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2012年5月

(24.5.31) さっぱり分からない日本円と中国人民元の直接取引  中国の狙いは何か?

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(ちはら台走友会のメンバーの作品、山崎編集

  どうもいまいちよく分からないと言うのが正直な感想だ。
この6月1日から始まる円と中国人民元との直接取引のことである。
上海東京に直接取引をする市場を開設することになるのだが、市場といっても東京証券取引所のような具体的な場所があるのではない。
システムが整備されてそこに日本や各国の金融機関が参加して円と人民元の取引を行う仕組みである。
個人でも株や投資信託や外為のネット取引を行っているが、そのイメージで銀行間で取引を行うと思えばいい。

 安住財務大臣が、「これによってコスト(手数料)の削減と日中間の貿易量の拡大、およびドルを介在することの為替リスクの軽減につながる」とコメントを述べていたが、確かに日本から見たらその通りだろうが中国の意図がいまいちよく分からない。

注)現在日中間の取引を行う場合は必ずドルを介して取引を行っている。たとえば商社が元での支払いが必要なときは円をドルに換え、このドルを香港市場で元に換えている。このとき交換手収料を商社は2回払うことになっている。

 ドルは世界通貨であるがこのところ変動幅が大きく、傾向的には減価円高、元高)しているので、一時的にせよドルを持っているとその間の減価が怖い。
それならば世界的に見て最強で安定している円と人民元を直接交換するほうが為替リスクを避けられると判断するのもその通りだろう。

 それでも私が不思議に思うのは人民元は中国人民銀行が基準値を示してそれを中心に一定幅でしか値動きができないひどい管理通貨だからだ。
そんな管理通貨を相手に自由な市場が形成されるのだろうか」という疑問だ。

 管理通貨自由市場というこれほど水と油の関係の組み合わせは珍しいので、本当に東京と上海で市場が機能するかと言う疑問である。
確かに貿易量を見れば日中間の貿易量は約30兆円規模で日本の最大の貿易相手国だし、中国から見れば日本はEU,アメリカに次ぐ3位の貿易相手国である。
相互に貿易に伴う通貨の需要はあるが、現在は実需(貿易)の時代ではなく仮儒投機)の時代で、そうした投機資金の受け皿になれるのは自由市場だけだ。。

 中国からすれば人民元の自由化はかつての円が1ドル360円から現在の80円になったように、急激な元高に見舞われて輸出の大失速と物価の急上昇につながることは間違いない。
そうならないように管理通貨制度を採用しているのに、なぜここで円と元の自由市場を作ろうとしているのだろうか。

 考えられる理由は自由市場の東京市場はダミーで上海市場を元と円との交換市場にしようとしているのではないかということだ。
ドルと元の交換市場を香港に作ったように、上海に管理された元・円市場を作ろうとする案である。

 東京市場には日本の金融機関が参加するとしても中国の銀行が参加しなければ取引は成立しない。もちろんご祝儀相場のような形で中国の銀行が参加するとしても、時間が経過するにしたがって元・円取引は上海市場が中心になりそうだ。
中国の金融機関が元の出し手にならない限り市場は成立しないのだから、中国とすればもっぱら上海市場だけに元を供給すればいい。
そうなると元・円交換市場は上海だけになる。

 結局中国人民銀行はドルを管理しているように円を管理したいのではなかろうか。
中国からすれば上海市場では、元の出し手は所詮中国の金融機関だから中国人民銀行の基準値を守るので、相変わらず人民元は管理できる(東京市場はそうはいかない)。

 こうしてドルの退潮と人民元の隆盛と言う世界的な流れの中で、元・円相場を中国が管理しようと言うのがこの円と元の直接取引の本意だろう。
私にはそう見えるのだ。

注)中国の意図は管理型外為市場を中国国内に作ってドルと円、そしてユーロを元と結びつけ、元本位制度を作ろうとしているのだと私は思っている。

なお中国経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html



別件)四季の道およびその周辺の公園のベンチのペンキ塗りは一部を除いて、終了しました。今は主として夏の道のケヤキの剪定を行っています。

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(24.5.30) クローズアップ現代 ビッグデータ革命

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 なるほどね、時代はここまで来たのかと感心してしまった。
クローズアップ現代によると、今世界中の企業がビッグデータの利用でしのぎを削っているという。
ビッグデータといってもなじみのない言葉だが、カーナビ携帯電話スマートフォン、それにスイカ等の集めると膨大なセンサーデータや、遺伝子データのように一人で30億個のようなデータを集めてそれを分析する技術である。

 今まではコンピュータの能力が十分でなかったことやセンサーの普及が十分でなかったために、データを集めることもそれを分析することも不可能だったが、ついにビッグデータの取り扱いに成功しだしたのだそうだ。

 番組では埼玉県庁が県内で起こる人身事故を減らすためにカーナビが発する急ブレーキ情報を集め、急ブレーキをかける場所に注意の白線を引いたり、樹木の伐採をすることで人身事故を2割削減していた。
担当者が「どこで急ブレーキをかけるのか今までは分からなかったが、ビッグデータを分析して対応策が取れるようになった」と述べていた。

 またコンビニのLAWSONでは従来のPOSデータだけでなく、ポイントカードの情報を組み合わせてどのような客層が何をリピーターとして購入するかを分析し商品配列を決めていた。
従来のPOSデータでは何が売れ筋かは分かっていたが誰が性別、年齢別、住所別)何を買うかまでは分からなかったから、これは販売戦略上大前進だ。
番組では60歳以上の人がコロッケを買うことが分かってそうした人向けの商品陳列を採用していた。

 また別の利用法として過去の犯罪情報を詳細にインプットすることで、どこでどの時間にどの程度の犯罪が発生するか予測できれば、警察官の割り振りに利用できるようになると解説者が説明していた。

 このように日本における利用法はいかにも日本的な改善レベルだが、アメリカの利用法はかなり戦略的だ。
アメリカの病院では2000人あまりの病歴の情報を集めて、うっ血性心不全の再入院の原因因子を調べていた。
これによると老人ホームにいる人が再入院しやすくけケヤが十分でないことが分かったため、その病院では老人ホームを定期的に回ってケアするチームを立ち上げていた。

 そしてこれが究極のビッグデータだが人間の遺伝子情報を一箇所に集めて世界中の研究者に開放するという試みがGoogleで行われていた。
人間の遺伝子の配列は約30億個の塩基の対からなっており、従来はこの解析に数年単位の時間を要したが、現在は1時間程度で可能になっているという。
Googleでは現在約2000人分(意外と少ないという感じだが)の遺伝子情報をコンピュータ上に展開しており、世界の研究者がこのビッグデータを基に病気の原因や薬の開発を行っているという。
Google得意のクラウドコンピューティングというわけだ。

 従来は病気と遺伝子の関係は主として癌遺伝子の研究に向けられていたが、今では糖尿病、老化、肥満、目鼻立ちにいたるあらゆる研究に利用されているのだそうだ。
こうして病気と遺伝子の関係、それに対する治療法および医薬品の開発をアメリカでは行っている。
ただしこうした遺伝子情報は究極の個人情報なので取り扱いが難しく、倫理規定等で縛る必要もあるとの説明だった。

 たしかに日本では住所や電話番号も個人情報といって騒いでいるくらいだから、遺伝子情報になれば喧々諤々の議論になりそうだ。
アメリカでも公聴会が開かれていたが、アメリカの基本スタンスは「新たなものには飛びつけ」だからジェスチャーとしての個人情報保護を訴えることはあっても、このGoogleの動きを止めることはしないだろう。

 かくして日本ではビッグデータを戦術的に利用し、アメリカでは戦略的に利用している。
私が生きている間にこのようなデータ処理の時代になるとは思いもしなかったが、ここでもアメリカの戦略性についてはいつものことながら舌を巻いてしまった。

なお、クローズアップ現代のシリーズは以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/nhk_2/index.html

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(24.5.29) プロジェクトWISDOM 高齢化する世界 破綻は避けられるか

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 今回(9日)のプロジェクトWISDOMのテーマが「高齢化する世界 破綻は避けられるか」だったので期待してみたが、残念ながら空振りに終った。
アメリカやフランスの専門家を招いてのディベートだったが、話が抽象的過ぎていたのと、同時通訳者がさらに抽象的に日本語に翻訳するので、何を言っているのかさっぱり理解できなかったからだ。

注)同時通訳はどうにかならないものだろうか。この番組は別にリアル性を求めているわけでないので、正しい日本語にして日本語字幕を付けてもらいたいものだ。
この番組をまじめに見るのは私のような高齢者ぐらいなのだから、高齢者に配慮した番組つくりを心がけてくれたらと思う。


 私が英語を直接聞いて理解できるレベルであったらまた違った印象を持ったかもしれないが、同時通訳者の日本語はどう贔屓目に見ても日本語とは言えず、聞いていてただただ疲れるだけだった。

 もともと超高齢化社会とは65歳以上の人口が20%を越す社会を言うが、こうした社会は日本だけしかない(2010年 23%)。
ヨーロッパが超高齢化社会になるのは今から20年後であり、アメリカの場合は40年後だ。

 したがって海外の専門家が超高齢化社会を研究の第一テーマにしていないことは明らかで、話す内容が一般的な人口動態であったりロボット技術の発展であったりしたのはいたし方ない。
この中で日本人の出演者として「デフレの正体」の著者、藻谷(もたに)浩介氏が出ていたが、さすがに藻谷氏の話は具体的で分かりやすかった。

 現在の日本がおかれている超高齢化時代はベビーブーマーが高齢者(65歳以上)に突入し、一方若者の多くが結婚もせず子供も生まないベビーバックの時代に突入していることから来ている。
このため今でも高い高齢化率がさらに上昇するが、高齢者の数そのものは2020年をピークに絶対数は停滞すると言う。
藻谷氏に言わせると「この2020年まで持ちこたえれば社会保障は何とかなる」と言うのだが、問題は後10年持ちこたえられるかと言うことだ。

 超高齢化問題は年金受給者が増加すると言う問題でもあるが、よりシビアな問題は医療費の増大である。
これは私の経験でもそうで、衣食住の費用はほぼ一定か場合によったら減少しているのに、医療費だけは傾向的に増大している。
最近腎臓を傷めたり、歯の治療をしたりしており私の場合銀行預金を下ろすのは医者に通うときだけになっている。

 藻谷氏によると日本の高齢化対策は成功と失敗の両面があり、成功は日本の高齢者がヨーロッパ人に比較すると非常に労働好きだということだという。
アンケート調査で健康であれば一生涯働きたいと答える日本人は約30%で、フランスの2%に比較すると雲泥の差だ。
働いている日本人は健康と言うデータもあり、高齢者に職場を与えるのが医療費の削減になると強調していた(長野県の事例)。

 もっとも老人がいつまでも退職しないと言うことは若者の職を奪っていることでもあり、昨今のように輸出産業が日本から逃げ出している状況からするとフルタイムでがんばるのは問題がある。
パートタイムで適当に働き年金込みで生活するのがちょうど良いレベルだろう。

 また藻谷氏得意のデフレ論議で行くと、超高齢化社会の最大の問題は高齢者は消費を絞ってしまうので常にデフレ圧力がかかると言う問題だと言う。
国内市場が狭まるので企業は輸出に特化せざるを得ないが、一方輸出環境は円高で企業の収益が圧迫される。
老人相手の国内市場が拡大すれば問題はないのだが、せいぜいDOCOMOが老人向けのスマートファンを開発したり、飲み込みやすいレトルト製品を食品会社が開発したり、老人向けアパレル商品を開発したり、また時代劇専門チャネルが盛況だとのことだが、これらはしないよりましと言うレベルで、どう勘定しても若者の購買力にはかなわない。

 したがって最後は若い外国人の移民を受け入れることが最後の切り札になるが、日本はアメリカと異なり移民受け入れに消極的だ。
政府間の取り決めでインドネシアやフィリピンから受け入れた看護師や介護士でさえ、厳しい試験を課して追い返そうとしているし、日本の国籍取得には厳しい条件がつく。
藻谷氏は「どこの国が移民を提供するか。中国やタイは自国で働くほうが裕福なので移民の出し手はいないのではないか」と言っていたが、アメリカの例を見ても分かるように貧しくてもアクティブな若者は世界中にいくらでもいる。
ミャンマーバングラディシュといった国からの移民は期待できるだろう。

 ここから先は私の提案だが、超高齢者にとって唯一の消費需要は医療・介護しかなく、その他の分野はとても成長産業というわけには行かない。
日本だけが超高齢化社会に突入しているのだから、この分野への個人や企業の参入が最も成功する可能性が高い。
人材(医者、看護師、介護士)等については日本の国籍取得を簡単に行えるようにし(日本語ができなくても良い)、日本人として厚遇する必要がある。

 一方で日本人の職場が狭められるという心配には日本の医療機関を世界に解放して、日本を世界の老人医療の先進国にするのが需要拡大につながる。世界には金持ちはいくらでもいるし、そうした人々に最新医療を提供できれば医療・介護産業こそが日本の成長産業になるのはまちがいない。

 超高齢化社会が日本だけで進んでいるのはある意味でチャンスなのだ。
日本人だけが自分の頭で考え実践する機会を与えられている。
このチャンスを利用しなければ利用できるチャンスなど何も存在しない。

注)私がプロジェクトWISDOMに不満なのは、こうした日本独特の問題を日本研究者でもない外国人にディベートさせようとする無理があるからだ。
自分たちで考えなければならないことを外国人に考えさせても何の意味もないというのが番組を見た結論だ。

なお医療産業を日本の成長産業にしようとの指摘は以下の記事を参照。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/2423-da97.html

 

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(24.5.28) 日本原子力行政の終焉  再処理の目はなくなった

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 毎日新聞の5月24日のスクープで、内閣府の原子力委員会が実際は東電等の事業者の言いなりになっており、これを経済産業省と文部科学省が支えている構図が明らかになった。

 原子力委員会は本年夏までに新原子力大綱前回は05年に策定されている)を纏めるべく小委員会で検討をしていたが、近藤原子力委員長や小委員会の座長である鈴木委員秘密会を開催し、そこで小委員会の結論を誘導していたことが判明したからだ。

