(24.11.9) オバマ大統領の圧勝と今後のアメリカ経済 超金融緩和と再バブル発生の予兆
アメリカ大統領選挙はオバマ氏の圧勝に終った。アメリカの選挙は538人いる選挙人の過半数を取れば勝ちで、ロムニー氏に100人近くの差をつけたのだから圧勝だが、投票率ではほぼイーブンだった。
接戦州をオバマ氏が抑えた結果だが、こうした勝ち方をアメリカでは「プロの選挙方法」と言う。
たとえ全体の投票率がイーブンでも選挙人の多い州で過半数をとれば、その州の選挙人を丸取りできるので、選挙で勝てるからだ。
日本的な感度では投票率がほぼイーブンだったので接戦と言う印象だし、事前の世論調査でも接戦をささやかれていたが、結果的にオバマ氏が勝利できたのは経済が上向き、失業率が低下したからだ。
最もこれはFRBのバーナンキ議長が紙くずとまったく異ならない不動産担保証券(MBS)を担保に未曾有の金融緩和を行った結果で、おかげでありあまった資金が不動産に流れ込んで低迷していた不動産市場が上向き始めた。
アメリカ人は不動産が値上がりするとその値上がり益で消費を拡大するから、自動車を始めとする消費財も売れるようになり、一時10%近かった失業率も8%を下回るようになった。
すべてはバーナンキ議長のプレゼントなのだが、これがオバマ政権を後押ししてオバマ氏の圧勝につながった。
オバマ氏がなぜ財政ではなく金融に頼った景気回復をせざる得ないかというと、日本と同様に財政状況はほとんどパンク寸前だからだ。
オバマ氏が大統領に就任してから毎年1兆ドル(80兆円)規模の財政赤字が続いている。
日本も50兆円規模の財政赤字が続いているから人のことは言えないが、アメリカには共和党と言う財政再建党がいて、オバマ大統領の支出拡大策に何かと言えばクレームをつける(日本では少数政党以外まともに財政再建を考えている党はないので毎年放漫財政が拡大している)。
現在最も問題になっているのは「財政の崖」という問題で、来年早々にブッシュ大統領が行った大型減税の期限がやってきて、このまま行くと増税路線に転換すること、および強制的な歳出削減策を実施せざる得ないので5000億ドル規模(40兆円)の資金が市場から吸い上げられることだ。
注1)ブッシュ減税の終了で約2000億ドルの増税、給与所得税の減税の終了で約1000億ドルの増税、強制的な歳出カットで約1100億ドルの支出圧縮が行われる。それが財政の崖
注2)強制的な歳出カットは11年の債務上限問題のときに上限をあげる代わりにオバマ大統領と議会が妥協した案件で、13年度から10年間で財政支出を1兆2000億ドル(96兆円)の削減をすることになった。
もしこの「財政の崖」がそのまま実施されればアメリカ経済が大失速することは明白で、オバマ大統領の勝利が確定するとNYの株式は312ドルと言う1年ぶりの大暴落を演じた。
「こりゃ駄目だ、オバマ再選で経済は低迷する」
特に金融規制が厳しくなることが予想される金融株や、排ガス規制の対象になる石炭や石油株、強制削減の対象になっている軍需産業株が軒並み下がってしまった。
結局オバマ氏の再選はロムニー氏よりはましという、4年前の熱気とは程遠い醒めた勝利になったが、先行き経済に好転要因が見えないのでいたし方がないところだ。
今後オバマ大統領は財政支出を増大することはできないので、あいも変らずFRBのバーナンキ議長の紙幣増刷経済に頼ることになるだろう。
いまやアメリカもEUもそして日本もただひたすらに紙幣を刷ってはばら撒くことしか景気を支える方法を見つけることはできなくなっている。
だが、この紙幣ばら撒き政策(インフレ政策)は所詮はバブルをバブルでつぶす方法で、更なるバブル崩壊を準備するだけだから、早晩第二のリーマンショックが起こることは間違いない。
だがそれまではどこの政府もインフレ政策と言う名のもとに、紙幣増刷をやめることはなさそうだ。
注1)FRBのバーナンキ議長は「ヘリコプターベン」と言われているが、「景気が悪ければヘリコプターで紙幣をばら撒けばいい」と言い放ったのでこのあだ名がついている。紙幣増刷主義者と言える。
注2)金融緩和の割合は日本を1とするとEUが2、アメリカが3で、アメリカの金融緩和が突出している。
なお、私はこうした超金融緩和策に反対しているがその理由は以下に記載してある。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-2028.html
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