日本ではバブル最盛期のころ日銀から不動産融資の残高報告を求められ、この残高が増えないように指導された。金融機関はグレーなもの(表面的に不動産融資となっていないもの)は正常融資として分類し、できるだけ不動産融資の報告残高を圧縮したものだ。

なお理財商品は実際は中国の腐敗と色濃く結びついており。これは以下の記事で詳述しておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-9d6f.html

 国谷キャスターへの回答としては、「シャドウバンキングとは、理財商品という中国版サブプライムローンを扱っている金融機関です。この理財商品の返済がされなくなるのが問題です」というのがもっともわかりやすい説明だったはずだが、専門家も本当のところをつかんでいないため「規制外融資」だとわけの分からない回答でごまかしていた。

 今中国では不動産投資住宅投資)が完全に焦げ付いているので、これ以上の住宅投資は自分で自分の首を絞めることになる。
輸出は世界各国の経済失速で増加するあてはなく(香港への架空輸出で金額をかさ上げしていたが)、国内にはもはや住宅投資を拡大できる余地はない。
消費は共産党の幹部や一部の資産家を除けば貧乏人ばかりだから、もともとあてにできない。
かくして自慢のGDPは完全に失速しているのだが、4月から6月までのGDPの伸び率は7.5%と発表された。

 今この数字が世界の笑いものになっている。
「輸出も国内投資も消費もさっぱりだ。それなのにGDPが7.5%に増える理由はなにか。その答えは中央政府の本年度の目標が7.5%だからだ」これ以外の理由はない。

注)中国のGDPは地方の共産党幹部の出世のバロメーターで、その報告者はやはり地方幹部なので常に数値に加工が施されている。詳細は以下参照http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/21910-f18a.html

 現在首相をしている李克強氏が2007年にアメリカの中国大使に話した内容が知られている。
私はGDPの数値は信用していない。中国経済を知るには電力消費と鉄道貨物量、それに銀行融資の金額で判断している

 この三つのデータを過去と現在で比較すると以下のようになる(対前年同期比伸び率)。
       11年上半期     13年上半期

・GDP       9.6%         7.6%
・電力消費   12,2%         5,1%
・鉄道貨物    8.0%        ▲2.8%
・銀行融資  125兆円        167兆円


 
 何とも不思議な数字だ。貨物輸送などはマイナスになっているが景気は依然として好調ということのようだ。
銀行融資などは思いっきりバブルっており、日本と同じで懸命に通貨元を印刷して下支えをしているのが分かる(なお理財商品の金額が銀行融資金と同じかそれよりはるかに多いことに注意)。

 上記の数字の読み方は一つしかない。中国の景気は完全に失速しており、それを金融緩和で懸命に支えているという構造だ。
経済や金融などというものはアメリカでも日本でもそして中国でも同じで、中国だけがバブルから逃れられるわけでない。

 1990年代に日本が、そして2008年に西欧とアメリカが陥ったバブル崩壊に今中国が遭遇している。
中国の高度成長の時代は終わり、住宅バブルが崩壊したが、不思議なことにGDPだけは虚勢を張って高度成長をしている。(だから中国のGDP数値を信用するのは愚かだ)
これを「虚勢の経済」という。

注)中国経済については以下にまとめて記載されています。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html

 

 

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