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(24.7,26) 極東ロシアが中国に侵食されている。 NHK 大地はだれのものか ロシアを耕す中国人

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 これではロシア極東地帯の農地が中国人のものになるのは時間の問題かとつくづく思ってしまった。
NHKが放送したドキュメンタリーWAVE「大地は誰のものか ロシアを耕す中国人」を見た感想である。

 ロシア極東部はソビエト時代には多くのコルホーズがあって農地の耕作をしていたが、ロシアになってから耕作する農民がどんどん少なくなっている。
直接の原因は個人に分配された農地を耕す農耕機械がなくもてあましてしまったからだが、より根本的には極東地区から人々が都会に逃げ出しているからだ
僻地で貧しい農民でいるよりモスクワで一旗あげよう」と言うことで、石油や天然ガスやその他資源の採掘労働者になるほうがはるかに実入りがいい。

 そのため極東の耕作面積はソビエト時代の約半分になり多くの農地が耕作放棄されている。
この地帯で多く収穫されていた大豆もソビエト時代の半分になり、危機感を持ったロシア政府は中国農民による土地のレンタルを認め大豆や野菜の生産を中国農民の労働力に期待することにした

 中国ではこのロシア政府の決定を好機と捉えた中国人が輩出しているらしく、番組に登場した王さんはロシアで6000haの土地をレンタルし、そこに70人弱の中国農民を送り込んで大豆や野菜の生産を行っていた。
私はこうした農産物は中国に輸出されるのかと思っていたが、実際はすべてロシア国内で販売されていた。
輸送費や関税が高くとても中国に持ち込んでは採算が合わないのだという。

 中国農民が大量に大豆の生産を行い現在はソビエト時代の約3倍の生産量になりロシア国内での価格は低下している。
そのため王さんの悲願はロシアがWTOに加盟して関税を引き下げることで、この秋のWTO加盟をにらんで食用油の工場をロシアに建設し中国に販売する計画を立てていた。

 中国の農民は実に働き者だ。番組に出てきた張さんは兄弟二人でおんぼろのトレーラーハウス(電気も水道も便所もない)に5ヶ月間住み込みそこで100haの農地の耕作をしていた。
中国での平均的な耕地面積は2ha程度だから50倍の広さだ。
そこで耕作すると収入は中国の約15倍程度になり、一気に金持ちになれるという。

 中国人は中国から持ち込んだ多収量の大豆の種を使い、農地にロシア人の約3倍の肥料を投下して、見栄えよく多収穫の農産物の生産を行っていた。
これは農地の再生能力を無視した収奪農法でロシア式農法とは異なる。
中国人は寸暇を惜しんで働き続けのでロシア農民は劣勢に立たされている。

 番組にはラリクさんという元ソホーズのリーダーだった農民が、6000haの農地を耕作して中国人に負けまいと孤軍奮闘している様が写し出されていた。
ラリクさんの下で60人のロシア人が働いていたが、どのロシア人も労働意欲が低くラリクさんが少しでも目を離すと日陰で休んでいたりウォッカをがぶ飲みしてトラクターを壊していた。

 ラリクさんは一日中怒鳴りまくっていたが、ロシア人の労働者は馬耳東風と言った具合でかつてのソホーズの労働風景とまったく同じだ。
これには笑ってしまったが、ラリクさんにとっては死活問題だ。

 さらに問題を複雑にしているのが役所の対応で、役所は中国人にレンタルを認める許可を出す代わりに多くのリベートを要求しているらしい。
ロシアの役人の給与は低いのでこのリベートで生活しているらしく、ロシア人に農地を耕させるより中国人のレンタルを好むようだ。

 番組に出たラリクさんは2000haの農地を自己所有にするため登記を求めていたが、裁判所が認めても地方の役所はそれを固くなに拒んでいた。
ロシア人のものになったらリベートは入らないが中国人にレンタルすればピンハネできるからだ」とラリクさんの怒りは収まらない。
どうやら役所は中国人に完全に買収されていた。

 客観的に見てこの勝負は中国の勝ちだ。ロシア人は農業を嫌がり(ラリクさんもあきらめてロシア人労働者の代わりに中国人労働者を雇っていた)、極東の地を離れていく。

注)ロシアは日本と同様に人口が逓減しており、さらに極東地区のような田舎に住むことを好まない
ロシアの人口問題は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-2928.html

 近い将来ロシア極東の地は実質的に中国人が農業生産を行う土地に変わってしまうだろう。
農産物は中国に輸出されるのでロシアの貿易量は増えるが実際の収入は(リベート分を除いて)すべて中国人のものになりそうだ。
こうした状態をプーチンは黙って放って措くのか、それともナショナリズムを鼓舞するために中国人を追い出す政策をとるのか分からないが、中国人なしにロシアの農業が成り立たなくなりつつあることは確かだ。

なおロシア経済については以下のカテゴリーに纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44368795/index.html

 

 

 

 

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コメント

久々に撮りためたビデオをみてブログを書こうと思い、関連情報を探していたら貴ページを発見しました。
つくづく、つくづく納得しました。
ロシアと日本、よい部分も悪い部分もよく似てるんですよ。
ロシア人は日本のいわゆる「有機農法」に理解を示してくれると思います。
中国のケミカル農法は米国アグリビジネスを地でいく人類にとっての災禍です。
農業に限らず、過去から引きずる問題を解決し、お互いの良い部分を共有できれば、どれだけ発展するかと思います。

投稿: puyopee | 2012年11月17日 (土) 17時35分

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