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(24.7.4) NHK 「知られざる大英博物館」 第2集 古代ギリシャ 白い文明は嘘だった

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 やはりこの「知られざる大英博物館」のシリーズは出色のできばえだ。
第2集は「古代ギリシャ 白い文明の真実」だったが、古代ギリシャは白い文明とはまったく異なった色鮮やかな極彩色の文明であったことが大英博物館等の研究で明らかになってきている。

 私たちが見ているパルテノン宮殿ミロのビーナスも元は大理石の純白ではなく、色鮮やかに着色されていた。
ギリシャが白い文明だと言うのはまったくの間違いで単に時間がたって色が剥げ落ちただけだと言うのが真実のようだ。

 考古学の分野では最近科学的分析方法が格段に進歩しており、大英博物館では古代彫刻等に強いライトを当て、それを特殊なカメラで撮影すると青の色彩が浮き出てくる装置を開発していた。
トロイヘッドといわれている頭部の古代ギリシャ彫刻に光を当て装置で見ると、目の玉の部分が青く塗られていたことが分かった。
そしてアクロポリスの丘にあるエレクティオン神殿の天井も同じ方法で調べると青く塗られていた。

 さらに進んだ分析方法はドイツのリービッヒハウス美術館色彩研究で、あらかじめ色の波長のグラフを用意しておき、彫刻の表面のわずかな痕跡の顔料と波長と照合することで、色彩を再現していた。
この番組を直に見た人はいづれも度肝を抜いたのに違いない。
そこに現れた色彩は古代エジプトのピラミッドの内部を飾っていた絵画の色彩とそっくりだったからだ。

 ギリシャ文明は紀元前7世紀に突如花開きそれから約500年の間アテネを中心に繁栄したのだが、なぜこのBC7世紀にギリシャに神殿や彫刻群が現れたかの理由はギリシャ傭兵の存在による。
BC7世紀の文明地帯はエジプトメソポタミヤリビアヌビアであって、ギリシャは文明の端の野蛮人の住む地域だったと言う。
野蛮人の最大の特色は若者がやたらと戦闘的で強いと言うことで、これと同じ例はローマに対するガリアや、漢王朝に対する北方民族や、日本に対する北朝鮮と言ったようにいくらでも例がある。

 当時先進国エジプト軍隊が弱小化してまったく当てにできなかったが、一方ギリシャの若者は勇猛果敢な傭兵として知られており、エジプトのファラオは「青銅の男たちを集めよ」と命じていた。
青銅の男」とは青銅器の仮面の鎧で武装したギリシャ兵のことで、エジプトにはBC7世紀ナウクラティスという傭兵の町まで出現しており、当時のギリシャ傭兵の数は3万人を超したというから半端な数ではない。

 このギリシャ人傭兵は南方のヌビヤ、西方のリビア、東方のメソポタミアの戦闘に借り出されたが、そこでギリシャには存在しない見たこともない先進文明に兵士は触れた。
特にエジプトには3000年に及ぶ文明の蓄積があり、ピラミッドや大神殿や大彫刻に目を見張ったし、特にその鮮やかな色彩に心を奪われた。
何とか、おらがギリシャの古里にもエジプトのような神殿や大彫刻がほしいもんだ。それに思いっきり美しい色を塗たらどんなに美しいだろう・・・・

 傭兵の任期は数年だったようで任期を終えた若者はギリシャに帰ってからエジプトをまねた神殿や大彫刻を作り始めた。
またナウクラティスのようなエジプトのギリシャ人租界から多くの物資を輸入することができたのでギリシャのエジプト化は一気に進んだと言う。

 こうしてギリシャ文明はエジプト文明の賜物として発展したのだが、この事実を快く思わないヨーロッパ人が約250年前ごろから出てきた。
今から250年前と言うとヨーロッパで産業革命が起こり、西洋が東洋やオリエントやアフリカを圧倒し始めた頃だ。
なぜ産業革命がヨーロッパで始まったのか。なぜ西洋は東洋を圧倒したのか。これはもともとヨーロッパ人が世界で最も優れた人種だったからではなかろうか」と思うようになった。

 このヨーロッパ中心主義を強力に推し進めた一人がドイツの美術史家ヨハン・ヴィンケルマンで、彼はギリシャ文明がエジプト文明の模倣だと知っており、さらにギリシャ文明が極彩色溢れる文明だったことを知りながら、あえてそれを無視して言い放った。
「(ギリシャ芸術は)ギリシャ人しかなし得なかった偉業で、人類が到達した最高の芸術である

 この言葉にヨーロッパ人は舞い上がってしまった。ドイツでは19世紀からギムナジウムで古代ギリシャ語を学ぶことが義務付けられ(ヘルマン・ヘッセの車輪の下に詳しい)、あげてギリシャ熱に浮かされた。
俺たちはあの偉大なギリシャ人の子孫でエジプトやメソポタミアの野蛮人とは違

 さらにギリシャ彫刻の大理石が(色が落ちてしまったことから)純白だったので、それを見たヨーロッパ人は白こそが最も高貴で穢れない理想の色とみなすようになった。
こうしてあらゆるギリシャ彫刻やその模造品は白く磨き上げられ(色の痕跡が落とされ)、大英博物館においてさえギリシャ・ローマの集納品を真っ白にしてしまった。

注)この指示は大英博物館のスポンサーだったある貴族が職人に命じてひそかに(実際はスタッフは知っていたはずだ)実施したことになっている。

 こうして極彩色豊かなエジプト文明の模倣だったギリシャ文明は「白の文明」として、ヨーロッパ文明の基礎に据え置かれ、250年間にわたってヨーロッパ人の誇りの源になっていったという。

イヤー、実に興味深い話だ」私はうなってしまった。この大英博物館シリーズは見るたびに瞠目が開かれる実にすばらしい番組だ。

なお第一集のエジプト「民が支えた3000年の繁栄」は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-9da8.html

 

 
 

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