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(24.10.9) ドキュメンタリーWAVE 頭脳の流失がとまらない ポルトガルの落日 そして日本

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 ポルトガルと言っても一般の日本人はほとんどこの国のことを知らない。かつて日本に種子島と言う鉄砲を伝えたとか、エンリケ航海皇子が大航海時代のさきがけとしてアフリカ航路を開拓したとか、バスコ・ダ・ガマインド航路を発見したとかの過去の知識しか持ち合わせていない。
最近のことはまるっきり知らないのが実際だ。

 今回NHKがドキュメンタリーWAVEで放送した「頭脳の流失がとまらない ポルトガルの落日」はまさに最近のポルトガルの実情を教えてくれた貴重なレポートだ。

 ポルトガルはほとんどギリシャに似ている。人口も1000万人程度だし、GDPはギリシャのほうがやや大きいと言う程度だし、国土もさして変わらない。
そして何よりもヨーロッパの金融危機の荒波に襲われて緊縮財政を政府はとっているが、国民が大反発している姿も同じだ。
ギリシャと同様若者が商店や自動車を打ち壊している。

 ポルトガルの失業率は15%だが、若者に限って言えば36%3人に一人は失業していることになる。
若者の失業が多い理由はヨーロッパの労働者が勝ち得てきた一種の労働ギルド制があり、職種ごとに組合ができていてその組合員でないと職に就けない。
そして組合は現に職を持っている労働者の味方だから(特に職場が縮小している現在は)若者の入り込む余地がないのだ。

 このため現政権のコエーリョ首相は国民に「ポルトガルで職を得ると思うな、ポルトガル語が通じる旧植民地に行ってそこで働け」と公言している。
ポルトガルは首相が自国に見切りをつけた稀有な国家だ
実際ポルトガルでは増税、社会保障費の削減、公務員の首切りが日常茶飯事だから、手に職を持った人々や若者はアンゴラ、ブラジル、モザンビークと言った旧植民地に大挙して職を求めて移動している。

ポルトガル経済の基本的問題は以下のブログに記載してあります。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat42499781/index.html

 特にねらい目はアフリカのアンゴラでここは石油やダイアモンドと言った鉱物資源の宝庫だがその鉱物資源をめぐって2002年まで内戦状態にあった。
アンゴラの人々は戦争には慣れ有能な兵士だが経済を運営するノウハウがほとんどないため、アンゴラ政府はポルトガル人の誘致を積極的に進めている。

 建設・石油・IT・金融のスペシャリストは特に引く手あまたで、最近では公認会計士や大学教師もアンゴラに職を求めて移住してきている。
治安は御世辞にもいいとはいえないが給与はポルトガルのように遅延もないし高給だから現在10万人のポルトガル人がアンゴラで働いているという。

 番組では識者と思われる人がポルトガルの国家を支えてきた有能な人材の流失がとまらないことを危惧していたが、当のコエーリョ政権は「ポルトガルに職がないのだから有能な人は海外で職を見つけてほしい。ポルトガルに留まっても無駄だ」といたって割り切っていた。

 笑ってしまったが、そうしてばかりしていられないのは日本がおかれている状況と酷似しているからだ。
日本の半導体液晶と言ったかつて世界を席巻した技術者が今大挙して旧植民地だった韓国や台湾や中国満州国は日本の植民地だった)で高給で仕事をしているが、それに似ている。
日本では輸出産業が崩壊しシャープソニーパナソニックと言った日本をリードしてきた産業の技術者が馘首されていて、そうした技術者は今旧植民地で働いている。

 日本に新たな産業が育たないからで、金融や医療は最も可能性の高い産業だが、残念ながら政府にはこうした産業を次世代産業に育てようとする本当の戦略がない。
ポルトガルを笑ってばかりいられない事情がここにある。

なお日本の成長戦略に関する私の提案は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48360072/index.html





 

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評論 世界経済 ポルトガル経済」カテゴリの記事

コメント

2ヶ月くらい前から山崎さんのブログ拝見いたしております。
いつも大変ありがとうございます。
具体的で分かりやすく経済情勢を分析してくれますので、ありがたいです。
経済にかんしてはまだヒヨコです。どうか山崎様のご意見をズバリ教えて下さい。
ポルトガル、ギリシャ、イタリア、スペインのように日本も経済破綻になるのでしょうか?
破綻するとすればいつ頃でしょうか?
また、今後アメリカはどうなるのでしょうか?娘がアメリカで働くかもしれないのです。
山崎様の見通しを参考にしたいのです。
お願い致します。         千葉

(山崎)個人でも会社でも国家でも破局は突然にやってくるのでとてもびっくりしますが、遠因はどこにもあります。
たとえばシャープが今苦吟していますがしばらく前までは日本の誇る最も優良な会社でした。
シャープが現在の状況になったのは円高の影響を技術でカバーできると思って日本国内に主要な工場を建設したからです。

日本の場合は税収不足を国債の発行でカバーして国家運営をしていますが、いつまでこの国債発行を続けられるかにかかっています。金融機関や海外の投資家が買わなくなれば日銀が引き受けますが、これは通貨の増刷と同じですからその段階でハイパーインフレに突入します。
それがいつになるかはほとんど突然に来ますので時期の特定は困難です。
地震と同じと思って、もし資産をお持ちであれば外国通貨や金投資をして資産分散をしておくのが個人としては唯一の手段でしょう。

アメリカについては覇権がいつまで維持できるかにかかっています。20世紀の後半にアメリカの覇権を脅かしたのは経済的には日本、軍事的にはソ連でしたが、現在アメリカの覇権に挑戦しているのは中国です。
アメリカが中国との軍事、経済、文化の戦いで負けなければ覇権を維持できます。

経済的覇権とはドルの支配のことで、どんなにドルが減価しても世界はドルを使用せざる得ない状況が続きますので、アメリカはドルの印刷でしのぐことができます。経済的破綻はなくてドルを持っている人が損失をこうむります。

お子さんの職場としては一般的には最も景気のいい国で働くのが楽ですので、最近まではオーストラリアやブラジルや韓国あたりが狙い目でしたが、今は景気が減速し過渡期に入りました。

アメリカで働くことがいいかどうかは個人の能力と国の能力との相関ですからなんともいえません。
景気がいい国では個人の能力が低くても容易に職場は得られ反対だと有能かコネのある人しか職場は得られません。

かくしてずばりと答えることはほとんど不可能なのです。
もしお子さんが能力があればどこの社会でも相応の生活はできますし、そうでなければどこに住んでいても落ちこぼれます。

投稿: 千葉 | 2012年10月 9日 (火) 23時06分

山崎様

おはようございます。

早速教えていただきありがとうございました。「アメリカ覇権維持」「ドルの印刷」「中国との戦い」

大変ありがとうございました。

山崎さんは活動的で励みになります。前向きに生きていきます。ブログ楽しみにしています。千葉

投稿: 千葉 | 2012年10月10日 (水) 07時37分

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