« (25.3.12) 東京湾一周180kmを走ってきた。 | トップページ | (25.3.14) 山崎書店の再建がなった。新刊「ぼくが生きたとき」 »

(25.3.13) NHK メルトダウン 原子炉冷却の死角 この報道は正しいか?

2414_013  

  東日本大震災
から2年が経過し、テレビや新聞はこの報道で一色になっている。
問題の所在は2年経過しても約32万人仮設住宅で暮らしていて災害難民になっていること、および福島原発事故に伴う除染作業が進んでいないことが大きな問題になっている。

 そうした中でNHKが放送した「メルトダウン 原子炉冷却の死角」はなぜ福島第一原発がメルトダウンに陥ったのかの科学的検証を行っていた。
このシリーズは今回で3回目で、番組では「メルトダウンが発生していた兆候が二回もあったのにもかかかわらず、第一原発の吉田所長をはじめとする災害対策本部の首脳陣はそれを見逃していた」というものだった。

 最初にメルトダウンを起こしたのは1号機だったが、この1号機には電源がすべて停止してもイソコンという非常用冷却装置が存在し、これは電源がなくても稼動し続ける装置だという。

 イソコンなどという言葉は始めて知ったが、それも当然でこの装置は稼動後40年近く一回も使用されていなかった。
そのため1・2号機制御室にいた技師たちもこれがどのように働くかまったく分かっていなかったという。

 電源そのものは地震で一旦停止後、非常用電源が立ち上がり、その1時間後に津波の襲来で完全に電源を喪失した。
1時間はモニターが稼動していたので原子炉内部の状況を把握できたが、完全電源喪失後はまったく手探りの状態になった。
番組では電源の完全喪失後も技師たちがライトをつけてモニターを確認していたが、実際は何も分からなかっただろう。
ただし番組では一時的にバッテリーが回復したとの説明になっていたがこの辺りの説明になると、何がなんだか分からなくなる

 1号機ではイソコンが稼動しているか否かが最大の確認事項だったが、災害対策本部の首脳は2号機メルトダウンのほうを心配していた。2号機はプルトニウム型で、もしメルトダウンが発生すると被害が甚大になると想定されていたからだ。

 結局1号機の確認は技師が建屋から蒸気が出ているか否かの目視で行うことにし、豚の鼻ここから蒸気が出る)からもやもやとした煙が出ている事を確認した。
この確認によって1号機イソコンが稼動しているとの判断が行われ、災害対策本部では一号機のメルトダウンはさけられると判断したという。

 NHKではアメリカにある原子力発電所のイソコン確認テストの模様を入手していたが、それによるとイソコンが稼動すると建屋全体が水蒸気で覆われ大音響が発生するのだそうだ。
かくして「日本ではこのイソコンの稼動確認テストを一回も実施したことがなく、もやもやの煙で稼動していると誤判断したことがメルトダウンの原因だ」とNHKは伝えていた。

 なぜアメリカではイソコンの確認テストを数年に1回行い、日本ではまったく行われなかったかの原因は、電源完全喪失の確率の問題ではないかと私は思っている。
アメリカでは常に電源喪失の可能性があるのでイソコンに頼っていたが、日本では完全電源喪失はありえないと想定していたのだろう。
結果的にはイソコンは稼動しておらず、翌日にメルトダウンが発生している。

注)テストはある確率の元で行われ、当然確率の高い事故を対象にテストが実施される。

 今回放映されたもう一つの兆候とは、3号機のメルトダウンに関する対応である。
こちらは原子炉に消防車から水を注入するという方法だったが、そのための配管を開けたり閉めたりして、水が原子炉に届くようにしなければならなかった(複雑な配管を原子炉への一本の注入管にする必要があった)。

 技師たちは懸命にその作業をしたのだが、実際400tの水を注入したのに実際は原子炉には45%割程度しか注入できず、55%は関係ない復水器に溜まっていたという
このため炉心が水面上に出てメルトダウンを発生した。

 なぜこの配管を間違えたかというと一度も消防給水のテストをしたことがなく、途中のポンプがどのように動くか把握していなかったからだという(消防給水の漏水が25%以下でないと炉心が空気に触れる計算だっ)。