注)小委員会は7名の委員からなっていて、この委員には事業者や官庁出身者はおらず中立的な委員会である。そこでの結論を出す前に小委員会原案を東電等の事業関係者や経済産業省の担当者に回覧して修正意見を求めたもの。
この会議に近藤原子力委員長と小委員会の座長鈴木氏が同席していた


 小委員会で結論を出す議題は核燃料サイクルをめぐる総合評価案だが、以下の3案の評価を行うことになっていた。
この評価を事業者と官庁にとって都合良いように修正を加えるのが秘密会の目的だが、原案では全量直接処理が最も安価だとの結論になっており、再処理推進派にとって都合の悪いものだった。

注)秘密会は毎週開催されおり、今まではこうした秘密会が表に出ることはなかったが、毎日新聞のスクープで露見した。
なお3案とは以下の通り。

① 全量再処理案
② 全量直接処理案

③ 直接処理・再処理併用案


まずいじゃないか、これがそのまま承認されると再処理の目がなくなる。なんとかしないと今までの努力が水泡に帰してしまう。
全量再処理は無理でも直接処理・再処理併用案を新原子力大綱で政府に承認させよう


 現在青森県の六ヶ所村にある国策会社日本原燃は1993年に約2兆円をかけて再処理施設を建設し現在試運転中である。
再処理事業はしばしばトラブルが発生し必ずしも順調とはいえず、さらに今回の新原子力大綱で再処理が停止されれば、日本原燃は単なる使用済み核燃料の廃棄場所になってしまう。

 このため日本原燃電力各社が出資している)の存続をかけて、全量直接処理案にけちをつけ、直接処理・再処理案を政府が採用するように秘密会で誘導した。

 総合評価の書き換えは以下のように行われた。
① (原案) 全量直接処理は総費用において優位

(修正案)ウラン価格が現価格を持続する前提や現状の技術的知見の下では、全量直接処理が他の案に比べ優位になる可能性が高い。

② (存在せず)

(修正案)
直接処理・再処理併用案は全量再処理より経済的に多少有利

 
こうして当初は全量直接処理が経済的に最も優位だとの小委員会の結論が、直接処理・再処理併用案が多少優位に書き換えられた
だが実際はこの再処理施設は今後どの程度費用が増加するか分からない代物になっている。
当初の予算は7600億円だったが、現在すでに2兆円を越えており、今後4兆円規模まで膨らむ可能性がある。

 したがってどんなにがんばっても直接処理より費用がかかることは確実なのだが、それでは再処理を推進してきた原子力行政全体の否定になってしまう。
電力各社と経済産業省と日本原燃がタッグを組んで、小委員会の原案を修正し、国の新原子力大綱をゆがめることに成功した。

 だがしかしこのからくりがここまで毎日新聞によって暴かれてしまえば、今回の小委員会の原案を政府がそのまま採用するのは困難だ。
再度見直しがされることになったが、20世紀の花形技術だった原子力時代が終ろうとしている今、再処理を継続する目がなくなったと言うのが実態だろう。

なお原子力行政は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat46318075/index.html

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(24.5.27) 日本はアメリカの植民地か? 三菱東京UFJに対するニューヨーク地裁の資産凍結命令

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 いくらなんでもひどすぎる話だった。これでは日本はアメリカの植民地となんら変わりがない。
三菱東京UFJ以下三菱)に存在するイラン政府とイラン中央銀行の口座(アメリカと日本にある口座)を約2000億円を上限に資産凍結するとニューヨーク地裁が三菱に言い渡した件である。

 この措置は1983年に発生したベイルートでの米海兵隊司令部爆破事件の遺族がイラン政府を相手取って起こした民事訴訟の賠償金支払命令に基づくものである。
この判決に対しイラン政府がびた一文支払わないために三菱にあるイラン政府とイラン中央銀行の資金の凍結を命じた。

 
 三菱連邦地裁に異義を申し立てていたが、さすがに日本国内の口座まで凍結するのは日本の主権の侵害になるため、連邦地裁はニューヨーク地裁の凍結命令を無効とした。

注)もしこんな主権侵害が許されるとするといつ何時日本人は日本国内でFBIに逮捕拘束されるか分からないし、理由なく日本国内の口座を閉鎖されるかもしれない。

 今回のニューヨーク地裁の口座凍結命令は7月1日から発効される核疑惑に対するアメリカ政府のイラン制裁措置とは無関係だが、必ずしも無関係だとは言い切れない面がある。
なんとも不思議なのはイランの石油を輸入している先は中国、インド、韓国といくらでもありイラン政府や中央銀行の口座はニューヨークにいくらでもあるのに、なぜ日本の三菱かと言う問題だ。

 これはどう見ても日本が一番組みやすく、中国やインドが相手だと国際問題になってうるさいのですぐに言うことを聞く日本をターゲットにしたとしか考えられない。
日本の政治力は民主党政権になってから低下の一途をたどり、鳩山元首相はアメリカとの関係をつぶすだけつぶした史上最低の総理だったし、菅元総理は東日本大震災の処理だけで手一杯で、中国とロシアと韓国から領土問題でいいように揺さぶられてきた。
野田内閣になってやや持ち直しては来ているが、それにしても日本の政治力は先進国中最低の部類に入る。
ありていに言ってしまえば日本は世界からなめられぱなしなのだ。
脅せば言うことを聞くのが日本よ、政府はおたおたして三菱を助けることはできまい」そうした読みだ。

 三菱としてはいい迷惑だが日本政府のバックアップがなければアメリカとは自身で戦うしか手はない。
さすがに枝野経済産業相が「米国の裁判所の決定の効力が、米国の主権の及ばない地域に結果的に及ぶのはおかしい」とコメントし、ようやく日本政府らしい対応をしたが、だからといって三菱の苦境が和らいだわけでない。
三菱は連邦地裁に異議申し立てをすることで自らの苦境を救った。

 現在イランからの石油輸入量は日本全体の8%程度、年間1兆円規模でその決済はほとんどが三菱で行っている。したがってここの口座が凍結されてしまうとイランからの原油輸入は実質的に不可能になる。
通常はこうした状況になるとパニックになって原油価格が上昇するものだが、幸いに原油価格は低下傾向にある。
ヨーロッパ経済の失速が明確なので石油需要は低下すると見られているからだ。

 日本の場合は原発が一基も稼動していないので石油や液化天然ガスに対する需要が拡大すると見られてはいるが、こちらも幸いに経済が失速しているので実際の需要はそれほど大きくない。
しかも工場レベルではコジェネレーションによる熱エネルギーの再利用が進みつつあるので、実際はエネルギーはこの夏もあまる可能性がある。

 連邦地裁の判決でニューヨーク地裁の凍結命令は無効になったが、今後もこうした日本を植民地としか見ないアメリカの横暴は続くと思われる。
何しろ日本の政治力はほとんど無に近く、野田内閣の閣僚で政治家といえる人は枝野経済産業相しかいない。
政治が立ち直らないと日本は世界の財布として良いように扱われるだけなので、なんとも残念なことだがまだ苦難の道は続きそうだ。

なお、日本の金融機関については以下に記事を纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45467292/index.html

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(24.5.26) 日本に残された無尽蔵の資源 排熱を利用しろ

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  バブル崩壊から20年、日本はただただ衰退しているだけだったがここに来てようやく底を打ったのではないかとの兆しが見えるようになった。
日の丸金融機関がインドや東南アジアで復活したり、中国の格安航空会社が日本をターゲットに路線を拡大したりしているが、今度は日本は世界最大規模の資源大国なのだと言う。

 私は最初冗談かと思ったがNHKのクローズアップ現代で、排熱こそが眠れる資源なのだと強調していた。
たとえば発電所で使用する重油や天然ガスや石炭のエネルギーのうち、電力として取り出しているのはほぼ40%で、残り60%は排熱として空中に排出しているのだと言う。

 この60%の排熱をエネルギーとして利用できれば、海外からの資源の輸入は現在の40%で済み、残りは国内で生産できる排熱エネルギーになるのだと言う。
何か夢のような話だがこれを可能にする技術がコジェネレーションという技術で、排熱を利用したボイラーだと思えばいい。
そしていまや工場現場ではこの排熱の利用が急速に進んでいるのだと言う。

注)あるコジェネレーションの会社の売上高は昨年比15倍の驚異的売り上げになっていた。

 調べてみると熱エネルギーはいたるところに存在し、最近開業したスカイツリー地中熱を利用した冷暖房設備を備えていた。
地中熱とは始めて聞く言葉だが、温泉のような地下熱と異なり地下100m程度にある熱で、地下水を循環する設備で汲み上げれば年間を通して15度程度の水温のため、夏は涼しく冬は暖かい。

 それ以外にも下水熱海水熱を利用した冷暖房設備も開発されており、今や日本は排熱利用の先進国に名乗り出ようとしているのだと言う。
そうか、捨てられている熱を使えば良いのか」なんとなく納得した。

 今までの日本の省エネ技術はもっぱら電力の消費量を少なくした設備や電気製品の開発だったが、こうした省エネ技術は限界に達していて、今後は不要に捨てられている60%相当の排熱を再利用するのが新たな省エネ技術なのだそうだ。

 かつてといっても1980年代の後半までは日本の省エネ技術は世界をリードしていたが、その後資源価格が低下したためアメリカの自動車産業と同じで資源がぶ飲み体質になってしまった。
現在の省エネ大国はドイツでドイツは再生可能エネルギー排熱エネルギーを電力会社に高価に購入させることを義務付けたため、ドイツの生産者は高価になったエネルギーを効率よく使用するために省エネ技術を身につけたのだという。

注)番組ではドイツのGDPとエネルギー消費が逆相関になっているグラフが紹介されていた。GDPは上昇しエネルギー消費量は低下していると言う説明である。

 現在日本は原発がすべて停止し、この夏は電力不足が想定されているが、本来は捨てている60%の排熱の利用が進めば電力問題は一気に解決すると言う。
21世紀はエネルギーを最小にして生産を最大にあげるドイツの技術の時代で、一方アメリカや日本のようにエネルギーはいくらでも消費して生産をあげる20世紀の技術は終末を迎えると解説者が強調していた。

 原発の再開は政府がどんなに努力しても周辺住民直接の利益を得ている人を除く)の理解を得ることは不可能で原発の時代は終ったが、一方火力発電所を拡大して二酸化炭素を空気中にばら撒くのも能のない話だ。
それよりも捨てている60%の熱エネルギーを再利用して、ドイツ並みに省エネ大国になるのが望ましい方向だろう。

 技術さえあれば資源は自分たちのところにあるのだから、いい時代になりつつある。エネルギー消費でも21世紀型社会を入ろうとしており、原発や火力発電所の時代が今終ろうとしている。

なお、経済成長に関する記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43696146/index.html

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(24.5.25) 日本の地方空港復活の条件 中国のLCCを取り込め

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 日本の地方空港の状況は御世辞にも良いとはいえないが、それでもかすかに光が差し込み始めた。
中国の格安航空会社が日本路線の拡張に本腰を入れ始めたからだ。
上海に本社を置く格安航空会社LCC)の春秋航空が日本の茨城、高松、佐賀との間に定期便を就航させた(佐賀はこれから)。

 地方空港といえば乗客予想を目いっぱいでっち上げて、それにあわせた設備投資を行ってきたが、その実乗客数は半分以下なのが普通でJALANAからはそっぽを向かれていたのが実態だ。
それでも韓国のアシアナ航空が日本の航空行政が世界最悪だった間隙をついて(国内は羽田、海外は成田と言う乗客無視の最悪のサービスだった)、日本の23地方空港に乗り入れてくれたから、地方の人も韓国経由で世界に旅立つことができていた。

注)世界の航空業界は飛行場のハブ化を熱心に進めたが、先進国で日本だけが国内線と国際線を分離して、鎖国体制を維持した。まさに江戸幕府の鎖国と同じ愚挙だった。

 しかしアシアナ航空の日本地方空港のハブ化路線もこのアタリが限界で、最近完成した茨城空港静岡空港はこのままでは飛行機がまったく飛ばないピーターラビットの遊び場になってしまうのではないかと恐れていたものだ。

 しかし捨てる神あれば拾う神ありだ。
茨城空港などではせっかく就航したアシアナ航空が福島原発の影響を理由に運休してしまうと、中国の春秋航空がかわって上海・茨城間に路線を開設してくれた。
春秋航空としたら本来なら羽田成田に乗り入れしたいのだろうが、ここは飛行機が目いっぱい飛んでいて参入余力がほとんどないのと、飛行場の着陸料や施設利用料がやたらと高い。
大都市に近くて安く使えてがら空きの飛行場はないだろうか・・・
LCC好みの飛行場として茨城、高松、佐賀に白羽の矢があたたった。

 11年度の中国からの観光客は104万人でありがたいことに中国の経済発展に伴ってその数は増加しそうだ。
この春秋航空を利用した日本5泊6日の旅の料金は一人55、000円だそうだから、中国の中間層にとっても高い値段ではないのだろう。

注)11年度は原発事故の影響で2割程度の外国人観光客減少に見舞われている。ようやく12年度になって観光客が戻ってきて10年度並みになってきた。

 しばらく前までは中国人といえば不法入国するために日本に来るものと思われていたが、時代は変ってしまった。
日本にはまったく職場がなくなっているので、来るのは中間層から上の富裕層になり、日本にとっては願ってもない観光客になりつつある。
中国人はまだ外国旅行も珍しいので、外国に来れば目いっぱいお土産を購入してくれるし、電気製品には目がない。
この円高の中でも日本に来てくれる稀有な存在といっていい。

 そして何よりほっと胸を下ろしているのは地方空港の管理者多くは地方自治体が管理している)で、本当に飛行機が飛ばなかったら社会見学に訪れた子供たちに先生が説明の仕様がなかったからだ。

先生、なぜこの飛行場には飛行機がないの。飛行機が飛ばなくても飛行場っていうの
君たち、ここはね、飛行機は飛ばないけど落下傘で県の偉い人たちが降りてくる演習場なんだ
じゃ、習志野の自衛隊みたいなの
よくわかったね、飛行場って言っても色々あって、えらいおじさんが甘い汁を吸う特別な広場なのさ
なぜ甘い汁なの、苦い汁はないの
苦い汁を飲むのは国民と言う不思議な生き物だけさ
なんてことになるところだった。

