« (24.11.28) 為替相場は金融政策で決まる  なぜユーロ高か?  安倍総裁の金融緩和発言で市場は大騒ぎ | トップページ | (24.11.30) ためしてガッテン 「中年ボディーが激変、くびれ・若さ復活up」 »

(24.11.29) BS世界のドキュメンタリー 「中国 教育熱のゆくえ」 中国の私立大学は粗製乱造  

191112_032

 今回見たBS世界のドキュメンタリー「中国 教育熱のゆくえ」は非常に興味深かった。
このドキュメンタリーはNHKとの共同制作で、登場人物は中国武漢市にあるかなりいかさまの私立大学の講師3年制だったから日本的な意味では専門学校)と、そこに入ろうとしていた武漢市の近在に住む貧しい農村の女性の受験生、そして武漢大学と言う二流大学を出て就職活動をしている青年を追ったものだ

 私立大学の講師は毎年夏休みに主として農村地帯の高校を巡り歩いて受験生の募集活動をするのだが、この講師は150回の募集活動と、一回当たり3人の登録受験意思の確認書)をとることをノルマとされていた。

 問題はこの大学は大学とは名ばかりのいかさま大学で、リクルート場で講師図書館、実験室、会議室、講堂、自習室があり、優秀な講師陣がそろっていると説明していたが、実際は校舎以外は何もなく講師陣は9割が無資格だと言うと講師がカメラに向かって説明する)。

 この大学の授業料は年間25万円程度で3年間で75万円かかり、生徒数は約5000人だから年間12億円規模の授業料が入ることになる(講師は8億円といっていたので生徒数に水増しがあるのかもしれない)。
この大学はただ金儲けのためにのみ生徒をかき集めていると講師は言い、「教える側は時間を無駄にしているし、教わる側も同じだ。ただ卒業証書がほしいだけだ」という。

注)中国人の平均所得は北京市では65万円程度、農村部はその3分の1程度だから20万円程度。したがって1年間の授業料が年収より多いことになる

何だ、それでは日本のほとんどの大学と同じじゃないか」と思ったが、日本の場合はさすがに金儲けのための経営などと恥ずかしいことは言わない。
この大学はオーナーが詐欺容疑で捕まり結局閉鎖し、件の講師は転職してIT産業で勤めていた。。

 一方この学校に入ろうとしていた少女は以下のような状況にあった。
中国では日本と同様な統一大学入試試験があり、これで高得点を取らないと希望した大学には入れない(日本的な感度では国立大学や有名私立大に入れない)。
この女性は勉強が苦手らしく統一試験の成績がかなり悪かったため私立大学(日本的な感度では専門学校)にしか入れない。
それでも大学に行こうとするのは貧農から抜け出す唯一の手段が大学卒の証書をもらって大企業に就職することだからだ。

 娘の両親はレンガ工場を経営していたが、ある日の収入が34元400円程度)ぐらいだから、とても娘を大学に入れる資金はない。
こうした場合中国では親戚一同の互助組織があって、食事会を開催してカンパ(実際は借金)を集める。
番組ではその様子を追っていたが、入学先の大学は本当は卒業後の就職先などほとんどないいかさま大学なのに、借金しても両親は娘を大学にやろうとしていた。
そして件の講師は「田舎の高校生と両親をだまして授業料をせしめ上げるのが目的だ」と嘯いていた。

注)この大学が倒産後この娘は他の大学に移っていたので、番組のスタッフが「あれはいかさま大学で、そのうちにつぶれる」とでも教えたのだろうか?

 もう一つの事例は武漢大学 珞珈学院を卒業して就職活動をしている青年を追ったものだ。
当初どこでも入社できると青年は考えていたが実際は就職先はなかなか見つからない。
ようやっと見つかっても1週間の試験期間と、3ヶ月の仮採用期間があって、その後でないと本採用にはならない。

注)この武漢大学 珞珈学院は一流校の武漢大学とは別物でいわゆる三流大学だそうです。

 この青年は試験期間までは行くのだがパソコンの操作が苦手ですぐに首になってしまう。
大企業でも仮採用期間中は月額1500元約1万8000円)程度で、実際は仮採用にもならないからほとんど収入はない。

