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(24.5.23) アメリカのシェールオイル革命 世界NO1であり続けるために

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 アメリカという国は自身が世界NO1でいつづけるためには、新産業の掘り起こしに実に熱心に取り組む国だと感心してしまった。
そのことをNHKのドキュメンタリーWAVEが「シェールオイルを掘り起こせ 新たな石油鉱床の衝撃」で放映していた。

 放送では北米のノースダコタ州にあるウイリストンという人口1万の町が石油ブームに沸いて人口が2万人になり、全米で失業率が1%と最も若者が生き生きとして働いている町になっていると伝えたものだ。
石油関連事業に従事している従業員の年収は平均で8万ドル640万円)、多い人は15万ドル1200万円)程度は稼ぎ、マイキャンプと言われる簡易宿舎で働くことだけを目的に寝起きをしていた。

 この町でシェールオイル革命が行われているからだが、このシェールオイル革命とはアメリカを世界最大の天然ガス産出国に変えたシェールガス革命のオイル版である。
現在石油産出国はロシア、サウジアラビアの順だが、それが近い将来アメリカが世界最大のオイル産出国になると言う。
アメリカは天然ガスと石油で世界をリードすると言う内容である。

注)なおシェールガス革命については以下の記事を参照。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/221022.html


 一般に石油の掘削というと原油がたまっている地下に垂直にパイプ通してくみ上げるのだが、シェールオイルはシェール層という固い岩盤の中の穴の中に点在して存在しているため、今までの掘削技術ではこれを取り出すことができなかった。

 しかしアメリカはテクノロジーの国だ。
二つのテクノロジーによってシェールオイルのくみ出しに成功した。
一つは岩盤を横にパイプを這わせる技術で、地下3000mのシェール層にたどり着くと、今度はそこから左右にそれぞれ3000m、合計6000mの横穴を掘っていた。
二つ目はフラッキングと言う技術で、この6000mのパイプに穴を開け、ここに一気に高圧の水を注入してシェール層を砕き、砕いた亀裂から石油をパイプを通して集める技術である。
なにか私のイメージはうるし職人が漆の木に傷を付けて漆の採集をしているがそれに近いイメージだ。

 最もこの新技術に問題がないわけでなく2つの問題が存在している。
一つは経済的な課題で、パイプを横に通したりフラッキングで大量の水と薬品を注入したりするため掘削に非常にコストがかかることだ。現在のコストがバーレル70ドル~80ドルと言うから相当高い。
石油価格が100ドル前後で推移しているから可能な掘削方法で、これがリーマンショックのすぐ後のようにバーレル30ドルになってしまうと採算割れをして誰も石油を掘らなくなってしまう。
「今がチャンスだ。この時期に掘らなければいつ掘るのだ」石油会社のオーナーがはっぱをかけていた。

注)サウジアラビアではバーレルあたりのコストは5ドルとほとんどタダのような値段で掘削している。

 もう一つは環境問題で、実はかなり課題が大きい。地下3000mとはいえそこの岩盤を粉々に砕いており、さらに内容が公表されていない化学薬品を大量に使用している。
砕かれた岩盤の割れ目を通って地下からメタンガスや使用された化学薬品が地表に染み出すようになっており、映像では地下水の蛇口にマッチを近づけると水が燃え出していた。
また牧場経営が成り立たなくなるような塩分の噴出しの場面が紹介されている。

 そのため現在わが世の春を謳歌しているオイル生産者の最大の危惧は連邦政府が環境問題を重視してこの石油掘削法にストップをかけるのではないかということだが、私はそうはならないと思う。
裁判で争えば牧場主は相応の弁済を得るだろうが、連邦政府は中立的な立場をとって民事訴訟には介入しないだろう

 なぜならアメリカが世界NO1であるためには、どうしてもシェールオイルとシェールガスは必要だし、何よりも雇用を確保できるし、税収さえも望める。
オバマ大統領にとって景気と雇用こそが再選の条件だ。
だからたとえ環境に悪影響があっても(環境保護団体は不満だろうが)、新産業の腰の骨を折るようなことはしないと私は思っている。

なお、アメリカ経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43809971/index.html

 
 

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