なお航空行政については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48077031/index.html
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48077031/index.html

 

 

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(24.5.24) 民生資金は日本が出すからアフガン戦争は止めよう  オバマ大統領の戦略

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 01年のアメリカ・ニューヨークやワシントンを襲った同時多発テロから10年、首謀者のオサマ・ビンラディンを殺害してから1年、すっかり世界はテロとの戦いに疲れてしまった。
もう、やだ、俺は降りる」フランスのオランド大統領はオバマ大統領にそう宣言した。この21日にシカゴで開催されたNATOサミットでの話である。

 オバマ大統領としては14年末に一斉にアフガンから引き上げる計画であるので、このフランスの抜け駆けは忌々しいがさりとてフランスを説得するすべはない。
現在約13万人国際治安支援部隊ISAF)がアフガンに派遣されているが、主体はアメリカとイギリスで、フランスは3300名のお付き合い部隊を派遣しているだけだ。それでもフランス兵の戦死は過去10年で83人に登る。

 アメリカの撤退計画の柱は治安維持をISAFからアフガン政府の軍隊にスムーズに委譲し、国内の安全を確認したあと撤退すると言うものだが、アフガン兵士の訓練は遅々として進んでいない。
ワールド・ウェーブ・トゥナイトでその模様を放送していたのを見たが、新兵がテロ作戦の訓練を受けていたもののドアーを足で蹴破ることもまともにできず、銃のチェックもおたおたしていた。
これじゃ、子供の軍隊とさして変わらんな」正直な私の印象だ。

注)アメリカは01年から10年まででも7000億ドル(56兆円)の資金をアフガン戦争に投入した。これ以上の戦費はアメリカ経済の浮揚の足かせになるだけだから、アフガン軍が弱体でも2年後には撤退するつもりだ。

 日本はここに軍隊は派遣していないが、いっぽう資金援助はたっぷりさせられている。
09年以降の5年間で4000億円の資金援助だから毎年800億円規模だ。
そして現在問題になっているのは14年以降のアフガン政府への支援資金をどのようにまかなうかと言うことだ。
誰も出したくないのだが、ターゲットは日本になっている。

 アフガン政府の軍隊と治安警察の規模を25万人と想定してその資金を各国が支援することになっており、その維持費は年3200億円だと言う。
この金額のほとんどを日本に負担させようと言うのがオバマ戦略で、この7月に日本でアフガニスタン支援会議が開催される。
これからは民政移管が主体だから、日本の出番じゃないですか。ぜひ維持費は日本が見てください」なんて感じだ。

 だが14年以降の軍隊の維持管理費についてはかなり問題がある。
最も重要な課題はアフガン政府軍が弱体でとてもタリバンにはかないそうもないことで、カルザイ大統領からやんやんの追加の督促が来そうなことだ。
資金がたりない、兵隊も弾薬もたりない。もっと金をよこせ。俺が負けても良いのか・・・・テロがはびこるぞ

 しかし問題はいくら金をつぎ込んでも資金はカルザイ政権の高官や部族長に砂漠の砂に水をまくように消えてしまうから、実際は資金援助をしても無駄なのだ。
なにしろカルザイ政権なんていっても日本のような官僚組織があるわけでなく、部族長とその部下という関係だから、資金を管理するのは部族長の一存になっている。
これは俺の金だ、お前らにやるぞ!!!」

 だから日本が14年以降維持費を支払わせ続けられるとなると、ほとんどどぶに金を捨てるのに等しい。
もう無駄だから日本は資金援助を停止する
時の総理がこうオバマ大統領に言えれば立派だが、それより援助の増額に応じそうなのが日本だ。

 なんとも心配なアフガニスタン支援会議がこの7月日本で開催されようとしている。

なお、アフガニスタンに関する過去の記事(貧者の兵器とロボット兵器)は以下のとおり。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/22910-nhk.html

 

 
 

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(24.5.23) アメリカのシェールオイル革命 世界NO1であり続けるために

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 アメリカという国は自身が世界NO1でいつづけるためには、新産業の掘り起こしに実に熱心に取り組む国だと感心してしまった。
そのことをNHKのドキュメンタリーWAVEが「シェールオイルを掘り起こせ 新たな石油鉱床の衝撃」で放映していた。

 放送では北米のノースダコタ州にあるウイリストンという人口1万の町が石油ブームに沸いて人口が2万人になり、全米で失業率が1%と最も若者が生き生きとして働いている町になっていると伝えたものだ。
石油関連事業に従事している従業員の年収は平均で8万ドル640万円)、多い人は15万ドル1200万円)程度は稼ぎ、マイキャンプと言われる簡易宿舎で働くことだけを目的に寝起きをしていた。

 この町でシェールオイル革命が行われているからだが、このシェールオイル革命とはアメリカを世界最大の天然ガス産出国に変えたシェールガス革命のオイル版である。
現在石油産出国はロシア、サウジアラビアの順だが、それが近い将来アメリカが世界最大のオイル産出国になると言う。
アメリカは天然ガスと石油で世界をリードすると言う内容である。

注)なおシェールガス革命については以下の記事を参照。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/221022.html


 一般に石油の掘削というと原油がたまっている地下に垂直にパイプ通してくみ上げるのだが、シェールオイルはシェール層という固い岩盤の中の穴の中に点在して存在しているため、今までの掘削技術ではこれを取り出すことができなかった。

 しかしアメリカはテクノロジーの国だ。
二つのテクノロジーによってシェールオイルのくみ出しに成功した。
一つは岩盤を横にパイプを這わせる技術で、地下3000mのシェール層にたどり着くと、今度はそこから左右にそれぞれ3000m、合計6000mの横穴を掘っていた。
二つ目はフラッキングと言う技術で、この6000mのパイプに穴を開け、ここに一気に高圧の水を注入してシェール層を砕き、砕いた亀裂から石油をパイプを通して集める技術である。
なにか私のイメージはうるし職人が漆の木に傷を付けて漆の採集をしているがそれに近いイメージだ。

 最もこの新技術に問題がないわけでなく2つの問題が存在している。
一つは経済的な課題で、パイプを横に通したりフラッキングで大量の水と薬品を注入したりするため掘削に非常にコストがかかることだ。現在のコストがバーレル70ドル~80ドルと言うから相当高い。
石油価格が100ドル前後で推移しているから可能な掘削方法で、これがリーマンショックのすぐ後のようにバーレル30ドルになってしまうと採算割れをして誰も石油を掘らなくなってしまう。
「今がチャンスだ。この時期に掘らなければいつ掘るのだ」石油会社のオーナーがはっぱをかけていた。

注)サウジアラビアではバーレルあたりのコストは5ドルとほとんどタダのような値段で掘削している。

 もう一つは環境問題で、実はかなり課題が大きい。地下3000mとはいえそこの岩盤を粉々に砕いており、さらに内容が公表されていない化学薬品を大量に使用している。
砕かれた岩盤の割れ目を通って地下からメタンガスや使用された化学薬品が地表に染み出すようになっており、映像では地下水の蛇口にマッチを近づけると水が燃え出していた。
また牧場経営が成り立たなくなるような塩分の噴出しの場面が紹介されている。

 そのため現在わが世の春を謳歌しているオイル生産者の最大の危惧は連邦政府が環境問題を重視してこの石油掘削法にストップをかけるのではないかということだが、私はそうはならないと思う。
裁判で争えば牧場主は相応の弁済を得るだろうが、連邦政府は中立的な立場をとって民事訴訟には介入しないだろう

 なぜならアメリカが世界NO1であるためには、どうしてもシェールオイルとシェールガスは必要だし、何よりも雇用を確保できるし、税収さえも望める。
オバマ大統領にとって景気と雇用こそが再選の条件だ。
だからたとえ環境に悪影響があっても(環境保護団体は不満だろうが)、新産業の腰の骨を折るようなことはしないと私は思っている。

なお、アメリカ経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43809971/index.html

 
 

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(24.5.22) 日の丸金融機関の復活  ヨーロッパ金融機関の撤退の穴を狙え

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 ながいあいだ世界から国債購入機関と嘲笑され続けてきた日本の金融機関が、ここにきてようやく反転攻撃のチャンスをつかみつつある。
インドや東南アジアといったアジア市場から今急速にヨーロッパの金融機関が撤退しており金融の空白状態が発生しているからだ。

 ヨーロッパの金融機関クレディ・アグリコル、BNPバリバ)は現在のヨーロッパ危機を乗り切るため融資を回収し現金を積み増ししている。
なぜ現金の積み増しが必要かというと危機が発生すると銀行間の資金を融通しあう短期市場日本では短資市場という)が凍りついてしまい、自分の持っている現金がすべてと言う状況が発生するからだ。

注)短期市場に資金の出し手がいなくなり、資金不足の銀行は一瞬のうちに倒産する。

 この引き上げはなだれのような速さで進んでおり、新興国市場は突然資金不足に陥った。このチャンスに日本のビックスリー、三井住友、三菱東京UFJ、みずほ融資拡大に乗り出した。

 最近まで日本の金融機関にとっては70兆円規模の日銀の金融緩和策は迷惑以外の何者でもなかった。
資金を国内企業に融資せよと言うことだが、輸出産業は日本から逃亡し、国内産業も規模縮小に追いやられているので融資などだれも必要としない。
たまに融資案件があれば倒産間際の中小企業で、融資をすればするほど不良債権が積みあがる。

 仕方がないので国債の購入をしていたのだが、国債の利回りは1%前後でとても十分な収益を確保すると言うわけには行かない。
日本の金融機関は図体は大きいが収益力のまったくない政府の御用機関だ」世界中からそう見られていた。

 その日本の金融機関が三井住友を先頭にインドや東南アジアで主要なプレーヤーとして復活しつつある。
この状況をNHKのワールド・ウェーブ・トゥナイトで放送していたが、放送ではインドの大手石油会社の200億円の融資の幹事行三井住友が引き受けていた。
今まではヨーロッパの銀行が幹事行だったが、融資から撤退し残った多くが日本の金融機関になったからだ。

注)海外での大口融資はシンジケート団というのを組成して実施することが多い。これは1行で行うと問題が発生したときに対応が難しいためで、一方各国の金融機関の連合体の場合は各国から圧力をかけることができる。

 今後ともヨーロッパの金融機関はアジア市場から撤退し、一方アメリカの金融機関は国内のシェールガス油田の融資や、ヘッジファンド等への融資が主体だから、新興国のインフラ整備設備投資等のまじめな(収益率の低い)案件は敬遠する。

 日本の金融機関から見れば国債購入よりはるかにましだし、苦手なディリバティブと異なって得意の融資であるので今後ともシェア拡大が図れそうだ。
特に三井住友は積極的で海外人員を30%増員して1600人とし、ベテランの日本人行員と現地行員のペアで融資の掘り起こしに努めていた。

注)日本の銀行はディリバティブと言うような肉食系の取引は苦手で、一方融資のような草食系の取引を行うことを好む。

 振り返れば1980年代は世界の金融機関といえば日本の金融機関といわれていた時代があった。当時日本企業がアメリカのロックフェラーセンタービル等を買いあさっていたが、その資金を提供していたのが日本の金融機関だった。
あまりにすさまじい日本の金融機関を恐れおののき、その動きを止めるためのアメリカの対抗措置が当時導入されたBIS規制である。

 金融関係以外の人にとってはBIS規制などといっても何のことか分からないだろうが、海外で活動する金融機関は最低8%の自己資本をもたなければならないと言う国際的な基準である。
この基準を推進したのはアメリカとイギリスでそのターゲットは日本だった。

 当時日本の金融機関はどこもかしこもオーバーローンで、自己資本など1%程度がほとんどだった。
しかし当初BIS基準では(日本の同意を取り付けるために株式の含み益を自己資本に入れることができたので、株価が上昇していた間は悠々8%の自己資本比率をクリアできていた。
8%なんて何でもないじゃないか。わが社にはいくらでも含み益がある

しかし1990年前後のバブル崩壊でその手が使えなくなると融資は加速度的に縮小し(自己資本8%を維持するためには融資を引き上げる必要がある)日の丸金融機関は世界市場から撤退した。
アメリカの日本の金融機関つぶしは成功したのだ。


注)元々BIS基準は日本のバブルつぶしとセットで仕組まれたアメリカの戦略である。バブルに浮かれていた日本はBIS基準がトロイの木馬であることに気づかなかった。

 
私のようにバブル崩壊以前の日本金融機関の雄姿を覚えているものからすると、その後の金融機関の凋落は目を覆いたくなるような惨状だった。
しかしあれから20年、今度はヨーロッパの金融機関が世界市場から撤退を始めた。

 再びチャンスが到来したのだ。
日の丸金融機関は、ようやく得意の融資でアジアの新興国に対するインフラ関連融資や設備投資に進出できるようになった。

なお日本の金融機関に関する記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45467292/index.html

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(24.5.21) 文学入門 伊集院静 「少年譜」

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 読書会が近づいてきたのであわててテーマ本を読み上げた。今回のテーマ本は伊集院静氏「少年譜」と言う短編集である。
この本を紹介してくれたのはISさんで、ISさんは自宅で私設図書館を開くほどの蔵書家であり、かつ読書家だ。
一方私は小説を読むことはほとんどなく、小説と言えばこの読書会のテーマ本がすべてと言う人間だ。

 そんな訳で私が伊集院静と言う作家を知ったのも「少年譜」と言う作品があるのを知ったのも、今回が初めてである。
最初私はこの作家の名前を見て女性かと思っていたがwikipediaで調べると、1950年山口県防府市で生まれた男性だった。
私より4歳若いがほぼ同世代といって良さそうだ。

 さらに若くして死亡した絶世の美女夏目雅子さんの夫だと知って驚いてしまった。
そうなのか、夏目雅子さんを射止めていたのはこの伊集院静だったのか・・・・・」男のやきもちがわきそうだ。

