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(25.7.16) 森ビルの苦闘 「どうしたら上海に高層ビルを建てられるのだ!!」

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サンチャゴ巡礼フランス道。 こうした何気ない道が延々と続いている

 従来なぜ中国の公共工事宅地開発、道路、橋梁、高速鉄道、ダム等)が日本などと比較してスピーディーに行われてきたかの最大の要因は、土地の収用が実に楽にできたからだ。
中国では土地は国家の物で住民はその使用権を持っているにすぎない。
そして土地の実質的な所有者である地方政府は、その使用権を安価な補償金と警察力や暴力団を動員して簡単に取り上げることができていた。
住民は追い出され不満を持っていても泣き寝入りをするだけだった。
こうして多くの経済特区や北京や上海周辺の土地が地方政府の手で取り上げられ、そのあとに高層ビルが乱立している。

注)最近になり地上げが困難になってきた実態はNHKがレポートしており、その内容は以下に記載しておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-1cbe.html

 本日取り上げる森ビルの事例は、青木直人氏の「誰も書かない中国進出企業の非常なる現実」が基データになっている。

 森ビルが地上げされた上海の金融地区にアジアで最も高い460mの高層ビルを建てようとしたのは1995年のことである。
実際の工事が始まったのは1997年からだが、これを請け負ったのは清水建設だった。
しかしこの場所は地盤が弱く一年で6cm程度地盤沈下するため、この地盤強化のために予算が膨らみ始めた。

注)なお建設予算が当初計画に比較して増加するのはどこでもあることで、予定しなかったトラブルはどうしても発生する。問題はそのトラブルをどこが引き受けるかということで、この高層ビル建設はすべて森ビルの持ち出しになった。

 森ビルは膨らむ予算に対し資金調達を強化しようとしたが、直後に起こったアジア金融危機でメインバンクのみずほが消極的になり、資金調達のめどが立たなくなってしまった。
こうして工事が思ったより難工事であることが判明し、一方資金調達が行き詰ったためにこの工事は中断され、工事が再開されたのは2004年である(この間清水建設は降りてしまった)。
森ビルとしては費用がかかるばかりで採算性に疑問が出てきたこの工事を中止したかったが、この時も日本の外務省日本大使館)はそれを許さなかった。
これは日中友好のシンボル的建設物なのだから、何としても建設せよ

注)日本大使館は日中間の揉め事が起こることを極度に警戒して、中国の意向を日本企業に押し付ける傾向がある。アメリカのように中国政府や地方政府と渡り合ってくれない。
日本の大使がどのようにふるまうかは以下に詳述してある。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-04f4.html


 
 工事が中断していた間にアジア各地で高層ビルの計画が次々に発表され、台湾508mの高層ビルが建てられていたため、森ビルは地方政府より当初予定の460mでなく、台湾に負けない高さのビルを建設するように追加要請を受けた。
さらに2001年のアメリカで起きた同時多発テロを見た地方政府は耐久性の強化を森ビルに求めた。
なんでもいいから台湾に負けず、また耐久性を強化しなければ許可しない
こうして工事再開後も次々に難題も持ちかけられ、工事費用は当初の700億円が最終的には1100億円かかって2008年にようやく完成した。

注)なお高さは460mから492mにかさ上げされ、さらにその上に電波塔をたてて台北の508mを凌ぐ高層建築ということになった。
だがこんなに苦労して建設した高層ビルの入居率は2013年現在で70%程度だが、これは中国各地(上海も同じ)で一斉に始まった建設バブルの影響でビルが余ってしまい、テナントを募集するのが難しくなったためだ。


 中国のビジネスでは日本企業の場合は問題が多い。それは外務省や大使館が中国政府や地方政府の言いなりで、さらに悪いことに圧力団体になるため商業ペースでのビジネスができない。
森ビルの苦闘はそうした事例の典型で、日中友好という幻想のはざまに落ちてしまい、収益が度外視される。
昨日記載した王子製紙の事例とともに中国ビジネスが完全に行き詰っていることを示す事例と言えそうだ。

注)なお王子製紙の苦闘については以下の記事を参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-910d.html

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