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(25.1.9) クローズアップ現代 エネルギー大変革 岐路に立つ日本の資源戦略

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  人間長く生きていると何が起こるか分からないものだ。
今アメリカでエネルギー革命が起こった結果、信じられないことに世界の化学関連メーカー肥料・薬品・液晶)やエネルギーを多消費する鉄鋼製紙産業が大挙してアメリカに回帰していると言う。

注)テキサスにダウ・ケミカルやドイツのBASF、日本のクラレが工場を建設していた。

 19世紀末にアメリカはその豊富な石油資源で世界の工場となったが、21世紀になって、シェールガス・オイル革命で今また世界の工場になろうとしている。
20世紀は安い労賃を求めて中国や新興国に殺到していた企業が、今は安いエネルギーを求めてアメリカに殺到している。

注)シェールガス革命の詳細は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-7968.html


 新春のクローズアップ現代は特集で「エネルギー大変革 岐路に立つ日本の資源戦略」と言う番組だった。
出演者はおなじみの日本総研理事長の寺島実朗氏と、日本エネルギー総研の小山堅氏、それと立正大学教授の蓮見雄氏だった。

 アメリカのシェールガスの生産増大はすさまじく、現在天然ガスの4割を占め2020年ごろにはサウジアラビアを抜いて世界最大の石油・天然ガス産出国になると言う。
アメリカでは天然ガスの価格は驚異的に低下しており、2008年13ドルだった価格が今は3ドルで、実に4分の1になっている。
現在世界最大の石油輸入国はアメリカだが、そのアメリカが近い将来輸出国に変るのだから中東ロシアと言ったこれまでの石油・天然ガス産出国に対するインパクトは途方もなく大きい。

 アメリカは徐々に中東に興味を示さなくなり、石油のシーレーンも守る積極的な意思もなくなる。
シリアもイラクもアフガニスタンもイランも勝手にやってくれ。俺は知らん」と言う日がみじかに迫っている。

 ロシアは今まで主として天然ガスをパイプラインで西欧諸国に供給してきたが、安いシェールガスが現れたり、ドイツを中心に再生可能エネルギーの開発が進み西欧がお得意さまであった時代が終ろうとしている。
最近はヨーロッパから価格引下げの圧力が強くそれに応じなければ西欧は「他の代替エネルギーを使用する」と脅しており、まったく攻守交替してしまった。

注)最近までロシアは天然ガスと石油を武器にロシア離れをしているウクライナやポーランドを恐喝していたが、それも過去のことになりつつある。
なおロシアとウクライナの天然ガス戦争の詳細は以下参照

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2117-a928.html

 ロシアのプーチン大統領が盛んに日本に対しエールを送っているのはただ世界の中で一人液化天然ガスを大量に輸入しているからで、これは福島原発の事故で日本の原発がほとんど稼動できなくなっているからだ。
サハリンと東シベリアから天然ガスを供給します。日本は是非ロシアにLNGの施設を建設し、化学工場を建設してください」いつの間にか日本はロシアのパートナー扱いだ。

注)天然ガスの価格は地域性があって、現在アメリカは3ドル、西欧が10ドル、日本が18ドル(液化して運ぶ費用を含む)になっている。日本のLNGの価格が高いのはカタールに足元を見られているからで、日本の発電所のほぼ90%がLNGを使用した火力で発電している。
なお天然ガスを液化したのがLNG.


 中東では近い将来石油が見向きもされなくなることを見越してカタールは先端産業の誘致を積極的に行っており、世界の優秀な科学者や研究者を高給でリクルートしている(その費用は日本が出しているようなものだ)。

 21世紀の世界はアメリカが再び製造業王国に変り、中国や新興国は労賃の安さだけでは対抗できなくなって埋没していき、中東やロシアはその資源価値を減少させ資源外交が意味を持たなくなる世界になりそうだ。

 そうした中で日本のエネルギー戦略は残念ながら混迷を極めている。
福島の事故があるまでは将来のエネルギーの約半分を原発で占める計画だったが、現在は2基が稼動しているだけだ。
前政権の計画では将来はほぼゼロになる(現在安倍内閣は見直しを検討中)。