 伊集院静氏作詞家としても知られており、多くの作詞をしていたが私が知っているのは、近藤真彦さんが歌った「ギンギラギンにさりげなく」だけで、多くの他の曲は演歌好みの私の趣味にあっていないため有名のようだが知らなかった。

 さて今回のテーマ本「少年譜」には7本の短編が収録されている。
その中で私が秀逸だと思ったのは短編集全体の本の名前になっている「少年譜」と「古備前」であるが、やはり「少年譜」のほうが優れている。
作者もそのことを意識して短編集の全体の表題にしたのだろう。

 「少年譜」の舞台は伊集院静氏の古里である防府市から始まり、現在は山口市の一部になっている中国山地の山間の町徳地町、そして島根県津和野である。
伊集院氏の短編集を読むと多くはこの古里の近辺の話が多いが、私も過去に3年間、現在は山口市の一部になっている小郡で暮らしたことがあるのでこの辺りの地理はとても懐かしい。

 話は昭和33年売春防止法施行日の前日に、防府市にあった売春宿が消失しそこにいた女郎が子供の世話が出来なり、近くの燃料商の軒下に赤子を遺棄したことから始まる。
燃料商は当惑したが、そこに炭を収めるために出入りしていた炭焼きの老夫婦が赤子を不憫に思って引き取ることにし、山間の徳地町につれていきそこで育てることにした。この赤子が小説の主人公ノブヒコである。

 もし何事も起こらなければこの赤子は成長して親の炭焼きの手伝いをすることになったはずだが、多くの偶然と大人の善意によってこの赤子の運命は変転する。
最初の善意は誠実で心優しい老夫婦に拾われたことだが、二番目の善意はこの徳地町にある徳楽寺住職から幼稚園から小学校1年までに相当する3年間、基礎的な読み書きと算数,それと習字の鍛錬を週3日泊り込みで薫陶を受けたことだ。

注)この小説を読んで一番奇妙な点は昭和40年の時期に小学校ではなく寺子屋で教育を受けており、何か時代が明治時代を髣髴させる。昭和40年の日本は山口県の山村と言えども小学校はあったはずで、内容と時代が一致しない。

 住職はこの少年の能力を見抜き、学校教育で教わる水準をはるかに凌駕した一種の英才教育をこの少年に授けた。
少年はなぜ住職がこのような教育をするのかは分からなかったが、知識欲が旺盛でかつ素直な性格だったため、喜んでこの住職の教えを吸収した。

 三番目の善意は植物学の最高権威であった津田保治郎博士が中国山地の植物生態調査に訪れ、その折に徳楽寺住職を訪問したことから始まる。
津田博士と住職は中学の同窓生で旧友だった。
津田博士は炭焼きの恒助(ノブヒコの父)の案内で徳地町周辺の植生調査を行った。
その最終日に疲れがたまっていたため簡単な山行きを望んで恒助の息子、ノブヒコに道案内を依頼した。

 博士は途中で集落や山やその他色々な質問をした。
それにたいし少年は的確な回答をしたが、難しい集落名を漢字ですらすらと書くこの(小学校にも行っていない)少年の利発さに博士は感歎してしまった。
そして自宅の津和野に帰ってからこの少年を我が家の養子に貰い受けたいと懇願した。
博士としてはこの有為な少年をこの山奥において、炭焼き人生をおくらせることが少年にとってもまた日本全体にとっても損失と思ったからだ。

 こうしてノブヒコ津和野津田家の養子となったが、そこでの生活は必ずしも心安らぐものではなかった。
津田家には妻は死亡しておらず、祖母のサワが家の実権を握っており、孫に当たるノブヒコより一歳年下の保雄を溺愛していたからだ。
津田博士は一年の大半を津和野を離れて植物調査や東京での講演等を行っていたため、普段はサワがこの家の家長だった。サワは保雄にこの家を継がせるためノブヒコに冷たい態度をとり続けた

 保雄はまったく勉強は苦手だが世渡りに長けており祖母はこの保雄の言うことをすべて信用していた。
正月のある日、保雄は祖母が大事にしていたボタンの鉢を倒すと、すぐさまそれをノブヒコのせいにしてしまうなどこすからく生きる知恵を持っており、それを信じた祖母はノブヒコにひどい折檻をした。

 こうした不遇ノブヒコは何度も耐えたがその理由は住職から「これからは一人で生きよ。一人で耐えて励め。それがおまえの父と母、わしの願いじゃ。お前にはそれができる。それができることをこれまで教えてきた」と言われていたからだ。
もう一つノブヒコが耐えられたのはここで働いていたキヨエという少女がノブヒコ支えたからだ。
キヨエは中学卒業後位の年齢で、津田家では常に女中頭からいじめられていたが、ノブヒコとキヨエの間には少年と少女が感じる淡い初恋と連帯の気持ちが育っていた。

 しかし悲しい事件が起こりキヨエは自殺をしてしまう。
保雄が懇願して津田家でシェパードを飼うことになったのだが、あまりに獰猛なため手が付けられなかった。
津田家の用人はすべて噛み付かれ、特にキヨエはひどい傷を負った。
それだけでなく近所の主婦と子供をかんだため警察も乗り出してきた。

 サワはシェパードを手放そうと決心したが保雄が反対し、檻の中で飼うことを条件にそのまま飼っていたが、ある日このシェパードが毒殺された。
その犯人にキヨエがされたため、思い余ったキヨエは自殺をしてしまう。
この事件でもノブヒコは耐えた。住職から「一人で耐えて励め」と言われていたからだ。

 その後ノブヒコは小学校を主席で卒業すると東京の有名中学に入り、高校大学と優秀な成績で卒業し、父親の津田保治郎博士の後を継いで植物学の権威となり、国際的な植物学の栄誉ある賞を受賞して住職の教えに報いたと言う筋書きになっている。

 この小説のテーマ年長者(老人)は能力ある少年が何らかの理由でその能力を発揮できない不幸な環境にあるときは手助けをして救い上げるべきだというものである。
少年譜」だけでなく他の短編もそのテーマで貫かれている。
伊集院氏もかつてそうした境遇の少年だったのだろうか。詳細は分からないが少年にことの他優しい作家だ。

 私はこの作家がとても気に入った。確かに老人は単に老人であるだけではだめで、救いを求めている少年の手助けをしてこそ老人なのだと思う。
私は現在箱根駅伝出場に夢を持つ中学3年の少年の英語のコーチをしているが、少年が英語の勉強法が分からなくて悩んでいたからだ。
老人がいくら能力があっても老い先が短く、早晩その能力は廃れてしまう。能力を少年に引き継いでこそ老人の役目は終えられるのだと思う。

 伊集院静氏の小説は老人(大人)の生き方に対する優れた方向性を示していて読んだ老人に感銘を与えるのは確かだ。

なお文学入門は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43898465/index.html

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat31264874/index.html



 

 

 

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(24.5.20) 病状がようやく快方に向かった

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 ようやく病状は峠を越した。
経緯を説明すると、16日(水)の夜から急激に症状が悪化して17日(木)は一日中寝ていたが少しも症状の改善が見られなかった。
18日(金)に少し身体を動かすことが出来たので病院に出かけて行ったが、血液検査尿検査腎臓に異常が発生していることが判明した。

注)あまりにきついと病院にいくこともできない。病院通いも体力があればこそだ。

 白血球が異常に増殖しており、腎臓の異変を知らせる数値が高い値を示していた。
私自身の症状は微熱が続きそれに伴う偏頭痛と、周りの異様な痛み、それに尿が茶褐色になってしかも30分に1回と言う頻尿に悩まされていた。
皮膚も異様に敏感になってまともに眠ることも出来ない。

 私が行った医院はおゆみ野にあるみどり泌尿器・皮フ科医院だが、ここの先生とは四季の道でよく会う顔見知りである。
山崎さん、これは非常に良くないですよ
検査結果を見て開口一番言われてしまった。

注)正確にいうと最初私が最も信頼しているかない内科で検査をしてもらったのだが、かない先生がこれは腎臓の病気で泌尿器専門医院に行くように紹介状を書いてくれた。

 腎臓と膀胱に菌が入り込んでひどい炎症を起こしているらしい。点滴を受け、細菌の感染を抑える抗生物質と胃炎を抑える薬を4日分処方されて、「毎日病院に来るように」指示された。

 しかし薬の効き目はてきめんだ。19日(土)には熱も下がり偏頭痛はなくなり、尿は通常の色に戻っていた。
これはすごい、腎臓の機能が回復して来た
私は最近の医療技術の進歩に驚いたが、実際は薬で細菌を抑えているだけだからしばらくは養生が必要だろう。

 娘がやって来て「おとうさんは24時間走のような無理なことをするからこうなるのよ」と言っていたがそのとおりだろう。
実はここ1ヶ月間体調の異常が続いていた。

 左目が急に見えなくなった。見えなかった時間は5分間程度だが本を読んでいたら急に左目の視力が半分なくなりそのうちに全部見えなくなった。
当惑して寝込んでいたら5分後ぐらいに半分の視力が回復してその後また全部見えるようになった。

 かかりつけの眼科に行ったら、「これは目の病気ではなく眼動脈と言う細い動脈が一時的に詰まってしまったからで、脳梗塞や心筋梗塞の兆候でもあるので内科で検査を受けるように」といわれている。

 昨年治療を受けた歯茎が再び膿を持って腫れてしまった。
かかりつけの歯医者で切開して一時的に腫れは引いているが、「根がふたたび腐ってきており、今度膿が出るようなことがあればかぶせた金歯を取って根本的な治療をしなければいけませんね」と言われている。

 そして今回の腎臓の異常で、ここ一ヶ月間の間に3回の病状悪化だ。
なにか身体に備わっていた防御のバリアーがいっぺんに崩壊してしまったような状況だ。
戦争イメージで言えば築いていた塹壕がいたるところで突破されて総崩れになったと言うところだろう。

 今回は幸いにも回復基調にあるが、もはや無理が利かない身体になったのは確かなようだ。
かつては身体だけがとりえだと思っていたが、誰にも限界がある。
横綱の白鵬でさえ峠を越せば4敗してしまうのが世の中だ。

 今までのような体力にものを言わせた無茶はするなという身体の警告だろう。この警告を聞いて少しずつ戦線を縮小して行こうと思っている。

注)今までのしがらみがあってすぐに戦線の縮小を図れないが、出来るだけその方向で努力しよう。

 なお、病気療養中に多くの方から励ましのコメントやメールやtwitterをいただきました。ありがとうございます。こんなに多くの方から励まされるとは思っておりませんでしたので、驚きとともにうれしさを感じております。
明日からは少しずつもとの日常に近づけようと努力いたします。

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(24.5.19) 病気療養シリーズ  リメイク版 その2

 昨日病院で検査を受けたところ腎臓がひどく炎症を起こしているといわれた。抗生物質で炎症を抑える措置をとってもらっているが、微熱があり時々ひどい頭痛と腰周りが痛む。
白血球が異常に増えているので体内で白血球が死闘を演じているのだろう。
安静をするように言われているので一日中寝転んでいる。
そんな訳で今日もブログを書いていないのでリメイク版になるが、かつて私が書いたブログで自分でも好きなものを掲載することにしたい。
私の好きな元大リーガーの野茂英雄さんの記事である。


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(20.7.22) 天才野茂が引退した

  野茂英雄投手がこの17日に引退声明をだした。1990年に近鉄に入団し、1995年に大リーグのドジャースに入団しているから、日米通算18年間在籍し、201勝155敗の成績だった。
その間、大リーグで2回ノーヒットノーランを記録し、最多奪三振王にも2回輝いている。大リーグきっての豪腕投手だった訳だ。

 しかし野茂投手の軌跡をみると波乱万丈であり、はっきり言って日本では不遇だった。
野茂がトルネードを始めたのは中学生の時からだったが、それゆえ名門高校からは完全に無視された。
あんな投球方法ではコントロールが定まらないし、使い物にならない

 私が野茂を天才だと思うのは、誰がなんと言おうともあのトルネードを一度たりとも止めようとしなかったことである。
名門高校の監督から「フォームを変えなければダメだ」といわれても怯むことがなかったのだから驚きだ。
これが俺のフォームだ」中学生の野茂がそう信じたのである。

 高校卒業後ノンプロ新日鉄堺に入団したが、その最大の理由はフォームを変えたくなかったからである。プロではフォーム改造に意欲を燃やすコーチがてぐすね引いて待っていた。

 新日鉄堺フォークボールを覚えた後の活躍は目覚しく、1988年ソウルオリンピックでは日本のエースとして活躍し、一躍プロ野球各球団の注目をあびた。

 翌年のドラフト会議で近鉄に1位指名されたが、その時の野茂の入団条件が「フォームを変えないこと」だった。野茂はその後も常にこのフォームにこだわり、年俸よりも野球のスタイルにこだわっている。

 野茂が幸運だったのは、その時の近鉄の監督が仰木彬氏だったことである。仰木氏は日本の監督としては異色といっていいほど、天才を見る目を持った監督だった。

好きなように投げればいい
野茂イチロー仰木監督がそだてた秘蔵子である。

 近鉄時代の野茂の活躍は素晴らしかったが、1992年仰木監督が退団し、その後任に鈴木啓示氏が監督となると、野茂との確執が始まった。

 鈴木氏も天才肌の投手であったが、鈴木氏野茂を認めることができなかった。特に鈴木氏野茂を嫌ったのは四球の多さだった。
あいつは三振も取るが、フォアボールが多すぎる。守備の時間が長くて仕方がない。フォームを改造しなければ使い物にならない

 鈴木氏は現役当時屈指のコントロールを誇っていただけに、野茂のコントロールの悪さに我慢ならなかったのだろう。しかしここが仰木氏との監督としての力量の差だった。

 鈴木監督との確執に加え、12球団随一のケチ球団だった近鉄野茂の高額の年俸引き下げを図ろうとして、野茂の怒りに油を注いだ。
野茂近鉄を追われるようにして大リーグ、ドジャースに移籍したのは1995年のことだが、近鉄は最後まで野茂に底意地悪い対応をしている。

