« (25.6.18) 「おくりびと」と葬儀問題 死後対策はどのようにするか | トップページ | (25.6.20) クローズアップ現代 人工光合成がエネルギー問題を解決する »

(25.6.19) NHK 中国激動 「怒れる民をどう収めるか」 高度成長の時代の終わりと分配問題

Image11

 このNHKの報道を見れば「なぜ中国の高度成長が終わったか」が明確にわかる。それまで中国の成長は国内投資貿易輸出)の二つのエンジンで急成長してきたが、今その二つが急激にしぼみつつある
国内投資には北京政府が行う全国規模の鉄道建設や水力発電所の建設や高速道路網の建設と、地方政府が地方の開発業者実際は地方の共産党幹部が経営している)と結託して行ってきた宅地開発があった。

注)中国の成長エンジンにブレーキがかかったことの詳細は以下の記事を参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-4e7a.html

 このうち宅地開発事業が全く行き詰ってきている
地方の宅地開発とは農民から使用権土地は国家の物なので農民は使用権しか持っていない)を取り上げ、勝手に開発業者に販売し農民には安い立退料で立ち退きを要求してきた。
もちろん住民の中には強硬に反対する者もいるが、その場合は地方政府は治安警察を使って主要なメンバーを投獄したり、反対派住民の住居を暴力団を使って焼き討ちしたり、ひそかに暗殺したりして抑え込んできた。

 中国では共産党がすべての権力を掌握しているので、警察権力と司法権力共産党の犬なのでこうしたことはいとも簡単に行われてきた。
なぜ中国の開発がこうも急速に行われたかの理由は、この暴力装置が有効に働いていたからだといえる。

 また資金面では金融機関から湯水のように資金を調達してきたがその調達方法も行き詰ってきた。金融機関が地方政府に対する融資(実際は融資平台という別会社)に対する融資を絞ったからだ。
地方政府が宅地開発でGDPを押し上げていたトリックは、今機能しなくなっている。

注)融資平台の実態については以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-de9a.html

 さらに中国にもIT革命の波が押し寄せ、インターネットの普及によってTwitter や Facebook やYou-Tubeやブログで住民が意見を発信し、それを多くの国民が見ることができるようになった。
もちろん共産党本部は自己にとって都合の悪い情報は遮断する措置をとっているものの、すべての情報を遮断できないのはこの世界の常だ。
一昨年の高速鉄道事故の場合は。いつものように鉄道省は情報を隠蔽し車両を地中に埋めたが、これがYou-Tubeで世界に流れて鉄道省は大恥をかいている。

注)高速鉄道事故の顛末は以下に記載しておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/23727-93d5.html

 今回のNHKの報道はカン雲県陸荘村に発生した宅地開発のトラブルを扱っていた。
ここ陸荘村には戸数350戸、約3000人の住民が住んでいたが、地方政府が立ち退きを要求し、一戸当たり200万円の立ち退き料を支払った。

 従来であったらこれで問題は解決し、一部の住民が騒げば理由をつけて警察が拘留し暴行を加えて脅し揚げ、それでもいうことを聞かない場合は暴力団に命じてひそかに暗殺させるのが常だった。
しかしIT技術の発達は簡単に暴力行為の映像が世界に流れるため、メンツを重んじる北京政府は紛争が起こればそれを理由に地方政府の役人を更迭するようになった。

注)なぜ問題が複雑化するかの原因は中国のGDPの成長率が大幅に減速し、かつてであれば誰にでも職場を見つけることができたのにそれができなくなったことが大きい。
農地を追われた農民は失業者となって補償金で細々と生活しているので、簡単に地方政府のいうことを聞かない。


 困ったのは地方政府で、地方で暴動が発生すると簡単に首を切られてしまう。そのため地方政府としては従来方式の暴力で抑える方式ではなく、何とか話し合いに持ち込み金がかかるのは致し方がないとの方針に変えた。
せっかく築いた地位を棒に振るより金で解決したほうがいい

注)中国では共産党内部の派閥抗争が激しく、ミスが露見すると反対派がそれを理由にその地位を簒奪する。

 だが問題はその金である。
今回の陸荘村の案件では開発業者が地方政府に30億円支払い、使用権を買い取っている。
地方政府は一世帯当たり200万円を住民に支払ったが、350世帯部分で約7億円になる。地方政府の上がりは23億円で、これを上級組織に収めたり、自分たちのわいろとして山分けしたり、一部を地方政府の予算に組み入れたりしてきた。

