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(24.12.9) NHK BS歴史館 「ミッドウェイ海戦 敗北が語る日本の弱点」 その2

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本件は(その1)の続きです。(その1)は以下参照 
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-88e8.html

 今から思うと信じられないかもしれないが、真珠湾攻撃からのほぼ半年間は日本海軍は圧倒的な戦力でアメリカやイギリスの艦隊を駆逐していた。
山本五十六連合艦隊長官は当初から短期決戦を志向していたが、そのためにはハワイに隠れていると想定されたアメリカ空母3隻をたたく必要があった。
残されたアメリカの戦力は空母3隻だけだ。これがなくなればアメリカ太平洋艦隊は実質的に消滅する。そうすればアメリカはドイツとの二正面作戦は無理だから日本と停戦を望むだろう」これが山本長官のシナリオだった。

 日本はこの目的遂行のために1942年5月に海軍のトップ100名(将官や参謀)を広島の呉軍港に集めてミッドウェイ攻略作戦図上演習を行っている。
図上演習とは今で言うシュミレーションだが、ドイツから導入された作戦方法で、敵味方の装備や兵士の能力を数値化し、発生確率をさいころを振って予測する方法である。

 山本長官宇垣連合艦隊参謀長ら主だった幕僚が参集しており、この図上演習の審判長は宇垣参謀長だった。
日本の戦略は以下のような三段階に分かれていた。

① 空母4隻によるミッドウェイ島の攻撃でミッドウェイの防御能力を完全に殲滅する。

② 海軍の上陸部隊をミッドウェイに上陸させて占領する。

③ あわてたアメリカ軍が急遽ハワイに集積していた空母3隻をミッドウェイに派遣するので、これを待ち伏せして全滅させる。

 このために日本海軍は空母、戦艦、駆逐艦、上陸艦等からなる162隻の大艦隊を組織し、いわば一大決戦に備えていた。
しかしこの図上演習では思わぬ結果が出たと言う。
さいころによる発生確率で想定外にアメリカ空母が日本軍を待ち伏せし、その結果は日本の空母4隻のうち2隻が炎上沈没、ミッドウェイ作戦は失敗に終ると結論が出た。

 あわてた宇垣参謀長がアメリカ海軍の能力を低い値に修正させて演習を継続することにし、その結果日本軍の被害は空母1隻となり、ミッドウェイの占領は可能との結論になったという。
しかし実際はこのさいころ確率が正しく、アメリカ軍は日本軍を待ち伏せし空母2隻ではなく4隻を撃沈し、その後日本軍は空母対空母と言う近代戦を遂行する能力を失ってしまった(その結果日本軍は仕方なしに艦隊決戦と言う日露戦争当時の戦略に舞い戻ってしまった)。

 実は真珠湾攻撃の場合も図上演習を行っており、このときも第一回目の演習では日本軍は敗退する予測になっていた。そこで空母を当初の4隻でなく6隻に増大して2回目の図上演習で勝利を確信している。
一方なぜミッドウェイで再度演習をしなおさなかったかの理由は、時間がなくて切迫していたことと(山本長官が早期決着を図りたがっていた)、油断があったのだと言う。

 それまで日本海軍は真珠湾攻撃でアメリカ太平洋艦隊の戦艦を全滅させ、マレー沖海戦ではイギリスの東洋艦隊を全滅することに成功し、珊瑚海海戦で何とか勝利することができていた。
アメリカは弱い。日本海軍を恐れて残った空母3隻をハワイの真珠湾に隠して戦闘にも出られない。ミッドウェイは高々防御のための航空部隊がいるだけだから赤子の手をねじるようなものだ」そう日本は思っていた。

 しかしアメリカ太平洋艦隊司令長官ニミッツはまったく別のことを考えていた。
日本海軍はおごり高ぶっているので闇雲に攻めてくる。日本軍の暗号は完全に解読しているので何時どこから攻めてくるのかも分かっている。
アメリカの空母が待ち伏せをして日本の空母をたたけば勝利はアメリカのものだ


 ニミッツ司令長官は真珠湾の二の舞を避けるためミッドウェイの防空態勢を強化し(高射砲、機関砲、航空機等を十分配置して準備していた)、一方アメリカ空母は日本空母との決戦に備えさせた。
ミッドウェイの防空に空母を期待するな。空母の目的は日本軍の空母殲滅だけに特化せよ」これがニミッツの戦略だった。

 それに対し南雲中将が率いる空母艦隊の指揮はお粗末だった。
アメリカ軍の空母が待ち受けているとはまったく考えなかったために飛行機と潜水艦による索敵をなおざりに行っただけで、敵艦隊は存在しないとの結論に達していた。
アメリカは真珠湾と同様にまったくわが軍に気付いていない。相変わらずアホだ!!!」
そこで悠々とミッドウェイ島を攻撃したのだが、思わぬ反撃にあって第一波の攻撃ではまったく打撃を与えることができなかった。