 「任意引退選手」にしたのである。これは当時のプロ野球の規定では任意引退選手は日本の他の球団でプレーすることができなかった
コミッショナー側の高額年俸を要求する選手を封じ込める一種のギルド制度だと思えばよい。

 だから野茂大リーグに挑戦したのは、日本の球界から鞭持って追われたからで、自ら望んでという訳ではない。年俸も1億4千万から980万に落ちた。
ドジャースでは当初マイナー契約しかしてもらえなかったからだ。

 しかし、人生とは何が幸いするか分からない。アメリカの球界は日本のそれとは異なり、天才についておおらかだ
どんな投球方法でも勝てればいい

 その後の野茂の活躍は見事だ。1995年13勝6敗新人賞奪三振王に輝いた。
さらに2回ノーヒットノーランを達成し、アメリカ人のアイドルにもなっている。

 今、野茂英雄の名前を知っている日本人は多いが、鈴木啓示の名前を知る人は少ない。
野茂の大リーグ挑戦など、単なるマスターベーションで成功するはずがない
この鈴木啓示の言葉は当時の日本人の常識だったことを覚えておられるだろうか。

 野茂はアメリカで大成功をおさめたが、二度と日本の球界に戻ろうとはしなかった。トルネードを認めない日本球界を嫌っていたからだ。
ドイツの心理学者クレッチマーは言っている。
成功したパラノイア(一つのことにどこまでもこだわり続ける性格の人)を人々は天才と呼ぶ

 野茂トルネードにこだわり続け、そしてアメリカで自分が天才であることを証明した。

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(24.5.18) 病気になってしまった。ブログが書けない。 しばらくはリメイク版で我慢してください。 リメイク版その1

 イヤー、大変なことになっている。
このところまったく病気というものと縁が無かったが、昨日(16日)から猛烈な頭痛と、関節の力が抜けてしまった。
また皮膚が異常に敏感になってさわると飛び上がるほど痛い。

 

 とてもブログなどかける状況でなく昨日からゴロゴロ寝ているのだが、今のところまったく症状は改善しない。
インフルエンザにかかったときと症状はまったく同じだが、この時期にインフルエンザなんかにかかるものだろうか。

 これ以上の文書はとても書けないのでしばらくはリメイク版でご了承願いたい。

(22.8.25) アメリカが共食いを始めた なぜ円高が進むのか

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 このところの円高株価の低迷菅政権は悲鳴を上げ、日銀の白川総裁に「これは日銀が無策だからだ」と詰め寄っている。
円が94円になったのも、日経平均株価が9000円を割るのも、すべて日銀が2%程度のインフレターゲットを設けないからで、「何でもいいから資金を市中に注入してデフレを抑えろ」と命令し始めた。

注)日銀は昨年の12月以降、新型オペレーションと称して、金融機関に金利0.1%、期間3ヶ月の資金を20兆円規模で供給させられている。
それでも効果がないので、さらに不良資産を担保とした融資や国債の直接引受け等が取りざたされている。

 しかしこれは日銀に対する濡れ衣というもので、円高も株安もすべてアメリカ経済が行き詰まり共食いを始めたからであり、原因はアメリカにある。
そもそも高度に発展したアメリカのような資本主義社会が中国やインドのように発展するはずがない。
そのアメリカが1990年代以降GDPが成長したように見えたのは、日本とヨーロッパの資金を強奪してきたからである


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 順を追って説明しよう。

 日本のバブルがはじけたのは1990年の始めだが、アメリカは日本に対しアメリカ国債を購入させるだけでは収まらず、BIS規制で日本の金融機関を追い詰め、それまで世界最強と思われていた金融機関を二束三文で購入することに成功した。
このためその後の日本経済はまったく元気がなくなり、以降20年に及ぶ低迷をきたしている。

注)世界的規模の銀行だった長期信用銀行には約8兆円の政府資金が投入されたが、これをリップルウッドに約10億円で売却している。

 アメリカは日本からの資金をこれ以上強奪できないことが分かると、次はヨーロッパからの資金の強奪に切り替えた。
サブプライムローンをたっぷり含んだ証券を、ムーディーズのような格付機関と共謀して安全確実で高利回りの証券と称してヨーロッパに売りまくった。
アイスランドアイルランドがヨーロッパ各地から預金を集め、こうした証券に投資して、リーマンショックまではわが世の春を謳歌していたのがそれである

注)アメリカで組成された証券の約半数がヨーロッパに売られたと推定されており、現在のイギリス、スペイン、ギリシャ等の低迷はその毒があまりにきついからである。



 こうしてアメリカは当初は日本を、ついでヨーロッパを餌食にして1990年以来の成長を遂げてきたのだが、とうとう餌食にする相手がいなくなってしまった。
草食動物がいなくなれば肉食動物も生きてはいけない。

注)中国が次のターゲットとなっており、アメリカの金融機関・証券会社・ヘッジファンドがさかんに中国に進出しているが、中国は統制経済なのでアメリカの金融機関が自由に活動することを許していない(自由化前の日本と同じ)。
自由化とはアメリカの金融機関が他国の富を強奪する手段である。


 強奪する相手がいなくなると、後は共食いしか残されてない。
アメリカがリーマンショック以降始めたのはこの共食いである。

 まず自動車産業の雄GMが倒産し、アメリカ政府は約4兆円の政府資金の投入を行ったが、GMはどう見ても自力での再建が不可能と思われた。

 そこでアメリカ政府とGMは、アメリカで最も品質が高く、高収益を上げていたアメリカトヨタをマットやブレーキに欠陥があるとの理不尽な理由で徹底的にたたくことにした。
トヨタの販売力が健在ならばGMの車は売れないからだ。
これがものの見事に成功しトヨタは大凋落し、一方GMは再上場が可能なところまで販売が復活した

 GMは政府の企業だから、4兆円の資金を回収する必要がオバマ政権にあり、そのために優良企業のアメリカトヨタを血祭りにあげた。


 次の共食いは政府とシティー・グループによるゴールドマン・サックスつぶしで、これもシティー・グループに対し約34兆円(
4000億ドルの政府資金が導入されシティーは政府の金融機関になっているからだ。
34兆円の回収にはゴールドマン・サックスの足を引っ張るより手がない。トヨタ方式だ

 まず10年2月に突然ニューヨーク・タイムズが、「
ゴールドマン・サックスがギリシャ政府に対し数千億円の融資を行っているのに、これを通常の融資ではなく空港税や宝くじの収益金を担保とした交換(スワップ)による取引として偽装している」とすっぱ抜いた。 

 
融資ではなく交換にすればスワップ取引になり、それゆえギリシャ政府の財務報告には記載しないで済むというのがミソで、これがギリシャ政府とゴールドマン・サックスの密約になっていたというのである。

注)他の南欧諸国の融資もすべてこのようなスワップ形式をとっているが、スワップはデリバティブの一種で財務報告の対象外になっているのが普通。

 
続いて10年4月に、SEC(証券取引委員会)が、「ゴールドマン・サックスがサブプライムローンをたっぷり含んだ証券化商品の販売で、その危険性を顧客に告知せずに販売した」との詐欺罪の告発を検察庁に行った。
ゴールドマン・サックスはこの商品が将来大幅に値下がりすることを知っていたという理由である。
 

注)実際は大手ヘッジファンドが証券化商品を組成し、それをゴールドマン・サックスのネームバリューで販売したのだが、このヘッジファンドはこの商品が将来値下がりするものとして先物予約で売り注文を出していた。



 このあたりまではすでによく知られている事実だが、最近出版された副島(そえじま)隆彦氏の「新たなる金融危機に向かう世界」を読んで驚いた。
シティー・グループによるゴールドマン・サックス追い落とし作戦の第三幕があり、それがあの5月6日の理由が分からないニューヨーク株式の乱高下だったというのである。
この時ニューヨーク株式市場では7分間の間に約1000ドル低下し、その後約650ドルの急激な戻し相場になった。

 この理由として当初シティーバンクのトレーダーの誤発注だとの説明がされたが、その後訂正され、原因は複合的で明確な原因は不明とされている。

 この原因を副島氏は、ゴールドマン・サックス超高速プログラム取引
100分の3秒で取引注文が出せるという)の裏をかくさらに超高速プログラム取引をシティーバンクが開発し、先物取引でゴールドマン・サックスが無限ループに陥るように仕組んだと言うのである。

 そして株価が約1000ドル程度低下したところでシティーが大口の購入を行い、ゴールドマン・サックスに多額の損失を与えたと言う。
うぅーん、うなってしまった」有りそうなことだが、証拠は見つけるのは不可能だろう。

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 このようにしてアメリカ経済は外国から資金を強奪する相手がなくなったため、国内で政府系企業
(実質的に政府が支援している企業)が政府と組んで、自立している優良企業を追い落として収益確保に走っており、まさに共食いの状況になっている。

 しかしこれではアメリカ経済全体としては成長することができない。
成長を偽装するためにはアメリカ政府が国債を発行して中国や日本に買い取らせるか、それができない場合はドルを印刷して市中にばら撒くしか方法がなくなった
(これで名目のGNPは増加する)。
しかしそのため、市場ではドルへの信頼が急低下してドル安になっている。
アメリカの成長は終わった。後は衰退しかない」市場はそう判断し始めた。

 私が何度も言っている様に、経済も永遠に成長することはない。それでも成長しようとすればアメリカが今まで行ってきたように、日本やヨーロッパから資金を強奪するしかない。
しかしそれも限界があり、最後は国内の共食いとなって、アメリカ全体としては成長が止まる

 ドル安になるのはアメリカが成長できなくなっているのに、それでも成長しようとFRBが不必要に資金を供給(
ドル札を印刷している)して、インフレ政策をとっているからである。
日本で日銀に同じような政策を取らせても、インフレだけ亢進し名目GDPがあがるだけになるのだから無駄というものだ。

 経済成長には限界があるという認識が、先進国には今一番必要だと私は思っている。

注)人間でも二十歳を過ぎると身長が止まるが、それでも成長させようとして過食すればメタボになるだけだ。
先進国諸国はこのメタボを成長だと称している。

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(24.5.17) 中国経済の急ブレーキ 高度成長から中成長へ

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 英フィナンシャル・タイムズ(5月15日)の「中国経済、予想外に厳しい減速の恐れ」という記事はとても興味深かった。
次期首相候補李克強氏がかなり前の2007年に「中国のGDP統計は人為的なもので当てにならず、これは参考値としか見ていない」とアメリカ大使に述べた言葉が現実になってきたというのだ。
GDPを見ている限り中国経済は相変わらず順調だが、実際はひどい減速に陥っていて、高度成長の時代が終ったという指摘である。

注)第一四半期のGDP伸び率は8.1%で表面的には高度成長が続いている。

 李克強氏が経済政策の指針として実際に把握している数字は、電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行の融資の実績の3つだそうだが、現在その数字が急速に悪化している。
こうした数字は報告主体が少なく正確な数字さえ挙げてくれば実態把握が可能という意味で確かに重要な指標だ。

 一方GDPという数字は多くの数字を加工して作成するため、途中で何段階も人為的な手が入り、その都度責任者の都合のいいように加工されている。
そのため党中央はこうした加工数字を信頼せず、もっぱら現場から直接上がってくる生の数字を信頼している。

注)GDPが人為的に加工されていることは研究者の間では常識で、この点について私は「経済成長率は忠誠度」という記事を書いている。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/21910-f18a.html

 特に電力消費量は生産現場の実態把握に役立つし、鉄道貨物輸送量は物流の実態把握に役だつ。
それに融資実績は投融資との関連が深く資本形成(不動産投資)の度合いを把握できる。
私は李克強氏が言う3つの数字以外に、貿易実績不動産価格の動向を重要視すべきだと思っているが、貿易実績は中国が韓国と並んだ輸出立国だからぜひとも見ておかなければならない値であり、不動産価格の推移は日本がそうであったようにバブルがいつはじけるか、あるいははじけているかの重要な指標だからだ。

 電力の発電量消費量の最新数字はまだ発表されていない)は4月に入って急激に低下傾向にあり、3月が対前年比7.2%増、4月は0.7%増昨年同月は11.7%増)となり、一方鉄道貨物輸送量は(1~4月間で)1年前の半分、銀行融資も伸び悩んでいるという。

 そればかりでなく不動産ブームを支えていた新築住宅は2月~4月の3ヶ月間で前年対比▲4.2%に落ち込んでいる。
真打は輸出入の数字で、4月の輸入量は0.3%増、輸出は4.7%増で、昨年が通期で輸出入とも20%程度の伸び率に比較すると惨憺たる結果になっている。
これだけ実態数字が悪化したのは経済成長の国中国にとっては驚天動地だ。

 中国は輸出で持っているような国だ。何しろ輸出のGDPに対する割合は約40%でこれは国内消費の35%より大きい。
その輸出に急ブレーキがかかれば中国経済は失速する。

 このGDPと実態数字の乖離は激しすぎる。
かつて日本においては石油ショックがそれまでの10%前後の高度成長から5%前後の中成長への転換点になった。
中国は貿易に依存しその最大の取引先はEUだ。
そのEUはギリシャショックで完全に成長が出来ない経済になってしまった。
貿易相手先がまったく成長していないのだから輸出国も成長は出来ない。
中国がこのギリシャショックを契機に中成長に移るのは日本の例を見ても必然で、中国の高度成長の時代はGDPの値如何にかかわらず終ったようだ

なお中国経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat38004871/index.html

 

 

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(24.5.16) NHKスペシャル キム・ジョンウン 北朝鮮 権力の内幕

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 NHKスペシャルを注意深く追っていくと世界情勢の把握に実に役立つ。
日本にはCIAモサドMI6のような正式な情報機関はないが、その代わりをNHKが担っているみたいだ。

 今回は北朝鮮のキム・ジョンウン氏がどのようにして父親の金正日氏から後継者に指名されたかの内幕を暴いたものだった。
金正日氏には4人の子供がいたが、長男は二番目の妻の息子で、次男、三男と長女は4番目の妻の子供である。
通常ならば長男が後継者になるのだが、この長男は浪費癖が激しくディズニーランドで遊んで秋葉原で電化製品を購入しようとして日本の税関チェックに引っかかっている。
いわばどうにもならない道楽息子として知られていたから当初から後継者レースから脱落していた。