 約半分を担うはずだった原発が稼動しないとなると、火力発電に頼らざる得ないが、現在のLNGの価格は飛びぬけて高く(長期契約は石油価格に連動している)、LNGの支払いで年間の貿易赤字が6兆円規模に膨らんでいる。
まだ経常収支所得収支があるから黒字だが、黒字幅は年々縮小してそのうちに経常収支も赤字になれば海外からLNGを調達することも不可能になってしまう。

注)経常収支の推移は以下のグラフで確認してください。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_bop-balance

 現在最も有望なのはアメリカから安いシェールガスを購入することで、天然ガスを液化して日本に運べば9ドル程度3ドル+輸送費等6ドル)には抑えられるはずだ。
これなら燃料費が半分になるのだが、アメリカは日本がTPPに参入する条件闘争にシェールガスを使っているので一筋縄では行きそうもない。

 このまま行けば日本はエネルギー資源獲得で国力を消耗してしまうので、原子力発電をゼロにする戦略を中止するか、TPPに加入にてアメリカから安いシェールガスを供給してもらうか、独自にオイルサンド等の開発を行うか国家の存亡をかけた選択を迫られている。

注)再生可能エネルギーのウェイトを高めることはできるが、これが最も高価なエネルギーでやればやるほど燃料代は高くなる。

なおシェールガス革命の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat52342835/index.html

 


 

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評論 世界経済 アメリカ経済 シェールガス・シェールオイル」カテゴリの記事

コメント

寒中お見舞い申し上げますm(_ _)m 本年も益々の御活躍を期待いたします^^
この番組は観たかったのですが私事で観る事が出来ず、恐らく山崎様ならご覧になって記事が載る事を楽しみにしておりましたが…
「岐路に立つ日本のエネルギー戦略」と銘打ちながらも、内容は残念ながら単なる現状報告で終わってしまった様ですね。

アメリカが新たに手にしたシェルガスと言う戦略カード。これが80年代ならば日本も一緒に喜べたのでしょうが、現在に於いてはアメリカがどの様にこのカードを切ってくるかは不透明な所です。
これまで恒例の自民党総裁の首相就任時に於ける大統領詣でも先方から断られましたからね(笑)
またこのカードだけでアメリカが二十世紀の頃の様な世界に冠たる国家になれるとは思い難いですし。
ただ現時点、少資源国である日本にとって大きな選択を迫られている事は確かでしょうね。
最も愚かと思われる原発事業の推進(これは原発事故のリスク云々と言う問題では無く、廃棄するにせよ保管するにせよ膨大な費用の掛かる核廃棄物と言う負の遺産を後世に残すという点で)に関しても将来の核武装も視野に入れる国家としてはおいそれと放棄出来ない側面がありますし、アメリカからシェルガスを輸入するにしても国内価格で売って貰える保証はありませんしね。
じゃあソビエトの天然ガスかと言っても、例え価格的に折り合えたとしてもアメリカの世界戦略の中でその価値が下がり続けている日本が更にアメリカの傘の下から距離を置く様な真似をして引き合うのかって事も疑問ですし…

申し訳ありません、結論の出ない愚痴になってしまいました(汗)
今後の日本の政権運営を含めて、このエネルギー問題も目の離せない要素の一つとなりそうです。
また山崎様の有意義な指摘・推察を期待いたします。

(山崎)有意義なコメントありがとうございました。

投稿: アル | 2013年1月 9日 (水) 14時37分

今やサウジアメリカとか言う言葉があるようですね。エネルギー自給どころか輸出国に変貌した米国が、世界にどう位置づけられるのか、興味シンシンです。
そして、原油タンカーを守護するのは誰なのか。これにもコストがかかりそうです。

再生可能エネルギーは、確かに現時点では高上がりです。
しかし、含水炭素を燃すしか能の無い火力発電、二酸化炭素故の温暖化議論はどうなったのでしょうか。
また、後代に大きなツケを回すのみならずウラン産出国の環境汚染も見逃せない原子力発電、ここは日本がクリーンエネルギー開発の見本となって再生可能エネルギーの低コスト化を世界に示すくらいの意気込みで取り組むべきです。
マズダがハイブリッドに匹敵する内燃機関を提出できたように、再生可能Eにもイノベーションがありうると信じます。

投稿: バイオマスおやじ | 2013年1月10日 (木) 22時06分

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