(25.6.3) EU経済の不調と金融緩和策 資本主義はインフレでないと生き残れない
資本主義体制は常にインフレを起こさないと生き延びることが難しいようだ。
ユーロ圏ではドイツをはじめとする緊縮派が、各国の財政赤字をGDPの3%以内に抑えるように経済を運営してきたが、経済は失速し完全に負のスパイラルに入っている。
13年1月〜3月のGDPは▲0.2%だったが、これは6四半期連続でマイナスであり、おかげで失業率は4月に12.2%と過去最高を記録してしまった。
この失業率は平均だから、若者だけに限ってみると24%でユーロ圏の若者の4人に一人は失業している。
不動産バブルがはじけたままのスペインではさらにひどく、失業率は27%でスペインの若者だけに限れば50%程度だから、これでは若者が暴動を起こすのも無理ない。
「緊縮ばかりで仕事を創出しない政治家は無能だ!!!!」
しばらく前まで緊縮派の一員だった日本も、アベノミクス以降日銀が国債をほぼ無制限に購入しているので、すっかりインフレモードになり景気が上向いてきた。
「ほれ、見てみろ。日本が財政規律を放棄して金を擦りまくったら、景気が回復したじゃないか。ヨーロッパもまねるべきだ」
フランスやスペインやイタリアと言ったとても緊縮財政についていけない国々がドイツを突き上げたので、メルケル首相とオランド大統領が手打ちをして、しばらく緊縮財政はやめることにした。
各国にGDP対比3%以内にするのは1〜2年の猶予を与えるといものだが、その間は国債を発行して財政の穴埋めをするのだから、実質的に緊縮財政は棚上げされたようなものだ。
なぜ緊縮財政だと資本主義が持たないかというと、政府が金を使わないと実際に使うセクターがないからだ。
現実は日本もヨーロッパも公共投資などは昔から十分に行ってきており、これ以上公共投資をしても維持費のほうがかかってしまう状況下におかれている(ヨーロッパなどはローマの昔から公共投資を行ってきた)。
それでも公共投資をするのは当座の仕事ができるからで、失業対策にはなるし企業は利益を上げられるので、将来のことは二の次にして取り合えず、困った時の公共投資になる。
そしてその資金は国債を発行して賄い、その国債の購入は実質的に日銀が行っているのだから、これは日銀が金を印刷して渡しているのと何ら変わりがない。
当然インフレ基調になり株も不動産も値上がりして、市場にアクセスしている人の懐は豊かになるが、一方預金者や年金生活者や公務員と言った層のインフレ利益が得られない(あるいは非常の遅くに得られる)人々は生活苦にあえぐようになる。
注)消費者物価には株価や不動産の値上がりはカウントされない。だからそれほど物価が上がった感じはしないが、実際は株も不動産も商品だから、それを加味すると金融緩和により急激に物価は上昇している。
しかしそれでも政府がインフレ政策を推し進めるのは、それがもっとも簡単な景気刺激策だからだ。
「公共投資でも福祉予算でもなんでも増額するぞ。金は日銀が印刷してくれる。インフレになれば国の借金がチャラになるから、いくらでも日銀券を印刷しろ」
インフレは資本主義の宿アだと思う。十分に発展した資本主義国はそれ以上発展しても仕方のない段階に達するが、経済が成長しないと新規にこの体制に入ろうとする若者には職場を用意できない(年寄りがなかなか引退しない)。
そこで無理やりに職場を創設するには政府が無駄な投資をして仕事を創設するしか方法がなくなる。しかしそのためには資金が必要で国債を発行するが、そのファイナンスは日銀が行う。
結局紙幣を印刷するだけだし、経済そのものはいらない仕事で回転しているだけだから、資金の回収はできない。
しかし、幸いなことに紙幣の増刷はインフレを引き起こすから、政府の借金は必然的になくなる。
私が資本主義体制はインフレなくして生きられないというのはそのことで、実際アメリカも日本も、そして堅物のEUも全くふんどしのひもを緩めてしまい、世界中がインフレの花見酒に酔いしれることになってしまった。
こうしたインフレ経済は常に行き過ぎてリーマン・ショックのようなクラッシュが発生するが、これも資本主義体制の宿アと言える。
この体制に終止符を打てばまた異なった社会(これを新しい中世という)が見えてくるが、当面は世界中が花見酒に酔いつぶれるより仕方ない状況になってきた。
注)新しき中世については前に以下の記事で述べておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-4a0a.html
またヨーロッパ経済については以下にまとめて記事が入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html
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