« (24.6.18) スペイン経済の危機ライン スペインはギリシャになるか? | トップページ | (24.6.20) 四季の道の草刈開始 ついに長年の懸案だった草刈を始めた »

(24.6.19) アラブの春が終わり、秋が来た。エジプトの静かな反革命

20120601_154140

 昨年の春から始まったアラブの春はここに来て晩秋を迎えたらしい。
チュニジア、エジプト、リビアの強権政治を次々に打倒しアラブ世界全体に春が訪れるかと思われたが、シリアのアサド政権が頑強に抵抗した結果ドミノ現象は終ったようだ。

 そればかりでなくエジプトにおいては反革命と思われるようなゆり戻しが起こっている。
エジプトでは大統領選挙のさなかに最高憲法裁判所人民議会の解散を命じた。
理由は「現行の選挙法は違憲状態にあって、昨年末に行われた当選者の3分の1は無効だ」という。

 こうなると議会の定数が不足するので議会は解散し再選挙を実施しなければならない。
議会第一党のムスリム同胞団が擁立した自由公正党が、「民意で選ばれた議会を解散するには国民投票で決めるべきだ」と抵抗したが、実権を握っている軍最高評議会は軍隊を国会に派遣して封鎖してしまった。
最高憲法裁判所の決定は守らなければならぬ

 日本だったら考えられないような暴挙だ。日本では最高裁判所が「衆議院の一票の格差は容認できない」との判断をいくら下しても、国会は知らぬ顔のはんべいを決め込んで定数是正に取り組もうとしていない。
裁判所の言うことを国会がへいこら聞く必要はない!!」と言う感じだ。

 エジプトでは大統領選挙のさなかで、ムスリム同胞団のモルシ氏と、軍最高評議会が押すシャフィーク氏の一騎打ちになっていたから、これはあきらかに軍最高評議会が裁判所を利用してムスリム同胞団つぶしに乗り出したことを意味する。
ムスリム同胞団の権力基盤の議会をつぶさないとあぶない。どうやら大統領選挙でシャフィークが負けそうだ。議会も大統領もムスリム同胞団に握られたら軍はおしまいだ
軍隊としたらその権力基盤を譲り渡す気持ちはさらさらないので、クーデタを起こした。
最高憲法裁判所を利用しての議会つぶしで静かなクーデタと言う。

 エジプトのアラブの春を主導した若者や知識人が押した民主主義の候補はすでに大統領の予備選で落選しているので、現在はムスリムと軍隊との戦いになっている。
軍最高評議会としたら、なんとしてもムスリムの力を押さえつけて軍主導のエジプトの再生を図ろうとしているので、これはかつてのムバラク政権となんら変わりがない。
ムスリムなどに政治をやらせるとエジプト最大の産業の観光業は壊滅するし、それにアメリカからの軍事援助も途絶えてしまう。ここはなんとしてもムスリムを追い落とそう

注)エジプトは他のアラブ諸国と異なり石油がない。このため観光業と先進諸国からの投資がないと経済を維持できない。一方でムスリム同胞団はイラン並みの宗教国家を目指しているので、軍最高評議会はこうした方針に危機感を持っている。

 こうなるともはや民主主義もへったくれもあったものではない。
議会は憲法草案を承認するために召集されていたのに、その議会がなくなって憲法が作れない。
ならば軍最高評議会が憲法草案を作りましょう」と言うことになって、当初ムスリム色の強いイラン並みの憲法ができそうだったが、かつてのムバラク政権に近い憲法になりそうだ。

 大統領選挙結果はまだ公表されていないが、ムスリム同胞団は53%程度の得票率で勝利したと宣言している。
軍最高評議会はこの選挙結果を認めるだろうが、憲法で大統領権限と議会の権限を大幅に縮小し軍隊を独立王国のようにするつもりだ。
戦前の日本陸軍の統帥権と同じだと言ったらイメージがわくだろう。

 一番ありそうな対応はムスリム同胞団のモルシ氏が当選したとしても、実質的な権力を軍最高評議会が握り続け、モルシ氏が抗議すれば議会と同様に最高憲法裁判所を動員して大統領選を無効とすることだろう。

 なんともすさまじい権力闘争だ。民主主義国家では選挙の結果がすべてだが、アラブでは相変わらず「権力者のものは権力者の物」と言う構造が成り立っているらしい。
こうしてアラブの春アラブの晩秋を迎えている。

なおアラブの春に関する記事は以下のカテゴリーに纏めて入っています。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45123956/index.html

 

 

 

|

« (24.6.18) スペイン経済の危機ライン スペインはギリシャになるか? | トップページ | (24.6.20) 四季の道の草刈開始 ついに長年の懸案だった草刈を始めた »

評論 中東・アフリカ アラブの春 エジプト」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (24.6.18) スペイン経済の危機ライン スペインはギリシャになるか? | トップページ | (24.6.20) 四季の道の草刈開始 ついに長年の懸案だった草刈を始めた »