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(24.5.22) 日の丸金融機関の復活  ヨーロッパ金融機関の撤退の穴を狙え

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 ながいあいだ世界から国債購入機関と嘲笑され続けてきた日本の金融機関が、ここにきてようやく反転攻撃のチャンスをつかみつつある。
インドや東南アジアといったアジア市場から今急速にヨーロッパの金融機関が撤退しており金融の空白状態が発生しているからだ。

 ヨーロッパの金融機関クレディ・アグリコル、BNPバリバ)は現在のヨーロッパ危機を乗り切るため融資を回収し現金を積み増ししている。
なぜ現金の積み増しが必要かというと危機が発生すると銀行間の資金を融通しあう短期市場日本では短資市場という)が凍りついてしまい、自分の持っている現金がすべてと言う状況が発生するからだ。

注)短期市場に資金の出し手がいなくなり、資金不足の銀行は一瞬のうちに倒産する。

 この引き上げはなだれのような速さで進んでおり、新興国市場は突然資金不足に陥った。このチャンスに日本のビックスリー、三井住友、三菱東京UFJ、みずほ融資拡大に乗り出した。

 最近まで日本の金融機関にとっては70兆円規模の日銀の金融緩和策は迷惑以外の何者でもなかった。
資金を国内企業に融資せよと言うことだが、輸出産業は日本から逃亡し、国内産業も規模縮小に追いやられているので融資などだれも必要としない。
たまに融資案件があれば倒産間際の中小企業で、融資をすればするほど不良債権が積みあがる。

 仕方がないので国債の購入をしていたのだが、国債の利回りは1%前後でとても十分な収益を確保すると言うわけには行かない。
日本の金融機関は図体は大きいが収益力のまったくない政府の御用機関だ」世界中からそう見られていた。

 その日本の金融機関が三井住友を先頭にインドや東南アジアで主要なプレーヤーとして復活しつつある。
この状況をNHKのワールド・ウェーブ・トゥナイトで放送していたが、放送ではインドの大手石油会社の200億円の融資の幹事行三井住友が引き受けていた。
今まではヨーロッパの銀行が幹事行だったが、融資から撤退し残った多くが日本の金融機関になったからだ。

注)海外での大口融資はシンジケート団というのを組成して実施することが多い。これは1行で行うと問題が発生したときに対応が難しいためで、一方各国の金融機関の連合体の場合は各国から圧力をかけることができる。

 今後ともヨーロッパの金融機関はアジア市場から撤退し、一方アメリカの金融機関は国内のシェールガス油田の融資や、ヘッジファンド等への融資が主体だから、新興国のインフラ整備設備投資等のまじめな(収益率の低い)案件は敬遠する。

 日本の金融機関から見れば国債購入よりはるかにましだし、苦手なディリバティブと異なって得意の融資であるので今後ともシェア拡大が図れそうだ。
特に三井住友は積極的で海外人員を30%増員して1600人とし、ベテランの日本人行員と現地行員のペアで融資の掘り起こしに努めていた。

注)日本の銀行はディリバティブと言うような肉食系の取引は苦手で、一方融資のような草食系の取引を行うことを好む。

 振り返れば1980年代は世界の金融機関といえば日本の金融機関といわれていた時代があった。当時日本企業がアメリカのロックフェラーセンタービル等を買いあさっていたが、その資金を提供していたのが日本の金融機関だった。
あまりにすさまじい日本の金融機関を恐れおののき、その動きを止めるためのアメリカの対抗措置が当時導入されたBIS規制である。

 金融関係以外の人にとってはBIS規制などといっても何のことか分からないだろうが、海外で活動する金融機関は最低8%の自己資本をもたなければならないと言う国際的な基準である。
この基準を推進したのはアメリカとイギリスでそのターゲットは日本だった。

 当時日本の金融機関はどこもかしこもオーバーローンで、自己資本など1%程度がほとんどだった。
しかし当初BIS基準では(日本の同意を取り付けるために株式の含み益を自己資本に入れることができたので、株価が上昇していた間は悠々8%の自己資本比率をクリアできていた。
8%なんて何でもないじゃないか。わが社にはいくらでも含み益がある

しかし1990年前後のバブル崩壊でその手が使えなくなると融資は加速度的に縮小し(自己資本8%を維持するためには融資を引き上げる必要がある)日の丸金融機関は世界市場から撤退した。
アメリカの日本の金融機関つぶしは成功したのだ。


注)元々BIS基準は日本のバブルつぶしとセットで仕組まれたアメリカの戦略である。バブルに浮かれていた日本はBIS基準がトロイの木馬であることに気づかなかった。

 
私のようにバブル崩壊以前の日本金融機関の雄姿を覚えているものからすると、その後の金融機関の凋落は目を覆いたくなるような惨状だった。
しかしあれから20年、今度はヨーロッパの金融機関が世界市場から撤退を始めた。

 再びチャンスが到来したのだ。
日の丸金融機関は、ようやく得意の融資でアジアの新興国に対するインフラ関連融資や設備投資に進出できるようになった。

なお日本の金融機関に関する記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45467292/index.html

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評論 日本の経済 金融機関」カテゴリの記事

コメント

三井住友の銀行に用事がありました。
窓口の受付機械の横に、新入社員と思われる若者が立っていて、お客に待合番号の紙を渡していました。
暇だったので、新人研修なの?と聞いてみたら、判りますか?との答え。

この記事を読んでいたので、欧州の資金が回収されて今が日本の金融機関のチャンス。アジアの投資に積極的なんですってね、などと話しかけてみたところ、よくご存じですねと言われました。
気を良くして、日本の銀行マンとしてアジアでの仕事を開拓して、日本経済を牽引してくださいねっ、などと知ったかぶりをしました。
彼が責任ある仕事を任される頃、果たして日本はアジアはどうなっているでしょう。
若き銀行員に期待したいと思いました。

(山崎)そうですか。そんな会話をされたのですか。

投稿: バイオマスおやじ | 2012年5月23日 (水) 20時40分

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