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(24.10.25) 文学入門 辻原登 夫婦幽霊 円朝芝居噺




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  私は読書会のテーマ本はどんなことをしても読むことにしているが、本によっては非常に苦戦をすることがある。
今回のテーマ本「夫婦幽霊 円朝芝居噺」がそれで、歯を食いしばって読むことになった。

 そもそも円朝と聞いても誰のことかわからなかったが、落語界では伝説上の人物で江戸末期から明治33年まで生きて新作落語を演じ、当代随一と言われた落語家だと言う。
そのあまりのうまさに師匠が嫉妬し、先に円朝が演ずる演目を先回りしてしてしまうため(これはトリが師匠でなく円朝だということだから嫉妬するのも無理ない)円朝は已む無く新作落語を演じることになったという。

 「夫婦幽霊」はたまたま円朝の落語の速記録が残っていたので(当時はテープレコーダーはなかった)、その速記録を元に辻原登氏が現代語訳したもので、落語と言うより講談に近い。
辻原登氏芥川賞作家だそうだが、私は知らない。
夫婦幽霊」はちょうど瀬戸内寂聴さんが「源氏物語」を現代語訳して誰にでも読める作品にしてくれたが、それと同じようなものだ。

 だが実際に読み始めると非常にイメージがつかみがたい文章が続く。
登場人物は大工の棟梁であったり、花街の花魁だったり、浪人者であったりして江戸時代の庶民階級の生活を描いているのだが、特に主要な舞台となる花街のことがさっぱり分からない。
日本では戦後売春防止法が制定され、それまでどこにでもあった花街が消えてしまったので、そこの風俗や風習も消えてしまい私などは使われる言葉が何のことか分からないのだ。

 たとえば「床の上では、無数の床しきお床入り、襖、唐紙障子、屏風たてきったる座敷、床割りは、睦言、お勤め、あい入り乱れ、かりょうびんがの楽の音は」なんて表現が随所にあらわれるのだがイメージがさっぱりわかない。
江戸時代の常識が現在の常識とあまりに離れているため当時の人(明治時代の人)には簡単に理解されたことが辞書や注釈がないとさっぱり分からないのだ。

 さらにこの舞台は江戸の下町なのだが私は下町の地理に不案内なのでこちらもイメージがわかない。
京橋川が三つまたに分かれて高橋から霊岸島に渡ります。北新堀で永代橋にとりついて・・・・」
一体どこをどう通っているんだい?????」

 落語の筋は幽霊話で、江戸城の御金蔵の4千両を奪った藤十郎と言う浪人と富蔵と言うもと無宿者が互いに欲がくらんで金子を独り占めにしようとし諍いを起こすと言う筋立てで、そこに安政の大地震が起こり、富蔵は隠した金子を掘り出そうとして地震にあってあえなく死んでしまう。
その結果金子藤十郎のものになったのだが、富蔵からこの事実を聞きだしていた大工の棟梁菊治が今度は藤十郎を脅して金をせしめようとしたが、返り討ちにあってしまう。

 それを探索していた南町奉行の与力佐久間長敬が役者に富蔵とその女房の幽霊を演じさせ、藤十郎を自白に追い込むと言う筋立てである。
それだけの話だが、なんとも言葉が難しいのだ。以下は幽霊のせりふだが分かるだろうか。
悪いという悪いことは二三の水出し、やらずの最中、野天丁半の鼻張りだ。河原の小石と富蔵が歌に残せし大工うた、種はつきねえ大利根無宿、・・・・」

 本当に読みきるのに疲れきってしまった。この本は古典落語に興味を持っていたり、江戸の庶民生活の研究者には格好の本だが、それ以外の人には読むのが難しい本だ。

 まことに「降る雪や明治は遠くなりにけり」だ。

大事な注)私はこの「夫婦幽霊」の速記録が実際に存在し、それに基づいて辻原登氏が現代語訳していると解釈して上記の記事を書いたが、一方で速記録などなくすべては辻原氏の創作であるという説もある。
現状ではいづれとも断定しかねるので上記の記事はそのまま残しておく。


なお、文学入門の記事は以下に纏めて入っております。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43898465/index.html

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