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(25.2.2) シェールガス革命と第3次ウクライナ・ロシア天然ガス紛争

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  第3次ウクライナ・ロシア天然ガス紛争
が始まった。
ウクライナが1991年にソビエトから独立しロシアと対抗関係になって以来、06年09年とロシアの供給制限による脅しが続いたが今度はウクライナがロシアを脅す番になった。

 現在ウクライナはロシアの締め付けで1000㎥あたり430ドルという欧州市場価格で天然ガスを供給されている。ウクライナとしてはこれを何とか優遇価格で供給してもらいたいと交渉してきたが、ロシアの条件はロシア版TPP関税同盟に加入することだった。
これに豪を煮やしたヤヌコービッチ大統領が石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルとシェールガスの開発に乗り出すことにした。
ロシアさん、値下げをしないならいいですよ。わが国はシェールガスを採掘してそのうちにロシアに売ってあげますから

注)天然ガスの価格推移は以下のグラフ参照
http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html#index01

 シェルとの契約内容はシェルが約1兆円の投資をしてロシアとの国境に近いユゾフスクガス田を開発し、生産量を折半する契約で期限は50年である。
現在ウクライナは国内で消費する燃料の約半分をロシアから天然ガスとして供給してもらっているが、ウクライナとロシアは犬猿の仲だ。

 私のようにウクライナはロシア人の国だ誤解していたものからするとこの両国の紛争は何とも合点がいかなかったが、ちょうど日本と韓国のような関係だと理解できてようやく合点がいった。

 もともとといっても13世紀ごろウクライナにはキエフ公国という国家があったが、この国がモンゴルの馬蹄の前に崩れると14世紀にモンゴルを追い出したモスクワ大公国が近隣諸国を植民地にしながら拡大し、この過程でウクライナはロシアに併合された。
元々はウクライナのほうが文明国だったのに蒙古に押しつぶされた間隙をぬって、あの文明度の低いロシアがわれわれを支配した」というのがウクライナ人の気持ちだ。

 もっともソビエト崩壊後はともに経済が低迷したこともあり両国の関係が先鋭化することはなかった。ウクライナが明らかにロシア離れようとしたのは2005年オレンジ革命ユシチェンコが大統領ダイオキシンを呑まされて顔がお岩さんのようになった大統領)になってからである。
我々は西欧の国家であり、EUとともに歩む」とユシチェンコが宣言したため、プーチンの怒りを買った。

そうかい、それなら天然ガスの価格は市場価格にしてもらいましょう!!」
それまでの優遇価格を改めて西欧各国に輸出していた価格にあげた。
06年09年にロシアがウクライナへの天然ガスの供給を止め、一方ウクライナはウクライナ経由東欧諸国行きの天然ガスを抜き取って自国の燃料に当てたため大騒ぎになってしまった。

注)この間のウクライナとロシアの紛争は以下の記事で記載しておいた。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2117-a928.html

 この09年の騒動で結果的に1000㎥当たり430ドルの市場価格になったのだが、収まらないのはウクライナ側で「それなら天然ガスをそっと抜き取って価格を実質的に下げてしまおう」といつもの窃盗行為に及んだ。
いくら価格を上げても黙って天然ガスを抜き取られてはプーチンも歯軋りするだけだ。

 現在ロシアの天然ガス会社ガスプロムがウクライナに70億ドル7000億円)の違約金を請求しているが、その根拠は「契約通りのガスの利用をしなかったから」というのだが、実際は黙って抜き取っているのだからこの窃盗に対する対価を求めているのだ。

 ウクライナは貧しい国だ。人口は韓国並みだが、一人当たりGDPは韓国の3分の1程度だ。ソビエト時代は重化学工業と農業の中心地だったが、前者は安い天然ガスを利用していたことでかろうじて競争力を維持し、後者はロシアの胃袋を満たすために農民は農奴のような生活をしていた。

 未だに1991年の建国時のGDPを超えることなく低迷しているウクライナ経済にとって国際価格で天然ガスを購入できる力はない。
そのため常にロシアと天然ガスの価格交渉でトラブルを起こしてきたがウクライナは最後の切り札を切ってきた。
ロシアがなくてもシェールガスがある

 ヨーロッパはフランスやドイツは環境問題があってシェールガスの開発に消極的だが、ロシアに脅されっぱなしのウクライナポーランドはシェールガスという切り札をちらつかせてロシアに対抗しようとしている。

 プーチンも恫喝だけでは限界があるので、福島原発の影響でまったく原子力発電が停止した日本に秋波を送ってきている。
これからは日本さん、仲良く経済交流をしましょう。いくらでも天然ガスを供給しますよ
シェールガス革命の影響はこうして日本にも及んでいる。

なお、シェールガスに関する記事は以下に纏めて入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat52342835/index.html

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なお出版の経緯については以下に詳述してあります。

http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-1b22.html

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