 次男も海外かぶれで海外の演奏家の追っかけをしていたりしていたので金正日氏の逆鱗に触れて後継者争いからこれも脱落していた。
結局残ったのは性格がまじめで遊びをしない三男のジョンウン氏長女のヨジョン氏だけになってしまった。
金正日氏は知人のロシア人に「上の二人はビジネスに興味を持っており、一方下の二人は政治に興味を持っているので後継者はこの二人のうちの一人になる」とシベリア訪問のときにもらしていたと言う。
長男と次男はアホでどうしょうもなく、いたし方がないから三男か長女を後継者にするということだが、北朝鮮のような儒教社会では女性が矢面に出ることはないから、後継者はジョンウン氏ということになっていたようだ。

 ジョンウン氏を正式に後継者に決めたのは2009年9月に金正日氏の別荘で行われた家族会議で決まったと言う。
このとき出席したのは放送では金正日氏、その妹の金敬姫氏、金敬姫氏の夫の張成沢氏、それにジョンウン氏となっていたが、私はここにジョンウン氏の妹のヨジョン氏もいたのではないかと思っている。
実際はこの5人が北朝鮮のファミリー指導部を形作っていた。ゴッドファーザーのファミリーと同じ)。

 金正日氏がなぜこの時期に家族会議を開いたかと言うと、その前年の2008年8月に重い心臓病を患い、海外から専門の執刀医を招いてかろうじて一命を取り止めていたからで、もはや余命いくばくもないことから後継者の決定を急いだと言われている。
実際その2年後には金正日氏は死去した

 この席で金正日氏ジョンウン氏を後継者にしたいと切り出したが、それに対し金正日氏の妹の金敬姫氏が反対した。

以下のやり取りは私が推定したもの。NHKはここまで言っていない

だめよ、ジョンウンではまだ若すぎるわ。ここは一旦私の夫の張成沢に暫定政権を作らして、ジョンウンが経験を積んでからジョンウンに任せたほうが国が安定するわ
おばさん、なぜ俺じゃ駄目なんだ。おれだって一生懸命経験を積んでるじゃないか
駄目よ、あんたのお父さんなんかおじいさんの下で20年も指導者としての勉強をしたのよ、あんたはたった2年程度じゃない

 頭にきたジョンウン氏は食事の途中で箸を投げ出して部屋を出て行ったという。
これには金正日氏も当惑したらしい。
なあ敬姫、ここは兄さんの言うことを聞いてくれよ。お前と張成沢で何とかジョンウンをささえてくれれば良い指導者になるよ。
ヨジョン、お前は兄さんのジョンウンをささえてくれるだろう


お父さんがそういうのなら、私はお父さんの判断に従うわ

敬姫、そういうことだ。頼む、ジョンウンを支えてくれ

 こうしてジョンウン体制は出来上がったが、実際の権力基盤は当然弱いものになった。
私は前に「金総書記の断末魔」(リンクが張ってあります)という記事を書き、ジョンウン氏が豊臣秀頼で張成沢氏が徳川家康だとの記事を書いたが、ジョンウン氏は張成沢氏の支援がなくては何も出来ない状況に成っている。

 何しろ北朝鮮経済は完全に崩壊している。2000年の始めごろから中国をならって改革開放路線をとったものの、富の偏在化と世界情勢の流入に驚いた北朝鮮指導部は2007年には再び鎖国体制に閉じこもってしまった。
世界で最も裕福な国と宣伝してきたのに、最貧国だと知られてしまうと示しがつかないからだ。

注)放送では金日成をたたえる文字を刻んだ記念樹を、森林伐採の担当者が伐採し中国に売り払ったため、金正日氏が激怒して改革開放を中止させたと説明していた。

 北朝鮮はミサイル核兵器で中国、アメリカ、韓国を脅しては食糧援助を得て生きながらえている国だ。
幹部階級でさえ配給は二日に1度程度になっており、一般庶民は草の根を食べてかろうじて生き延びている。
金日成の時代には配給は毎日あったのとは大違いだ。

 北朝鮮指導部(実際は張成沢氏と金敬姫氏)はジョンウン氏をおじいさんの金日成氏を真似させることで、なんとか権力の崩壊を防ごうとしている。
しかしそうした小手先の対応ではどうにもならないところまで北朝鮮経済は追い込まれている。
改革開放をすれば北朝鮮が世界の鼻つまみ者であることがばれてしまい、しなければ国民が飢えで死に絶える
結局は張成沢氏の指導で改革開放路線をとり、ジョンウン氏はその中で権力の中枢から追い出され形式的な権力者になるのだと私は思っている。

なお北朝鮮の政治経済についての記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48564279/index.html
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat33268425/index.html

 

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(24.5.15) twitterを1年間使用してみて



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 私はかなり性格が保守的だから新たなことをするときはとても勇気がいる。
たとえばマラソンのレースに出るのもほぼ10年間にわたって逡巡した。
私は30歳代から常に走っていたのに、レースとなるとどうやって申し込むのか、また衣類を盗まれたらどうしようかとか悩みが多く出て、実際にエイヤーとレースに申し込みをしたのは46歳のときだった。

 ブログを書き始めたのも同じだ。前からホームページHP)のことは知っていたので、ホームページなるものを私も作ってみたかったが、システム的な知識が必要でまともなHPが出来なかった。
それに一旦作ってもすぐにメンテナンスが発生し、修正をすると画面の構造が壊れたりしてすっかりいやになっていた。
そのときパソコン教室のサイモン先生から「これからはHPの時代ではなくブログの時代です」と教えられたものの、半年あまり逡巡したものだ。
本当はHPでなければならないのではなかろうか、第一ブログなんてどう操作していいかさっぱり分からん・・・・・

 今私が試行錯誤しているのはtwitterである。
twitterはほぼ1年前から始めたのだが、例によってその使用法がさっぱり分からなかった。
最初の画面で「いまどうしている?」と聞いているので、現在の状況を140文字で記載すればいいのは分かるが、どんな情報を記載すればいいのか分からなかった。
本当にこんなものが役立つのだろうか・・・・・・・文字数が少なすぎて何を言っているのか分からないじゃないか・・・・
実際他の人が書いたtwitterの内容は玉石混交で石に当たると、「何でこんなものを読まなければならないのだ」と腹立たしさを感ずる。

 私は当初140文字の中に有意義な情報を押さえ込もうとするから舌足らずなのだと思っていたが、大阪市長の橋下氏twitterを見て度肝を抜いた。
橋下氏はtwitterを連続的に書き込むことで一つの文章にしており、最初から読むとブログとまったく変わりがない。
これだけ長い文章にするなら最初からブログで書けば良いのに」と私などは思うが、闘争心溢れる橋下氏からすればtwitterでの論争が一番あっているのだろう。

注) 私の経験から言えばブログはパソコンと相性が良く、一方twitterはスマートフォンとの相性がいい。おそらく橋下氏は時間があればスマートフォンを駆使して自己の主張を展開しているのだと思う。

 私のtwitterの使用法はいたってオーソドックスで、自分が行っているイベントマラソン、登山、行事等)など、非日常的な行動をしているときにその内容を発信している。
今から江戸川120kmのスタート」といった様な内容だ。
すると私のtwitterをフォローしてくれているマラソン仲間から、「がんばれ、もう少しだ」といったような激励が飛んでくるので、なにか観衆の中で競技をしているような気持ちになれる。

 思い出してみると私がスマートフォンに興味を持ったのは家から離れたパソコンのない環境でブログの更新をしたかったからだが、これはほとんど不可能なことが分かった。
ブログとスマートフォンの相性が悪く更新画面を開いてもまともな更新環境にない。
文字もHTML文書で書かせられたりして「これなら書かないほうがましだ」と思えるほどだ。

注)ココログには、スマートフォン向けのソフトがあってインストールしてみたが今のところさっぱり効果が見えない。

 一方でtwitterとの相性の良さは抜群だ。私はスマートフォンで長文などどだい書けないから140文字で十分だし、写真の添付が簡単なのが気に入った。
イベントの報告などは140字あれば十分すぎるので大変重宝している。
一方評論のような相手を説得する文章は圧倒的にブログが勝っている。
橋下氏のtwitterを見ても回答部分などは元々のtwitterを追わなければ何のことか分からないので面倒なことこの上ない。

注)橋下氏のtwitterでは文章を最初からつなぎ直しているが、やはりつなぎなおさなければならないのはtwitterの限界だろう。

 やはりtwitterは「いまどうしている?」相互コミュニケーションではなかろうか。橋下氏のように論争の道具にすることも出来るが、140文字の制約は論争向きではない。
所詮はどうしているかを知りたいだけだから、関心のある人のtwitterはフォローするが、それ以外の人のtwitterはフォローしても何もならないし時間の無駄のようだ。

なお「ブログの次はTwitterかfacebookか?」と言う記事を先に記載しましたがその内容は以下のとおり。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/24215-twitterac.html

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(24.5.14) 江戸川24時間走とちはら台走友会のしまちゃん



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  今は日曜日の午後でようやく起きだしてきたが体中が悲鳴を上げている。
別に寝坊をしていたわけでもまた病気でもなく、昨日の朝8時から今日の朝7時まで、23時間のマラソントレーニングをしていたからだ。

 このトレーニングは江戸川の河口の葛西臨海公園から江戸川と利根川が分枝している関宿まで行って帰ってくるトレーニングで片道60km、往復120kmの距離を24時間以内で戻ることを目標にしている。
江戸川24時間走」と命名したが、これは私の命名でこの名前が一般化しないのはこうした特異なトレーニングをする人が私しかいないからだ。

 私は過去に2回この「江戸川24時間走」を走っているが、このコースの最大の利点はエスケープする場所が極端に少ないことだ。
一人でするレーニンニングで最も大事な条件は、途中で止めたくても止められないように環境設定しておくことだ。
エスケープ場所は武蔵野線が通っている三郷駅と東武野田線が通っている川間駅しかない。
そこを過ぎると後は土手をただひた走りに最後まで走る以外に対処の仕様がない。

 私は長い間こうした特異なトレーニングをするのは私ぐらいしかいないのではないかと思っていたが、今回のトレーニングではちはら台走友会のメンバーのしまちゃんとtwitter仲間のはるさんに声をかけてみた。
しまちゃんは走友会では24時間リレーというような夜を徹しての競技が好きな稀有な人材であり、いっぽうはるさんサロマ100にむけて100km程度の距離を走りたがっていたからだ。
しまちゃんは私より20歳ぐらい若い好青年であり、はるさんは女性ランナーだ。

 こうして今回は3人で走ることになったので夜がさびしくない。
走ってみると分かるが夜の江戸川にはほとんど人がおらず、川と風の音と鳥の泣き声以外は何も聞こえない。
たまに人に会っても夜9時ごろまでと早朝ぐらいで真夜中は何か自分ひとりで江戸川を占有しているような感じになる。

 だが今回は3人だ。楽しく走ろうとスタートしたがこの土曜日は春に珍しい西高東低の気圧配置で北風が猛烈に吹いていた。
江戸川は北から東京湾に注いでいるので、北風が吹くと上流に向かって走るときは真正面から風が吹き付ける。
冬と違って気温は低くはないが風は冬並みだ。
なんだよ、これで春かい」悲鳴を上げた。

注)私は冬江戸川を上流の川間から葛西臨海公園までの45kmをよく走るが、これは北風を利用して楽に走るため。

 なんともまともに進めない。通常関宿には夕方の6時前には到着できるのにこの日は7時になってしまった。あまりの体力の消耗に途中の三郷での昼食やコンビニでの夕食に十分時間をかけたからだ。

 今回はこの北風に悩まされたが大きな収穫もあった。
同僚のしまちゃんのマラソンスタイルが私のそれとまったく異なっていたことを発見したからだ。
しまちゃんとはフルマラソンのレースなどではしばしば一緒に参加しているが、並んで走るわけでないのでしまちゃんのマラソンスタイルをまったく知らなかった。

 私はレースやきつい練習をするときは食事をほとんどしない。身体が重くなるのがいやなのと途中でたっぷり食事などしていたら時間がかかって仕方がないし、第一走っている最中は胃が食物を受け付けない。
だからランナーは小食だと思っていた。

 ところがしまちゃんは私の対極にいる人だった。当初からザックに食料がたっぷり詰まっていただけでなく、昼食やコンビニでの食事は私の3倍程度の量を食べる。
しかもそれでもたらないとばかり食料が少なくなるとコンビニで十分な食料を仕入れ、休みのたびにほおばっていた。
しまちゃん、そんなに食べて胃がおかしくならないのかい・・・」心配してしまった。

 しかしそこはよくしたものでトイレがあるとそこで不要なものは排泄していたから、ちょう度我が家のカメゴンと同じパターンだった。
私などはレース中にトイレに行かないように最初からほとんど食べないがしまちゃんはそうしたことにお構いなしだ。

 実は私はしまちゃんのレース展開にいつも不思議に思っていたのは、前半はスローベースなのに後半猛烈に追い上げて私なども何回もゴール直前に追い抜かされている。
何であんなスタミナがあるのだろう」不思議に思っていたがこの食事方式がその原因であることを始めて知った。

 私は24時間走をほぼ22時間前後で走っているが、食事などは最低の時間で休むことなく走ってきた。しかし最後はぼろぼろでまったく走れなくなって歩いて葛西臨海公園にたどり着いていたものだ。
しかし今回しまちゃんの食事タイムやトイレタイムに付き合い、しまちゃん時間で走ってみると身体に対するダメージが比較にならないくらい軽い。
なるほどね、食事と休憩をたっぷりとっても、長距離を走り続ける場合はかかる時間はさして変わりがないのか・・・・・」大発見だ。

 今回は食事とトイレのメカニズムをしったが、こうした食事法は長距離のスタミナ維持に効果的なことを知った。
やはりいつも一人で走るだけでなく友達と走ると思わぬ発見が出来るものだ。

注)ちはら台走友会の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44088639/index.html

また前回の24時間走の記事は以下のとおり
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/221010-21a8.html

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(24.5.13) イランとアメリカの神経戦 アメリカはイランの核開発を阻止できるか?