ミッドウェイ島の防御は完璧です。攻撃に失敗しました
戦闘部隊からの報告で第一波だけでは不可能なので第二波攻撃の要請が南雲部隊に伝達された。
残っていた航空機は対空母や海戦用に魚雷を装備していたのだが、南雲中将は急遽魚雷をはずさせて陸上攻撃用爆弾に付け替えさせたこうした時間は1時間程度かかる)。

 その途中信じられないような情報が策敵機からもたらされた。
空母3隻発見
魚雷を陸上用爆弾に変更している途中にアメリカ軍の空母が発見され、日本軍空母の攻撃に発進しているとの情報がもたらされたので再び大騒ぎになってしまった。
南雲中将は再度陸上攻撃用爆弾を魚雷に付け替えさせる作業を命じたが、そのときアメリカ軍の急降下爆撃機が日本の空母におそいかかり日本海軍の虎の子の空母はニミッツの戦略にはまって海の藻屑となってしまった。

注)ただし空母飛龍の司令官だった山口多門はこの状況下では魚雷と爆弾の付け替え作業は時間の無駄と判断し(南雲中将の指令を無視して)、爆弾のまま航空機を発進させてアメリカ空母ヨークタウンを撃破している。
戦闘では時間と判断の勝負になるが、凡将の南雲中将にはそうした判断力はなかった。

 この敗戦で日本海軍はアメリカと互角に戦う戦闘能力を失いその後は一方的な敗北を重ねるだけになった。
防衛省防衛研究所主任研究員の小谷氏は「作戦重視、情報軽視」の結果だと言っていたが、私はそれとともにアメリカ軍の戦闘能力を低く評価したのが原因だと思っている。
 
 図上演習ではまさに想定外のアメリカ空母の出現(実際そうなった)が予測されたのに確率が低い案件として無視して真珠湾のときよりも安易な作戦遂行をしたのがその証拠だ。
無敵、日本海軍が負けることはない。さいころ確率がおかしいのだ

 こうして日本海軍は大敗北を喫したのだが、このミッドウェイの敗北の責任を南雲中将山本司令長官も取らなかった。
これこそが日本の最も悪い癖で、失敗すると仲間内でかばって原因追及をうやむやにする」と指摘したのはゲストの田原総一朗氏だが、日本の悪いところがすべて出た作戦だったのは事実のようだ。

 この敗戦から分かる日本人の最大の欠点は以下のように纏められる。

① 戦闘重視・情報軽視(今でも日本にはCIAのような情報機関がない
② 負けると言う結論を嫌がってデータを操作する(
理論的につめない
③ 失敗の責任を仲間内でかばって外に出さない(
同期の仲間と言う意識
④ トップが年功序列なため無能な将軍が指揮を取ることになる(
アメリカではニミッツが少将だったが能力NO1と認められて大将に抜擢された。一方日本は無能な南雲中将がそのまま指揮を取り続け、本当に有能だった山口多門は飛龍とともに運命をともにした

なお日本史の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat47308511/index.html

 

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コメント

史実によると山本五十六には、もうひとつ大きな判断ミスがあるそうですね。

戦艦大和は高度な通信システムを持っていましたが、前方の航空母艦4隻は航空機収容に場所を取られて、そんなものを置く余裕はなかったそうです。空母4隻の後方で待機する戦艦大和は開戦前夜、米軍の尋常でない通信状態に機動部隊の存在に気が付いていたらしいのです。しかしもし、そのことを南雲中将に打電すれば、大和と上陸部隊を乗せた輸送船団の位置を相手方に教えることになる、という理由で山本自身が中止を命じたらしいのです。日本海軍機動部隊は、闇夜の中を突撃させられていたんですね。歴史にもしはないのですが、もしあの時、輸送船団を退却させてでも受信内容を南雲中将に連絡していれば、酸素魚雷と陸用爆弾の交換は行っていなかったと思います。また索敵機が米機動部隊を発見した確率も高かったと思います。

つまらない話を長々と申し訳ありませんでした。

(山崎)いつも貴重な情報を提供してくださって感謝します。とても興味深い内容です。通信はすべて傍受され解読されていたのにそのことに気がつかず通信制限をしていたという日本海軍の大失敗の歴史ですね。

投稿: 三太郎 | 2012年12月 9日 (日) 11時43分

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

(山崎)ありがとう。

投稿: 得意な科目 | 2013年6月 5日 (水) 10時56分

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