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(24.7.16) NHKスペシャル 日本の新たな中長期エネルギー政策 原子力といかに付き合うか

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マッスルさんが撮った夕焼け)

 日本の中長期のエネルギー政策の見直し作業が大詰めを迎えているが実際は上を下への大騒ぎになっている。
この場合の中長期とは2030年までのエネルギー政策のことで、3.11の福島原発事故が起こる前までは、原子力45%、再生可能エネルギー20%、火力35%とただひたすら火力発電を止めて二酸化炭素の排出量を抑えるのが基本戦略になっていた。

 しかし3.11の後はまったく様相が一変している。
原子力は二酸化炭素は出さないが危険すぎる。それなら火力の方がよっぽどましでせいぜい地球の温度が数度上がるだけじゃないか」と言う状況になってきた。
政府としては従来の中長期エネルギー政策は破綻したとの認識で、それならば新たな基本政策をどのようにするかで国民的議論を起こすと言っている。
国民的議論と言ってもその内容は、ここ1ヶ月間で専門家が提示した3つの代替案について10箇所で公聴会を開くと言う計画だ。
その結果を受けて8月には基本計画を策定すると言うのだから、はっきり言えば国民の意見も聞いたと言うセレモニーに過ぎない。

 最も今までの原子力政策推進派が一方的に議論をリードし、それを政府が追認してきたのだから確かに今までに比較すれば国民的議論であることは間違いない。

 今回NHKスペシャルで放送された専門家が提示した3案とは以下の通りである

① 原子力  0%  再生可能エネ 35%  火力 65%
② 原子力 15%  再生可能エネ 30%  火力 55%
③ 原子力 20~25% 再生可能エネ 25~30% 火力 50%

①は原子力発電を一切止めると言う案で、②は原発の中で古い原発だけ廃棄する案、そして③は現状のまま原発を使い続けると言う案である。


 ①から③までの提案をしていた専門家が出席してこの案を提案した趣旨をそれぞれ説明していた。

①案 富士通総研主任研究員 高橋洋氏

 従来原子力のコストが最も安価だと言われてきていたが、3.11を経て見直してみると実際はどのくらいコストがかさむかわからないような発電だ。
廃炉・除染費用、安全対策の強化、使用済核燃料の処理費、賠償金等、現状では確定していないが今後増加することはあっても減少することはない。
原子力はコスト面ですでに行き詰っており、早急に廃炉処理するのがよい。

②案 一橋大学大学院教授 橘川武朗氏

 原子力については危険性と必要性のジレンマにさらされており、危険だからすぐに止めろとか、電力供給の安定のためには必要だから今後も使い続けると言ったような一方的な議論をしてはならない。
取りあえずは2030年までに耐用年数がくる原子炉は廃棄し、それ以外の原子炉は使用し続けて2030年の段階でもう一度判断するのが良いだろう。

③案 東京工業大学特命教授 柏木孝夫氏

 電力供給の選択肢を残しておくことが大事で、世界の資源価格の推移に適切に対応できる弾力性を日本経済に持たせなければならない。
たとえば日本が原子力を一方的に止めるとウラン価格は低下し、一方LNGや石炭や石油の価格が上昇する可能性が高い。
日本は常に最も高価な資源を使用することになり日本の経済力は急速に低下する。
だから現状を維持しながら資源価格にあわせた対応を取る必要がある。

 この専門家の提言に対して4人のコメンテーターが意見を述べていたが、私もコメンテーターとして参加させてもらえば、私は②の意見に基本的に賛成だ。
①の廃炉処理をするとしても古く危険な原発から廃炉処理をするのが現実的だし、一方電力不足が想定される場合は新たに火力発電所を建設するよりは安全性が確認されている原発で電力供給をするのがコスト面では優位性がある。

 また③の今の原発の水準をこのまま維持すると言うことは、廃炉分に相当する新たな原発を作り続けることで、これは3.11の教訓を何も考えていないのと同じだ。
実際に建設を行おうとしても受け入れる自治体はないだろうし、かつてのように補助金等でつる政策も(それを今までのように電力料金に反映させることが難しいから)できそうもない。

 結局は廃炉の期限がきたら廃炉し、新たな原子炉の建設はできないのだから原子力のシェアは徐々に低下していくことになる。
その間で電力不足が予想されれば日本経済を省エネ型に変えていくより他に選択肢はない。
蛍光灯はLEDに変えられ、自動車はHVになり、無駄なネオンや照明は消され、輸出産業は日本から出て行き、家庭でも電力を細かく管理するようになるのだろう。

 電力需要はエネルギー政策の見直しの前提では全体で1割削減だが、実際はそれをはるかに上回る削減がされて、(2030年以降)原子力がすべてなくなっても問題がないというのが私の見立てだ。

注)エネルギー政策立案の前提条件の一つに経済成長率の予測がある。
政府は名目で3%、実質2%の経済成長をするとの前提でエネルギー政策を策定しているが、実際は日本は経済成長はしないだろうと私は判断している。


なお日本の原子力行政についての記事は以下のカテゴリーに纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat46318075/index.html

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評論 日本の政治 原子力行政」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
文末では2030年に0基、とありますが、2番を選んだのは、さすが政府の思惑通りになってしまってます。
勘の良い人は政府の誘導的な説明を見破ってました。火力はLNGや炭が主用されてきてますし、炭酸ガス問題は既に原発推進派によるデマという見方が支配的です。(ちなみに炭酸ガスは重いですよ)

忘れてはいけないのは「地震を制御できない」ことと、稼働させ続ける限り、煮ても焼いても食えないゴミが出ることと、
作業員の被曝が続くことと、地域社会の再起不能な差別、および周辺の差別意識の醸成が続くことでしょう。
のど元を過ぎれば熱さを忘れてしまう典型的な日本人から脱してこそではないかしら。

投稿: 横田 | 2012年7月16日 (月) 08時03分

こんな狭い日本に54基の原発(世界で第三位)。40年代からあっという間に増え続け今に至っているのですね。頻繁に起こる地震(多くの活断層)未だになんの見通しが経たない福島 (放射能をどうして除染できるのでしょう) 何十万年とどうしておいていいのかわからない原発ゴミこれを次世代に残していいのでしょうか。。。。

(山崎)おそらく一番の問題点は原発ゴミの処理だと思います。長い間日本では再処理をして使い続けるという方針でしたが、技術的に完成しておりません。おそらく地中深くに埋めることになりますがそれも完全に密封する技術が非常に厄介です。

投稿: みさき | 2012年7月17日 (火) 13時33分

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