 番組ではイソコンの稼動も消防給水も一度もテストをしていなかったため、いざというときにまったく機能しなかったと伝えていた。
したがって東京電力の責任は重いというのがこの番組の主張だったが、私はいささか東電に同情した。

 私は現役時代システムの責任者だったから分かるのだが、決定的なテストは実にしずらいものだ。たとえば稼働中にすべての電源を止めてイソコンの稼動を確認するテストをしたとして、本当にメルトダウンが発生したりしたら責任のとりようがない。
あんたなんて事をしたんだ。わざとメルトダウンを起こして日本中をパニックに落とす気か!!!!」
いえ、これはテストで本当はどうなるか確認したかったので・・・・
では何か、あんたはテストで世界最悪の事故をわざわざ起こしたのか、バカか!!」なんて事になるからだ。

 だからシステムであれ原子炉であれ、最悪のテストは実は実施されていない場合が多い。
その結果こうした事故が起こったときは現場力がすべて、現場の責任者に世界の運命を託するより仕方がなくなる。
その時菅総理のように傍からあれこれ要らない指示を出したりすると現場が混乱して現場力が発揮できなくなる。

 今回の事故でNHKは2度もメルトダウンの兆候が在ったにもかかわらず、現場力が発揮できなかったのは問題だといっているが、そうしたのはヒステリーを爆発させた菅総理だと私は思っているので、全面的にはNHKの主張を受け入れることができなかった。

なお、東日本大震災の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43206851/index.html

 

 

|

« (25.3.12) 東京湾一周180kmを走ってきた。 | トップページ | (25.3.14) 山崎書店の再建がなった。新刊「ぼくが生きたとき」 »

災害 東日本大震災」カテゴリの記事

コメント

>決定的なテストは実にしずらいものだ。
ですよね。

それに加えて、かつての反原発運動家たちは、「絶対安全なのか?」って叫んでいましたものね。
そんな連中が噛み付いてくるときに、「最悪の事態のテスト」なんてできませんですものね。
そんなことしたら、「ほら見ろ事故が起きるから、テストをしているんだろう。」って言いますもんね。
反原発運動家たちは「反原子力村」で飯食っていましたからね。

私は、反原発運動家も今回の原因だと思っております。

投稿: へなちょこエンジニア | 2013年3月13日 (水) 07時58分

菅総理が本当に傍からあれこれ要らない支持を出したのか、あるいは出さざるを得なかったのか、さらに、ヒステリーを爆発させたように見えたのかについて、菅元総理自身による解説が、BLOGOSに載っています。
菅元総理の意見をそのまま受け取るわけではありませんが、原発事故処理の不手際の責任を菅元総理に押し付けるのは無理があるように思えます。

事故後の東電および政府機関の対応を見ていると不手際の原因は日本の組織の在り方と、その根底にある日本人の考え方にあるのではないでしょうか。

システムの責任者であった山崎さんの実体験に基づいて、最悪の事態を想定したテストをすることが困難な実態を指摘しておられますが、これこそ、日本人が克服しなければならないことです。

普段は仲間同士で馴れ合って、重要なことであっても、互いに責任を取りたくないために先送りして、なにもしない。重大な事態になっても組織の論理を優先し、担当者の責任をあいまいにする。
これが、現場力を削ぐ原因だと思います。

日本の組織であれば、東電でなくても同じ結果になったことでしょう。なぜなら、この根底にあるものは、組織における意思決定において、和と長幼の序を重んじる、日本人独特の考え方であると思うからです。

東日本大震災は、日本人に考え方を根底から変えることを要求しているように思えます。それは、「和をもって尊しとなす」、「長幼の序」という、人間の本質からかけ離れた、無理のある考え方を捨てることです。
震災後2年たっても災害難民解消と除染が進まない原因も上記の誤った考え方にあるのではないでしょうか。

グローバル化した世界に対応するためにも、日本の組織の在り方、人間関係の築き方等を考え直す時であり、それをしなければ、日本の将来は危ういということでしょう。

投稿: かさなま | 2013年3月13日 (水) 08時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (25.3.12) 東京湾一周180kmを走ってきた。 | トップページ | (25.3.14) 山崎書店の再建がなった。新刊「ぼくが生きたとき」 »