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 トルコのエルドアン首相の仲介によるイランと核協議6カ国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツ)の第2回目の核関連会議が5月23日にイラクの首都バクダッドで開催される。
前回の会議ではイランの思惑通り実際は何も決まらず、単なる時間稼ぎに終ったためアメリカがあせりだした。

 オバマ大統領が「外交で解決できる時間は限られている。イランは早急に結論を出さないといけない」と脅しをかけているが、イラン人はプライドが高いので脅しをかけられればかけられるほど強気に出る。
アメリカに屈するな超強硬派が議会の主導権を握っているため反米一色だ。

 だが実際の経済現場では水面下の駆け引きでしのぎを削っている。
アメリカはイラン産原油の輸入禁止措置を各国に求めて、応じない場合はその国の金融機関と米銀行の取引をこの6月を期限に停止すると通告している(金融機関を市場から締め出すと言うこと)。

 日本や韓国はすでにイラン産原油の大幅な輸入削減に同意したし、EUもアメリカに追随した。
EUがアメリカにすんなり追随したのはアメリカの支援IMFからの資金援助)がなくてはヨーロッパの経済危機を乗り越えられないためだ。

 だがこのぐらいでへこたれるイランではなく隣国ドバイを経由してヨーロッパや中国やインドと石油関連の取引を行っていた(表面的にはドバイの会社の取引になる)。
この禁輸措置の抜け道をふさごうとアメリカはドバイ政府に対し圧力をかけた。
ダミー会社を使った石油取引を黙認した金融機関も制裁の対象になる
ドバイの金融機関とアメリカの金融機関との取引を禁じると脅されて、ドバイ政府がイランを見捨てイランはドバイで金融決済が出来なくなってしまった。

 これでイランは根をあげるかと思っていたら、こんどは会社をトルコに移転してここでヨーロッパ企業との石油関連取引を行っている。
トルコはEUと異なりアメリカの言うことをすんなり聞かない
かつてトルコはEU加盟を目指して西欧の言うことをすべて聞いていたが、それでもEUは加盟を許さなかった。
現在のエルドアン首相率いる政党は、イスラム回帰政党でEUに未練を持っていない。
かえってイスラム諸国との関係強化に乗り出しており、イランもその中の一国だ。

注)トルコのエルドアン首相の政策については以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat47029560/index.html

 トルコはアメリカの金融制裁を拒否しているが、ヨーロッパ企業も本音ではアメリカのイラン制裁を迷惑に思っているのでわたりに舟と言った状況だ。

 もともとアメリカのイラン産石油の禁輸措置はイスラエルのネタニアフ政権がイランに空爆を仕掛けて世界経済を混乱させるのを防ぐ目的だ。
オバマ政権としたら大統領選挙が行われる11月まではなんとしても中東情勢は平和裏に推移してほしいし、出来ればイランの核開発を放棄させたい。
そうでないとせっかくイラクから軍隊を撤退し、さらにアフガンからひきあげて中東シフトからアジアシフトに移ろうとしているオバマ戦略が頓挫する。

 だがアメリカがイスラエルを押さえられるのも大統領選挙までだろう。
大統領選挙が済めばイスラエルのイラン空爆を容認する可能性がある(ネタニアフ首相の我慢にも限界がある)。
一方イランとしては11月までに何とかウランの濃縮に成功してはれて核保有国になろうと必死だ。
こうしてアメリカ、イラン、イスラエルのチキンレースが続いているが、勝利者が誰になるか予測がつかない。

なおイラン関連の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48441473/index.html

 

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(24.5.12) 東電の総合特別事業計画は最初から無理筋

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 「これじゃ最初から無理じゃないか・・・・・・」つくづくそう思った。
5月9日に政府は東電の「総合特別事業計画」を認定し実質的に国有化することにしたが、だからと言ってとても目標の達成は不可能と思われる内容だ。
目標とは14年3月期には黒字に転換すると言う計画だが、希望的観測が多すぎる。

注)「総合特別事業計画」のポイントは東電が10年間で3兆円強のコスト削減をする代わりに、金融機関が1兆円の融資、原子力損害賠償支援機構が1兆円の資本投入、そして一般家庭が10.28%の電気料金値上げ(ただし3年間)を飲むと言う内容。

 問題点はいくつもあるのだが、特に以下の2点については問題が大きい。

① 家庭向け電気料金を3年間、10.28%値上げをする。ただし前提条件は13年4月から柏崎刈羽原発7基の再稼動が行われること。

 こんなことが可能なのだろうか。原発の再稼動については安全性の確認が必要だが、そのレベルはますます高くなっていて柏崎市が仮にOKとしてもその周辺の自治体は大反対をしてるし、新潟県も反対だ。
現在原発再開に賛成する自治体は原発労働者多くを抱えている原発がある自治体だけになっている)。

 また政府は10.28%の値上げ申請に対して枝野経済産業相は上げ幅を圧縮する意向を見せており、そうなれば東電の収支改善がさらに遠のく。

注)原発を1基稼動させると燃料費が780億円抑えられる。仮に稼働率70%で計算すると5基が稼動していることになり、その燃料費の圧縮は3900億円になる。反対に言えば稼動しないと3900億円(10年間で約4兆円)の燃料費が収益を圧迫する。

② 廃炉や除染費用については見積もりが不可能なので最低限度の数値に抑えてある。

 しかし実際にはこうした費用は次々に膨らむものであり、数兆円単位で膨らめば今回の支援の枠組みが破綻する。

 原発の再稼動は難しく、廃炉のような後ろ向きの資金がいくら出てくるか分からない状況下で、東電の経営を14年3月期に黒字になるとはとてもおもわれない。

 通常倒産した会社の再生方式は優良資産と不良資産の分離を行い、新会社は優良資産だけを引き継ぐと言う方式がとられる。
ところが今回の支援の枠組みは不良資産と優良資産の分離がされておらず、倒産会社として不良資産を引きづったまま経営を継続させる計画になっている。

 たとえば東電が10年間で3兆3650億円のコスト削減に努力しても、柏崎刈羽原発が稼動しないだけで10年間で約4兆円の経費増になるし、除染・廃炉・賠償金でも数兆円規模での見積もり相違が発生しそうだ。

 今回の「総合事業特別計画」はそうした意味で、14年3月までの暫定的な計画に過ぎない。
2年後に抜本的な改革案を出さざる得なくなるが、今そうした計画を発表すると政治的影響が大きすぎるので大人の判断をしているだけだ。

 結局東電問題は紆余曲折をしながらも最後はJALのように不良資産を切り離しその償却はすべて国庫が行い、残された会社に金融機関が更なる融資を行って再出発する道しかないと思われる。

なお東電の経営問題は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43519325/index.html

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(24.5.11) ギリシャ危機の第2ラウンド ユーロに留まれるかの瀬戸際

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 再びギリシャに端を発するユーロ危機が再発している。
先日行われた総選挙で与党の緊縮財政連合が破れ、放漫財政派が勝利したからだ。
最も勝利と言ってもどこも過半数を取れない中途半端な状況で、過半数の連合が出来ない限り総選挙のやり直しになる。
現状ではやり直しの公算が最も高い。

注)過半数が取れなくても少数与党、その他政党の閣外協力という手もあるが、今回は対立点が明確なので再選挙の公算が大きい。

 ギリシャ人は与党を憎んでいる。
特に前回与党で第一党だった全ギリシャ社会主義運動党PASOK)を憎み、160議席から41議席へ地すべり的敗北をさせた。
社会主義政党で労働者の味方と思っていたのに公務員の首切りと給与カット、それに増税とは許せない」と言う気持ちだ。

 そこで今回はPASOKより急進的で労働者の見方と思われている急進左派連合SYRIZA)に票が集まり13議席から52議席に躍進させた。
SIRIZAの主張は以下のとおりだから国民の支持を集めたのだろう。

① EU・IMF・ECBとの合意の取り消し(再交渉)
② 銀行の国有化
③ 年金と給与の削減の取りやめ

 たしかにギリシャ人としたらそうしたいだろうが、問題は誰がギリシャに金を出して助けるかだ。
メルケル首相サルコジ大統領が薄氷を踏む思いで纏めたギリシャへの第2次支援策1300億ユーロ約13兆円)は、ギリシャの自助努力を前提にしている。
だがギリシャ人は「自助努力なんてトンでもない。金をよこせばいいんだ」と居直っている。

 メルケル首相としてははらわたが煮えくり返る思いだろう。
サルコジは失脚してしまうし、私一人でどうすればいいの。欧州中が駄々っ子ばかりになってきたわ・・・・・・・

 市場はすっかりこの混乱に愛想をつかしユーロがたたき売りされ始めた。再び1ユーロ100円を割り込むのも時間の問題だろう。
さらにヨーロッパだけでなく世界中の株式市場が弱気一色だ。
仕方ない、こうしたときはアメリカ国債と円を持っているに限る
アメリカ国債の利回りは低下し、円はすべての通貨に対して円高になって、日本の輸出産業は完全にアウトだ。

 ギリシャの混乱がこのまま続き、さらにフランスが緊縮財政を放棄し、スペインやイタリア国債が売られればさすがのドイツと言えどもこのヨーロッパの危機を救うことは出来ない。
結局は「それぞれが勝手にやればいい、私は知らない」と言うことになってユーロ圏が崩壊する可能性が出てきた。

 しばらく前に同志社大学教授の浜矩子氏が言っていたユーロが崩壊して第一ユーロと第二ユーロの出現という現象である。
第一ユーロは緊縮財政派のドイツ、オランダ、オーストリア、ベルギーあたりが参加し、第二ユーロは放漫財政派のギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアあたりが参加することになるだろう。
これに伴いECB欧州中央銀行)も二つに分かれざる得ない。

注)浜矩子氏のユーロの二分割案は以下のとおり。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/2417.html

 第二ユーロ国は放漫財政をするとしても財源がなく、国債での資金調達が不可能だから、残された手段は第二ECBによる無尽蔵の通貨供給だけだ。
このインフレ政策で第二ユーロを第一ユーロの半額程度にしたら輸出環境が好転し何とか経済がたて直るだろう。
ただし国民生活はインフレ更新で今の生活レベルは半減する。

 ギリシャ人がいくら居直っても現状の国家倒産状態が好転するわけでないから、結局はEUの第二次支援枠の中で緊縮財政を受け入れて生きるか、EUの支援をけって大インフレの中で生活水準を落とす以外に選択肢はない。

 それにしてもヨーロッパの経済危機は波状的に押し寄せる津波のようで、一旦は収束したと見えても再び大波に襲われてしまい、結局は抜本的な改革を余儀なくされるまで津波が襲ってくるようだ

なおヨーロッパ経済の記事は以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

またギリシャ経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44468201/index.html


下記の柴犬は家に戻りました。ご協力ありがとうございました


(原文)
失踪した犬を探しています。お見受けした方はこのブログのメール機能で連絡していただければ幸いです。

失踪場所、おゆみ野のケーズデンキ周辺。



P1000202_2
柴犬、生後7か月 雄
色は茶
名前は「ふく」と、言いますが、呼んで来たことは一度もありません・
警察と保護センターには連絡致しました。

お手数ですが何か情報ありましたら宜しくお願いいたします。

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(24.5.10) ロシアの人口減少問題 似たもの同士の悩み

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(友達のタムさんが撮った写真

 日本とロシアはそっくりだと言ったら驚くだろうか?
実は間違いなくそっくりな問題が一つある。人口問題だ。
ロシアの人口は1億4千万人であり、日本が1億3千万人だからほとんど人口規模は同じで、しかも両国とも人口減少に悩んでいる。

 ロシアの人口減少が始まったのはソビエト崩壊後の1993年からであり、一方日本の人口が減少しはじめたのは2005年からだからロシアのほうが先輩格だ。
ロシアの人口減少要因は若者がいなくなる少子化だが、日本と異なり高齢化は進んでいない。
高齢者になる前に死亡してしまうからで特に男性の平均寿命は63歳と、日本人の80歳に比較するとひどい若死にだ。

 理由は一般的にはウオッカの飲みすぎとそれに起因する自殺者の多発で、思い余ってゴルバチョフ氏などはウオッカ禁止令を出したほどだが、「ロシアのような厳しい風土に住むとウオッカを浴びるほど飲まないと生きていけない」と言うのがロシア男性の口癖だ。
一方女性は老年になると体中に脂肪を蓄えるから寒さには強いが、それでも平均寿命は74歳で、日本人の女性の86歳に比較すれば早死にだ。

 プーチン大統領は大統領に再任されてからの就任演説で「ロシアの最大の危機は人口減少だ」と力説した。
何しろ合計出生率が1.2前後だから毎年50万人から100万人規模で人口が減少している(日本の場合は1.3前後だからロシアのほうが少子化が進んでいる)。
世界中を睥睨してきたロシア人がこんなに減少していいものだろうかプーチン氏の悩みは尽きない。

 日本では人口減少問題は主として年金を中心とする社会保障問題として意識されているが、ロシアの場合は安全保障問題として意識されている。
兵隊がいなくなって自慢のロシア軍が崩壊しつつあり、一方無理やり兵役をかすと今度は生産人口がいなくなる。
かつて300万人の兵力を誇ったロシア軍は今は100万人に過ぎない。

注)ソビエト崩壊前の人口は約3億人で人口は半減したが、兵力は3分の1になった。現在のロシア軍は非常に弱体化している。

 現在のロシアは人口減少化でも石油と天然ガス等の鉱物資源が高騰しているのでGDPは日本と異なり上昇している。
しかしリーマンショック前の8%~10%の高度成長は終わり、現在は4%台の安定成長に移っている。
そして将来的には少子化の影響でGDPはさらに減少しそうだと言うのがプーチン氏の悩みだ。

 日本程度の人口ではとても13億の中国に対抗できず、極東経済はすでに中国人の商人に握られている。
極東のロシア国境地帯には約1億人の中国人が住んでおり、一方極東のロシア人はたったの600万人だが、ロシア人は極東に住むことを好まず機会があればモスクワ周辺に移動してしまう。
極東とシベリアは過疎化が進み、町や村全体が消滅している。

