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(24.12.4) 余計な公共投資の時代は終った。 これからは維持・補修の時代だ。 笹子トンネルの天井板落下事故

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  とうとう恐れていた事態が始まった。古いトンネルや橋梁や高速道路やダムや壁面の崩壊現象のことである。
12月2日に発生した笹子トンネルの事故では、重さ1トンの天井板200枚が110mにわたってトンネル内に落下し、走っていた車3台が巻き込まれ死者は9名になった。

 笹子トンネルは今から約35年前の高度成長真っ只中の1977年に完成されたトンネルで、全長約5km、上下道別で、横流換気方式という換気方式を採用していた(天井に排気ガスを通す通路と新鮮な空気を送気する通路がある)。

注)現在はこの横流換気方式は一世代前の方式になり、今では縦流換気方式と言って一方のトンネルの端からファンで空気を送り込んで排気と新鮮な空気の送気を同時に行っている。

 この天井板は上のコンクリートに固定されたボルトによって吊り下げられているが、このボルトが経年劣化によって抜け落ちたのが今回の事故ではなかろうかと専門家が推測していた。
この吊天井方式全国で49箇所あり、国土交通省はすぐに同方式を採用しているトンネルの再点検を命じている。

 しかし私が一番問題だと思っているのは、トンネルであれ橋であれ高速道路であれ、作るときは「公共投資だからどんどん作れ」と不要な公共施設まで作るのだが、その後の維持・補修についてはまったく考えていないことだ。
最近になってようやく老朽化対策の専門家会議が発足したが、信じられないような後手の対応だ。

 考えても見てほしい。今回のトンネルのように35年間も経過すれば経年劣化で災害が起こるのは当然だ。
ところが安倍総裁の言葉を聞いても「全国で公共投資をおこなえば景気が回復する。そのための建設国債はすべて日銀に引受させる(日銀券を印刷させる)」と言って新規の建設をじゃんじゃん推し進めようとしている。
しかし作った公共施設は必ず劣化し、その後の維持補修に莫大な費用がかかることになるがそのことはまったく考慮されていない。

注)安倍総裁の政策についてについて、特に新規の公共工事がまったく無駄に終ることを以下の記事で述べておいた。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-3a83.html

 私は土木関連の知識はないが、システム開発でも同じ問題が常に存在し、新しいシステムを作っても古いシステムをそのまま残して両方の面倒を見なければならない状況に良く追い込まれた。
システムが2倍になりその維持費用も2倍で、それを運用する要員も2倍、ディスクやテープや夜間作業も2倍になった。
システムは金食い虫と言われたが、本当は不要なシステムを次々に作った結果である。

注)古いシステムにも利用者がいて「このシステムがなくなると仕事ができなくなる」と抵抗された。

 ちょうど新幹線を作っても従来線を残せと言われたり、新しい飛行場を作って古い飛行場を閉鎖しようとしたら住民運動が起こって閉鎖できなかったり、漁港はすべての漁村に作れと言われたりしたのと同じだ。
公共施設は作れば作るほど後の維持・補修対応が大変なのだから、不要な公共投資は絶対にしてはいけない

 今30年以上経ったトンネルは359箇所あるが、それをすべて補修するにはどれだけ費用がかかるか分からない。
金も時間もない場合は中央道や東名や名神と言った幹線道路を中心にすべきなのだが実際はそうはならない。
劣化はどのトンネルにも起こるから、補修要員はすべてのトンネルをチェックせざる得ず、問題があれば交通量の多寡に関係なく補修しなければならない(僻地のトンネルでも中央道でも経年劣化すれば補修は必要になる)。

 このため少ない補修費用をすべてのトンネルに振り分けないとならなくなり、実際は有用か無用か関係なく少しずつ補修が行われる。
北海道の熊とキツネが遊ぶ道路の補修も中央道の補修も同じレベルなのだから、特に交通量の多い道路に問題が発生する。

 日本は人口がますます少なくなり僻地からは人が消えている。
それなのに補修をしなければならない道路やトンネルや飛行場や港湾はわんさかとあって、しかも補修費は新規投資に比べると圧倒的に少ない
日本ではこれ以上の道路もダムも飛行場も港湾も必要なく、どうすればそれを撤去できるかを考える時代に入っている。