注)中国の初任給で最も高いのはIT 産業で3500元(42000円)程度。この青年の給与は相当に低い。

 武漢市での生活は最低でも1000元1万2000円)程度はいるようで、家賃に500元6000円)必用だといっていた。
この青年はいずれも就職活動に失敗していたが、中国全土でこうした若者約200万人規模でいて、中国では蟻族というのだそうだ。

注)前にクローズアップ現代で放送されたときは新卒の大学生約500万人のうち約200万人が就職できなかったと伝えていた。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/21528-d770.html

 中国では大学を出なければホワイトカラーになれず、しかしそのためには一流校を出なければならない。このため子供も親も大学入試に血眼になるが、成績の悪い子はかなりいかさまな私立大学に入らざるえず、しかもそうした大学を出ても就職先はない
蟻族といってただひたすら就職先を求めて歩き回る人生が待っていると言うのがこのドキュメンタリーのレポートだった。

 中国の教育事情は日本より劣悪で粗製乱造の私立大学の卒業生は就職できず、あるいはしたとしても低賃金労働者となるようだ。

注)なおこのドキュメンタリーは日本で言うドキュメンタリーとは異なり、後から場面をいくつも挿入していると思われた。
いわばリアル場面とドラマ場面があるのだが、それをすべてドキュメンタリーと称していた。


なお中国の社会問題の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48428075/index.html

|

« (24.11.28) 為替相場は金融政策で決まる  なぜユーロ高か?  安倍総裁の金融緩和発言で市場は大騒ぎ | トップページ | (24.11.30) ためしてガッテン 「中年ボディーが激変、くびれ・若さ復活up」 »

NHK BS世界のドキュメンタリー」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
私も先程、再放送で 「中国 教育熱のゆくえ」を見て、感じるところが多くあり、他の方はどう感じたのだろうと調べているうちに、こちらのサイトを拝見しました。
この番組に出てくる3人の人物(農村の受験生、二流大学の卒業生、イカサマ私立大学の講師)、それぞれに絶望と悲哀があり、未来に希望が持てないことに、やりきれない気持ちになりました。農村の受験生も、いずれは二流大学の卒業生と同じような状況になり、両親が苦労して工面した学費も、大学経営者の私腹になるのだと想像できます。
この番組を通して、中国が抱えている不平等・格差社会、モラルの欠如が垣間見えました。そして、それは、教育の問題に限ったことではないように思いました。
私も、世界情勢に関心があり、「BS世界のドキュメンタリー」をよく見ています。また、こちらのサイトを拝見して、勉強させて頂きたいと思います。

(山崎)サイトに来てくださり感謝いたします。

投稿: ひまわり | 2012年12月 4日 (火) 19時48分

はじめまして。

番組自身は見ていないですが、「武漢大学」は決して二流大学ではありません(別に関係者ではないですけど)
武漢大学は日本から見ると、地方の旧帝みたいな感じです。

この中国大学ランキングにおいては、http://www.spc.jst.go.jp/enjoy/ranking/ranking_090409_2.html
武漢大学は第十位です。

それほど中国の就職がきついです。

(山崎)そうなのですか。。ランキングは確認したら相応の大学でしたので修正しておきました。

投稿: | 2012年12月22日 (土) 15時20分

こんにちは、中国出身者です。

番組中の武漢大学と言うことが、恐らく日本語に通訳する時に、手抜きしたと思います。
中国語のせりふを聞くと、実際に全称は「武漢大学 珞珈学院」という名前の学校で名門の武漢大学とは全くレベルが違う大学です。

中国では、武漢大学のような名門校と何らかの連携関係を持ち(例えば資金連携など、その場合名門校は株主みたいな存在となる)、校名に名門校の名を前に添えることは少なくありません。
しかし、例え名門校の名を前付としても、その学校の質が変わりません。

番組の中の「武漢大学 珞珈学院」は、主人公の万超が言ったとおり、
一流大学ではなく、実は三流大学だそうです。

(山崎)丁寧な解説をしていただき、これでようやく疑問が解消されました。ありがとうございます。内容を修正しておきます。

投稿: 銭 | 2013年2月 3日 (日) 23時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (24.11.28) 為替相場は金融政策で決まる  なぜユーロ高か?  安倍総裁の金融緩和発言で市場は大騒ぎ | トップページ | (24.11.30) ためしてガッテン 「中年ボディーが激変、くびれ・若さ復活up」 »