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(24.6.12) NHK 激動 トヨタピラミッドの崩壊 2次下請の運命

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 やはりNHKのドキュメンタリー制作能力は世界でトップだと感心してしまった。
今回はトヨタ自動車2次サプライヤー野口製作所の苦悩と対応を放映していたが、ほぼ予想通りだったとはいえその現実の厳しさには驚嘆した。

 もともとトヨタは国内にトヨタピラミッドと呼ばれる下請工場群を配していて、トヨタを頂点に1次下請、2次下請、そして3次下請の4層構造になっている。
そのうち1次下請はトヨタと直接取引をしているデンソーアイシン精機等の約400社から構成されており、この下に2次下請会社の約3000社があり、さらにその下に3次下請の約20000社が存在している。
全体で約32万人の日本最大のピラミッドと言える。

 今回番組で取り上げられていた野口製作所はエンジンの部品を製作しているアイシン精機の下請けで2次サプライヤーにあたり、従業員数165人、年商約36億の会社である。
リーマン・ショック前までは毎年10%程度の成長をしていたが、リーマンショック、トヨタ・バッシング、そして東日本大震災の影響で1次サプライヤーからの注文は約半分になってしまい2011年は1億5千万円の赤字に陥っていた。
今後このような注文状態が続くと黒字経営は難しく、倒産の危機が迫っていた。

 そもそもトヨタからの注文の激減はトヨタ本体の経営危機に原因がある。かつては高品質と適切な価格で世界中のユーザの支持を受けていたが、高品質はアメリカのトヨタ・バッシングで傷がつき、リーズナブルな価格は円高でドイツのVWや韓国の現代やいまでは海外生産のシェアが高いニッサンの後塵を配している。
トヨタ自身の競争力分析においてもデザインや走りやすさはVWのほうが上で、現代にすら追い詰められているとの評価だ。

注)VWは中国のトップ企業で、現代はインドへの食い込みが功を奏している。トヨタはいづれの市場でも負けている。

 そのためトヨタ自身も生き残りをかけて新興国での生産拡大に乗り出し、タイ、インド、インドネシア、ブラジル等での生産を2012年310万台を目指すことにした。
一方でトヨタの社是である国内生産300万台死守も掲げて、国内では必死の技術革新リモートレーザー溶接ロボットの導入で溶接の生産性を10倍にあげる)に取り組んでいる。

 しかし私の判断では国内300万台死守は早晩取り下げなければならない目標になりそうだ。
最大の問題点は円高でトヨタは1円の円高で約300億円の営業利益が飛ぶと言われているが、日本では今後とも円高基調であり国内でどのような技術革新をしても一瞬のうちに利益が飛んでしまうからだ。

 トヨタはなおも国内に最新技術を持った工場を要しているが、この目的は日本での生産を維持するためと言うよりは、世界に張り巡らした生産網でVWや現代やニッサンに負けないための技術力を維持するための実験工場としての役割のようだ。

 だからトヨタ社長の300万台国内生産死守はリップサービスとしての役割しかなく、実際1次下請のデンソーアイシン精機はすでに現地進出が完了している。
そして今問題になっているのは野口製作所のような2次下請の現地化の問題で、国内にいてはジリ貧から倒産する以上どうしても国外に進出せざる得ないところに追い込まれている。

 野口製作所はインドネシアに進出を予定して、国内従業員の再教育を始めていた。インドネシア語を覚えて現地化が可能な若手を管理職にして、国内でしか働けないロートルを管理職から降格していた。
いやなら今すぐやめてもいいんだよ」と言う意味だ。

注)野口製作所では当面40名(約24%)のリストラを行おうとしている。

 しかし海外進出にも厳しさがある。
私は2次サプライヤーがインドネシアに出て行けば国内で受注していた関係がそのまま維持できると思っていたが、これはまったくの誤解だった。
2次サプライヤーがリーマン・ショック後約4年間の間国内に留まっていた間に、デンソー等の1次下請は現地の会社との取引を強化して、インドネシアの会社との間でピラミッドの再構築を果たしていた。
野口製作所さん、今出てきてもすぐには注文はありませんよ。現地の会社との競争です」といういたって割り切った対応しかしてくれない。

 野口製作所は(円高の恩恵でM&Aをしかけ、100人規模の工場の買収に乗り出したが、ここの従業員組合から、全員に退職金を払ってその上で全員を再雇用すること、および祝い金と賃上げを要求されていた。
たぶんにブラフの側面はあるが、それにしてもM&Aもなかなか大変だ。

 それでも野口製作所はこの会社を買収したが、その最大の理由は日本には希望がないがインドネシアではうまく経営すれば成功の見込みがあるからだ。
こうして2次下請の海外進出ラッシュが今始まっていたが、海外に行けるのはこのクラスまでで、国内に2万社ある3次下請けは将来的には廃業するか他に転業する以外に選択の余地はなさそうだった。

 こうして日本最大のトヨタピラミッドは今音を立てて国内では崩れ去ろうとしている。かつて日本を支えてきた物づくりの伝統は、モデル工場としてのハイテク工場でのみの存続になってしまいそうだ。
そして多くの工場で働いていた労働者は海外に出て活路を見出せる人以外、結果的には低所得層として日本国内に留まることになるのだろう。

注)先進国の中産階級が崩壊しているが今日本でもその現象が発生しつつある。

、トヨタ自動車についての記事は以下に纏めてあります。

http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43946940/index.html

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評論 日本の経済 トヨタ自動車」カテゴリの記事

コメント

1円の円高で300億円なんだか気の遠くなるようなお話ですね。為替の関係で企業も見通しなど経ちませんね。これからの日本はどういう方向に進めばいいのでしょうね。トヨタは巨大になりすぎたのでしょうか。。。。。

(山崎)日本が立ち行くためには新たな産業を興すよりほかに手は無いと思います。それは輸出産業ではなく国内産業で、世界最速の高齢化社会に適合した医療・介護産業だと思っています。それも日本人だけを相手にしていては駄目で世界に開かれた医療・介護になれば輸出産業の落ち込みを十分カバーできると思っています。

投稿: みさき | 2012年6月12日 (火) 08時24分

日本全体で介護関係の方が足りずに頼みの綱の外国人を養成しようとしてはいるのに言葉の壁試験制度で受かる人が限られているようですね。どうやってそういう仕事に従事する日本の若い方を育てることができるのでしょうか 逆三角形の日本人口も問題ですよね。

(山崎)日本人の場合は若者の進出が多くなると思います。最大の理由は今職場がないことで、コンビニ等のアルバイトを余儀なくされる人たちが、それよりも意義と収益のある職場として介護関係に流れるからです。
私は通常の頭脳と意志力を持った人たちには医療関連(医者を含む)の仕事に是非ついてもらいたいと思っています。日本を世界の病院にするのがこれからの日本の戦略なってほしいからです。

投稿: みさき | 2012年6月13日 (水) 19時23分

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