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(25.7.15) 中国進出企業 王子製紙の苦悩 「なぜ排水溝の建設ができないのだ!!」 

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(フランス南部高原地帯の農家にいたシェパード、とてもおとなしく少女と遊んでいた

 私は今青木直人氏の「誰も書かない中国進出企業の非常なる現実」という本を読んでいるのだが、今までバラ色のイメージで語られてきた進出企業の実態が実はその対極にあることが分かってきた。王子製紙の苦悩はその一つである。

 王子製紙製紙業界で日本トップの売上高を誇り、世界でも5位2011年)だが中国進出で大誤算に陥っている。
王子製紙は中国江蘇省南通市揚子江の下流域)に約2000億円の投資(単独企業としては最大規模)で近代的な工場建設し、高級紙40万トン、一般紙70万トンの生産を目指したが、計画は遅延に次ぐ遅延で一般紙の工場の稼働のめどが立たない。

 もともとこの南通プロジェクト2003年に開始し、2006年の操業を目指して立ち上げたものだが、当初王子製紙が合弁でなく単独資本での進出を目指したため、南通市からサボタージュ(特に水の排水溝であれこれ条件を付けたに合い、南通市の資本10%を入れることを条件にようやく2010年に高級紙の生産工場が稼働した。

 実は中国進出で最も問題になるのは「合弁か単独か」ということで、方政府は必ず合弁を条件にしてくる。
中国にとって合弁のメリットは大きく、主要な役員や従業員を縁故で採用させることができるし、日本の技術を盗むこともでき、さらに経営が軌道に乗らなくなって撤退する段になった時に日本の株式を買い叩いて、ただのような値段で最新の工場を手に入れることができる(だから意図的に倒産させるように仕向けることもある)。

 一方海外の進出企業としては合弁をできるだけ避けるようにし、許認可で嫌がらせを受けると本国政府が折衝に乗り出して、中国の地方政府の横暴を抑えるのだが、日本の場合は外務省や通産省が弱気で全く交渉してくれない。
外務省などはさらに問題があり、中国側の意向を受けて「外交問題になるから撤退はしないように」と圧力さえかけてくる。
かくして中国市場はバラ色だと判断して進出すると、地方政府の餌食になってしまい全く無駄な職員を抱え、さらに自由な経営ができずいつまでたっても赤字を垂れ流し続けることになる(王子製紙の中国工場は現在そうなっている)。

 王子製紙の場合はさらに問題が複雑で排水溝建設でニッチもサッチもいかなくなってしまった。一般紙70万トンの工場は2013年稼働を目指して建設されたのだが、排水溝の付け替え工事を南通市が住民の反対で中止してしまったため、王子製紙は工場があっても排水溝がないため生産できない状態になっている。

 
注)このあたりの経緯は外から見ていると何が何だかさっぱりわからない。40万トンの工場の排水溝は直接揚子江に流しているのだが、70万トンの一般紙の生産に合わせて排水溝のパイプラインを揚子江ではなく直接黄海に流すように南通市から指令された。
揚子江の水を飲み水につかっている上海市等からクレームがついたからだと思われる。


 王子製紙は本当は目の前の揚子江に処理後の排水を流したかったがわざわざ100㎞程度離れた黄海に直接流すべく、南通市と共同でパイプラインの建設をしていた。
ところが黄海の出口に位置する啓東市の住民が環境汚染が始まると大反対のデモが起こり、2012年7月に南通市はこのパイプラインの建設を凍結してしまった。
住民運動の結果排水溝の建設が不可能になり70万トンの工場は操業ができなくなってしまったわけだ。

 住民運動自体は「中国の民衆もようやく環境問題に目覚めたのか」と前向きな評価もできるが、本当はそれほど単純でない。
王子製紙の工場ができたことでメリットを得られるのは南通市だけで、一方啓東市のほうは何のメリットもない。
だから分け前を求めて啓東市は住民をあおって反対運動を起こしたのだが、金を出すのが日本企業の王子製紙とあらばいくらたかってもおとがめはない(中国国有企業の場合は治安部隊が出てくる)。

 しかし王子製紙としては啓東市を懐柔するためさらに資金を出して生産しても、中国国内の成長は頭打ちになり海外市場もヨーロッパなどはマイナス成長なのだから、なんのメリットもなくなっている。
しかたがない。無理にわいろを出して啓東市にパイプラインを通しても、実際は販売先がないのだから、しばらくほっておこう」という状況になっている。

 当初は2006年には全面稼働していた計画が2013年になっても半分の生産施設しか稼働できず、投資資金2000億のうち1000億は無駄に打ち捨てられているままだ。
中国が企業の進出先としての夢のような場所と思われていた時代は過ぎ、今はどうやって損失を最低限にしながら撤退できるかという時代に入ってきている。
王子製紙の苦悩はその典型だ。

なお中国経済の実態については以下にまとめて記載してあります。未だ中国経済に対して幻想をお持ちの方は是非読まれることを勧めます。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html

 

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