 中国では公務員の給与は低いのでこうした開発事業の成果を担当者が山分けすることで生活を維持しており、さらに出世を望む場合は上級組織にわいろを贈らなくてはならない。したがって住民に対しては涙金で土地を収用し、文句のいう住民は警察権力で抑え込んできた。

注)中国では共産党員以外は人間扱いされず、ほとんど清朝時代の農奴レベルの扱いになっている。

 ここ陸荘村ではチョウさんという住民がこの措置に不満を持ち北京政府に陳情に出かけたので大騒ぎになってしまった。
さっそく北京警察と連携してチョウさんを拘束しカン雲県にしょっ引いてきたが、拘留中にチョウさんに逃げられ再び北京に行かれたら大変なので追っ手を差し向けていた。

注)中国では警察は弾圧組織だから、地方政府の要請で(当然ワイロが送られている)、その県からの陳情者を拘束することが平気で行われる。

 この番組では仲裁請負人という民間会社が中国にはできて、暴力装置そのものの地方政府と直訴以外にそのすべを持たない住民との間の仲裁を行っていたが、この事件をきっかけに仲裁が成立しそうな雰囲気だった。

 仲裁条件は地方政府は住民に安い賃料の住宅を提供し、補償額の増額交渉に応じることで、一方で住民は北京政府に訴えを起こさないというものだった
だが問題は誰がこの金を負担するかだ。
ほとんどの場合地方政府は金を山分けしてしまっているから住民に支払う金はない。
多くの場合は開発業者にさらに金を出させる方法だが、今まで湯水のように資金供給をしていた金融機関も、開発業者に資金を提供することができなくなっている。
何しろ融資した金のほとんどが焦げ付いているのだから、バブル崩壊後の日本と同じで、長銀や日債銀や北拓が倒産したあの前夜と同じになっている。

注)中国の地方政府に対する金融の実態は以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b399.html

 だから地方政府としてももうこれ以上の開発は不可能なのだ。
そして開発ができないということは国内投資が停滞するということで、それは当然に中国のGDPがこれ以上伸びないことを意味する。
中国の高度成長の時代は終わりパイが増えない以上あとは分配の問題になるのは古今東西どこも変わりがない。
中国は分配の問題を巡って騙され続けてきた住民は怒り狂い、それまでは権力をむさぼって来た地方政府に対し、ちょうどフランス革命前の農民と貴族の対立のような様相を示してきた。

注)中国では毎年20万件の紛争が起こっているが、その規模と激しさが毎年エスカレートして暴力装置だけでは抑えきれなくなってきた。

 


 

|

« (25.6.18) 「おくりびと」と葬儀問題 死後対策はどのようにするか | トップページ | (25.6.20) クローズアップ現代 人工光合成がエネルギー問題を解決する »

評論 世界経済 中国経済 社会問題」カテゴリの記事

コメント

山崎 様 毎日楽しみに拝見させていただいております。
お忙しいところ誠に申し訳ございませんが、質問がございます。
写真で履いておられます草鞋はあのようなコケが生えて濡れて滑りそうなところでも滑らないのでしょうか
つまらない質問で申し訳ございません。
よろしくお願いいたします。

(山崎)この写真は奥秩父の東沢を登ったときの写真です。沢登ですので滑らないようにわらじをはいています。
この沢はとても明るい沢でほとんどコケはありませんでした。
なおわらじだと少々のコケはまったく問題はありません。

投稿: ぽんぽこ狸 | 2013年6月19日 (水) 11時54分

時々、見てためになるもの、??のものどちらもあります。
先日の中国の貿易統計の件ですが、中国が単なる不正をしているとの内容に読めるんのですが。
朝日新聞の解説では中国に投機資金が香港経由で、架空取引のためとのこと。
別に中国は、貿易額を故意に増やしているのではないように理解できるのですが。
また、19日の文では急激にしぼみつつあるとあるのも7%台の成長は急激にというものではないと思うのですが。
少し、独善的すぎるようにおもえます。

(山崎)中国の統計には常に正確性に欠けています。その原因はさまざまですがGDPの7%台という数字も作り上げられた数字です。
中国経済の実態はもう少しすれば誰の目にも分かるようになると思います。

投稿: 海亀 | 2013年6月19日 (水) 20時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (25.6.18) 「おくりびと」と葬儀問題 死後対策はどのようにするか | トップページ | (25.6.20) クローズアップ現代 人工光合成がエネルギー問題を解決する »