 公共投資の時代はすでに終っている。
これからはすべて維持・補修に回すべきで道路やトンネルは作る余裕などなく、道路も飛行場も不必要なものは閉鎖すべきなのだ。
そうした時代が来たことを笹子トンネルの事故が教えてくれたが、政治家は分かってくれるだろうか。

 

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評論 日本の経済 財政金融政策」カテゴリの記事

コメント

初めましてm(_ _)m 大阪に在住する50歳、男です。
シャープに関する記事を検索していた所、こちらのページに辿り着きました。
今回のトンネル事故に関するコメントには全く同感です。
マスメディアの報道では、やれ安全確認に手落ちが有ったのではないか?とか当時のコンクリート材料に使われた砂利に塩分が多く含まれていた事が原因ではないか?等々の瑣末な(乱暴な言い方をすればどうでも良い)事柄をその論調や議論の中心にしてしまっています。
今回の事故が、これから始まる数々の社会インフラにおける老朽化問題の序章である事を前面に打ち出した記事若しくは番組を残念ながら私は目にしていません。
最近の(では無いかも知れませんが)マスメディア報道の質の悪さには甚だ気が滅入る思いです。

それにしても凄いエネルギーですね^^
まだ今日の分を含めて数点の記事しか読ませて頂いておりませんが、毎日新しい記事を更新されて尚且つ的確で簡潔なコメントを入れられている作業には頭が下がる思いです。(汗)
過去の記事も含めて、またこちらのページを拝読に伺わせて頂こうと思います。
どうか益々の御活躍をお祈り申し上げます。

追伸
社会インフラに関して、私個人としましては水関係の仕事をしていた関係で上下水道管(特に上水道管)の老朽化を憂いています。
浄水場施設を整備して、やれ東京の水は美味しくなった、大阪の水も美味しくなった等と馬鹿げだ報道が垂れ流されていますが、それより肝心な水道管設備の改修は全国殆どの地域で遅々として進んでおりません。
簡易な物で良いですから浄水器を取り付けられる事をお薦め致します。(トリハロメタン等の化学物質よりも錆等の微細粒子が混入している事例がかなりみられます)

(山崎) とても丁寧なコメントをありがとうございます。浄水場関連の話はとても参考になりました。感謝いたします。

投稿: アル | 2012年12月 4日 (火) 20時08分

はじめまして。
今回の事故を見て、そもそも、あの天井板は何のために付けてあったんだろうと疑問に思いました。
埃よけ程度のものが必要なら、波板とかベニヤ板でも十分だったんじゃないでしょうか。
それなら、落ちてもこんな大惨事にはならなかったでしょう。
それを、何トンもある上に、自然に落ちて来るような危険なものが、いったい必要だったのでしょうか。

まあ、しろうとの疑問ですから、実は何かきっと重要な理由があるにちがいありません。
たとえば岩盤崩落の防止、とか?
いや、自分で勝手に落ちてしまうようなものが、落石などに耐えられるはずもありませんね。
しかし、ネットを見てもどこにもその回答が見つかりません。

こんどは、なぜそれが必要であるという理由が見つからないのか、と。
しかし、こちらを読ませていただいて納得しました。
もともとそんな理由などなかったのですね。

やはりあれは、必要もないのに、政治家と企業の利益のために作っただけ、という結論ですが、いかがでしょう?

それにしても、そういうものが、トンネルだけではなく、危険のあるなしに関わらず、日本中到る土地にひしめいている。よくも作ったものだと、あきれてしまう。
そのメンテのために税金を浪費しなければならないと思うと、暗澹たる思いです。

(山崎)当時の技術では換気と排気を一緒にするだけのファンの能力がなかったので、別系列にしてそのために天井板を張り、真ん中を仕切ったのだと思います。
現在ではファンの能力が格段に上がっているので一方の端から他方に空気を送るだけで換気と廃気ができてしまうので、天井板を設置する必要はありません。
本来ならすべての天井板を取り払ってしまうのが一番ですが、日本では新規の工事は予算がつくのですがメンテにはケチる傾向があって改修ができません。
ただし今回の事故を教訓にメンテの重要性に気がつくと思います。

投稿: 裏のねこ | 2012年12月 7日 (金) 15時50分

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