注)極東の物流経済は、中国の商人が出稼ぎにきて生活物資を供給してくれるのでかろうじて生活が成り立っている。実質的に極東は中国の経済圏になっている。

 プーチン氏はロシア人を増やすために子供政策に力を入れており、ウリアノフスク州をモデル地区にして第2子が生まれると約37万円の報奨金を出していた。
日本の子供手当てが年間16万円程度だから約2倍の大盤振る舞いだ。
NHKのワールド・ウェーブ・トゥナイトでこの模様を放映していたが、報奨金を受領した主人の月収は3万円だったから第2子を産むと自分の年収と同額の報奨金が得られることになっていた。
奥さんが「第3子も生みたいわ」と言っていたがそのとおりだろう。

注)その結果ウリアノフスク州の合計出生率は1.5人に上昇し人口減少が止まったという。

 ロシアの人口問題は日本に比べると老人問題がないだけ対応がし易い。
子供支援問題に集中できるからだが、一方日本人は世界最高レベルの平均寿命で生きながらえるので子供と老人の両方の問題を抱えている。

 それにしてもロシアと日本は似たもの同士だ。
互いに人口減少に悩み、隣国の中国の脅威におびえている。
ロシアは資源大国で日本は技術大国だ。パートナーを組むには最適の関係だが、残念なことに第二次世界大戦の負の遺産を引きづったままで蜜月関係にはなれない。
日本とロシアが手を組めばこうまで中国の脅威にさらされなくても済むのにと残念でならない。

注)ロシア経済に関するの過去の記事は以下のとおり
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2117-a928.html
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat39651891/index.html

また直接ロシアの人口問題を扱った過去の記事は以下のとおり
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/201124.html

 

 

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(24.5.9) 日本最大規模のつくば市を襲った竜巻  ますます竜巻は巨大化する

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 最近の異常気象については驚くことばかりだ。北アルプスでの風雪による高齢者の遭難多発に驚いていたら、今度は茨城県を中心に猛烈な竜巻に襲われた。
家屋が2000棟あまり損壊し死者も1名出ている。
私は巨大な竜巻はアメリカの中西部を襲うもので、日本のような温暖な気候風土の国には関係がないと最近まで思っていたがそうは言っていられなくなった。

 今回の竜巻は風速50m~69mの範囲のF2と呼ばれる竜巻で、規模としては上から4番目だと気象庁は発表した。
F2の条件は被害の状況と風速で判断するもので以下の条件が揃うとF2となる。

① 住宅の屋根が剥ぎ取られる。
② 大木がねじれきられる。
③ 自動車が道から飛ばされる。
④ 列車が横転することがある。
⑤ 風速が50m~69mの範囲

 被害が最も大きかったつくば市北条地区では、まさに①~③の状況になっていたから、F2と私も思ったが、気象庁のレーダー解析では風速が70mを超えていたと言われているので、この場合はF3日本最大規模の竜巻になる可能性もあると言う。

注)竜巻の大きさはシカゴ大学の藤田博士が発案した藤田スケールで計られる。藤田スケールはF5~F0の6段階評価で、F5では家は根こそぎ吹き飛ばされ、F0ではアンテナが折れるレベルになっている。
この被害状況と風速でレベルは決定され、過去日本で最大の竜巻は2006年に北海道で発生したF3だった。


 なぜこれほどまでにひどい竜巻が起こるかというと、地表が温められて空気が軽くなり、一方上空に寒気が張り出してくると上空の重い空気と下の軽い空気が急激に入れ替わりそのときに上昇気流が発生する。
これが積乱雲が発生するメカニズムだが、巨大な積乱雲が発生するときに上昇気流が渦を巻き竜巻になるのだと言う。

 この日のつくば市の気温は26度で6月下旬並みの気温で、一方上空にはマイナス21度の寒気団が張り出していた。
この温度差がポイントで今回は47度だが、40度以上の差があると竜巻が発生すると言う。

注) 幅10km程度の巨大な積乱雲をスーパーセルと言うのだそうだが、今回の積乱雲はこのスーパーセルで日本での発生は今までなかった。

 説明を受ければ「そうだったのか」なんて気持ちにはなるが、なぜこの時期にそうした寒気団が張り出してきたか気になるところだ。
今年の日本上空の気象状況は非常に不安定で3月下旬ごろまで例年になく寒さが続いて桜の開花も2週間程度遅かった。
なにか昔風に言えば「寒い夏がやってきて東北は大飢饉に襲われる」と言う雰囲気だ。

 地球温暖化は地球全体では温暖化が進むものの、個別にはまちまちでアメリカでは異常なほど気温が上がっており、一方日本では気温が下がっている。
日本は東日本大震災でひどい自然の猛威に襲われたばかりだが、今度は竜巻の被害だ。
実際福島から避難してつくば市の雇用促進住宅に住んでいたら、再び災害に見舞われたと言う人がかなりいた。

 何か鴨長明が描く方丈記の世界にだんだんと似てきたようだ

注)方丈記には治承の竜巻の記載がある(以下wikipedia)。

治承4年(1180年)4月、中御門大路と東京極大路の交差点付近(現在の京都松蔭町、京都市歴史資料館の辺りか)で大きな竜巻(長明は「辻風」と記述)が発生した。
風は周囲にあるものをあっという間に飲み込み、家財道具や檜、葺板などが、あたかも冬の木の葉のように宙を舞った。風の通ったあとには、ぺしゃんこに潰れたり、桁や柱だけになった家が残された。
竜巻は市街地を南南西に向かって走り抜け、現在の東本願寺の手前辺りで消滅したものと思われる。


なお地球温暖化に関する記事は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44491343/index.html

 



 

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(24.5.8) オランド氏の勝利とユーロの混乱 再びEUに危機が迫る

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 サルコジ大統領メルケル首相がようやっとのことでまとめた「財政規律を強化する条約」が早くも暗礁に乗り上げようとしている。
6日行われたフランスの大統領選挙で現職のサルコジ氏が敗れ、野党社会党のオランド氏が大統領に就任することが決まったからだ。

注)条約の内容はユーロ加盟国は財政赤字をGDPの0.5%以内に止め、それに違反したら課徴金を科すというもの。すべての加盟国をドイツ並みの健全財政にする条約。なお日本の財政赤字がGDP対比10%程度だから極端に厳しい財政規律といえる。

 オランド氏は選挙公約としてこの「財政規律を強化する条約」を槍玉に挙げて、「財政規律ばかりで成長戦略が存在せず、したがって失業率は改善しない」と言い続けてきた。
そして大統領に就任すればこの欧州規律条約を見直すためメルケル首相と交渉すると言っている。

注)当然のことだがメルケル首相は見直しに応じないと言っている。見直すということは各国に放漫財政を許すことだし、国債で資金調達が出来ない国は結局はドイツに資金援助を求めることになる。

 5年サルコジ氏が大統領に就任した頃はまだ希望に満ちていた。
規制緩和と高額所得者に対する減税で経済は拡大し、失業率は5%に低下する」とサルコジ氏は大見得を切ったが実際はリーマンショックギリシャショックの対応に追われ、公約が守られたのは高額所得者に対する減税だけだった。
これじゃ単なる金持ち優遇じゃないか」若者を中心に怨嗟の声が沸きあがった。
何しろフランスの失業率は10%程度だが、若者に限れば20%だ
大学を出ても職がない状況が続いている。

 したがってサルコジ氏の人気が急落した理由はよく理解できるが、だからと言ってサルコジ氏以外の政策がうまくいくかどうかは相当怪しい。
オランド氏の言う成長戦略なるものが実際は存在しないからだ。

 どれほど成長戦略が難しいか日本の場合を見てみると良く分かる。
日本は1990年ごろのバブル崩壊後まったく成長をしない社会になったが、その間自民党政府は公共投資の増大と金融緩和を繰り返してきた。
2000年代になってリーマンショックが起こるまでは低金利政策円安を誘導し輸出産業で何とか景気を支えていたが(実質で1%から2%程度の成長をしていた)、それもリーマンショックまでで、その後各国が低金利政策を採用すると日本の円は急激に上昇し、輸出産業が崩壊してしまった。

 日本のもう一つの柱である土建業は日本各地に無用のダムや高速道路や飛行場や漁港を赤字財政をものともせず作りまくってきたが、それも金がある間だけで赤字国債が増大するとそれもままならない。
日本はここ20年間、ただひたすら既存産業の保護だけしてきて、気がついてみたら成長産業が何もないことに愕然としている

 実はこのパターンは欧州も同じで規制でがんじがらめにされている欧州経済も既存産業に対する大盤振る舞い以外成長戦略などない。
最も強力なフランスの既存産業は公務員だから結局は公務員を増やそうと言うことになる。

成長戦略だ。公務員を増やして赤字財政を悪化させろ
オランド氏は失業解消のために教員等の公務員を5万人増加させると言っているが、これは財政を無視して公務員を増やす政策だから、ギリシャ政府とさしてかわらない放漫財政政策だ。
さっそく市場はユーロに嫌気をさしてユーロ安と株安が始まっており再びユーロ圏は市場との戦いに明け暮れそうだ。

 オランド氏も大統領になれば現実と向き合わなければならないから、国内向けサービスだけを言い張ることは出来ないが、それでも当初はマニフェストに書いたことを実行したがるだろう。
結局成長しきった経済はドイツの言うように成長ではなく堅実な経済運営をせざる得ないのだが、オランド氏とフランス国民がそのことに気づくまではユーロ圏の経済不安は増幅されるばかりだ。

なおヨーロッパ経済については以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

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(24.5.7) 中高年登山の限界 白馬岳6人パーティーの遭難死

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 今年も春山で中高年齢者の遭難が相次いでいる。特に白馬岳2932m)に登ろうとして小蓮華岳2766m)近くの稜線で遭難した医師のパーティー6名の遭難死は春山の恐ろしさを教えている。

 私も何回か春山登山をしており、この白馬岳にも今から40年ぐらい前の5月の連休期間中に登っている。
私が登ったルートは今回遭難した6人のパーテーのちょうど逆ルートで、白馬から栂池(つがいけ)高原に下りるルートだった。
私が登山したときは6人が遭難した辺りに春山特有のブロック雪崩ダンプカー位の雪の塊が落ちていた)の跡があって、肝を冷やしたものである。

 今回の遭難の原因は天候の急変で4日の午後から白馬岳の稜線では吹雪になっていたと言うから冬山と変わりがない。
春山の登山の難しさは晴れていれば夏山とほとんど同じであり、一方吹雪くと冬山に一変することだ。
したがって春山に登るときは冬山の装備をしていくのが普通で、私も常に冬山装備で春山に登っていた。

 しかし冬山装備はなんと言っても重い。衣類など厚手のものが数枚ほしいし手袋も靴下も2枚履かなければならない。ズボンは厚手でしかも2枚必要だし、アイゼン、ピッケル、スパッツは必須だし、場合によってはテントや寝袋やコンロをしょっていかなくてはならない。
それに高齢者はグルメだから食料もうるさい。

 私が春山登山をしなくなったのはこの装備の重さに耐えられなくなったからで、年をとると20kgを越える荷物はそれだけで体力を消耗させてしまう(私は若い頃は25kg~30kg程度の荷物を背負っていた)。
今回の医師のパーティーの年齢構成は78歳、、75歳、75歳、66歳、63歳、63歳だからどう見ても体力があるとは思われない。
特に75歳以上の人が3名いるが、こうした人が重い冬山の装備をして登ることは体が動かなくなってしまうので最初から無理なのだ。

 新聞記事によると防寒機能のない雨具とその下は夏山程度の薄着で、手袋をしていない人もいたと報道されている。
このため全員低体温症で死亡した。
どの記事を読んでも「軽装登山で軽率だ」との指摘がなされているが、老人になってみれば分かるが軽装登山以外できるはずがない。
本人にしてみれば天候は晴れると思い夏山登山感覚だったのが、急に冬山になってしまい遭難したと言うのが実態だろう。

注)一部になぜ雪洞を掘って避難しなかったかとの報道もあるが、これなどはほとんど冗談の世界だ。雪洞を掘るにはスコップが無ければ不可能だし、掘る作業そのものも大変な体力がいる。老人が雪洞など掘っていたらそれが原因で死んでしまう。

 今日本の山は中高年者のラッシュでどこに行っても今回のパーティーのような老人に出会う。
昔だったら70歳代になれば孫の面倒を見ていたのが普通だが、3000m級の山に登っているのだからなんとも元気だと思うが、これは夏山だけの話で冬山になったらまず無理だ。
春山は夏山と冬山の両方の顔を持っていて、後者の場合は死神に会ったようなものだ。

 
 今回の遭難死は老人登山の限界を教えてくれており、中高年者は今回の遭難を他山の石とすべきで春山を甘く見ないことだ。

(5月10日追加
 その後の報道によると遭難者は防寒用のジャケットやズボンを保持していたという(ただし全員かどうかは分からない)。ただしそうした防寒着をつけることなく凍死をしており、急激な気温の低下に対応できなかったものと思われる。
せっかくの装備もつけられる体力が無ければ無駄でやはり老人登山の限界を示している。


なお過去の遭難に関する記事は以下参照。
・トムラウシは魔性の山

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/21720-6bf2.html
・奥秩父ぶどう沢の三重遭難
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/2283-nihonntere.html

(別件)「おゆみ野四季の道」のカウンター10000を追加しました。

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(24.5.6) ちはら台走友会の箱根合宿 いやはや大変だ!!

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 冗談だと思っていたが本当だった。
ちはら台走友会箱根合宿のことである。昔学生だった頃野球部や柔道部や水泳部に籍をおいていたことがあり、特に夏場に合宿をしてめちゃくちゃに身体を鍛えられたが、この年になって同じことをするとは思わなかった。
走友会ではこの5月の連休に毎年合宿を行っている。本当に合宿なのだ。

 今回の合宿場所は箱根だった。
箱根の仙石原には走友会のメンバーの会社の寮があり、昨年に引き続きこの寮を使わせてもらったが私は始めての参加だった。
寮はかつてその会社の上層部の人が賓客をもてなすために使用していたものだったそうだが、今では社員全員に開放され、さらに社員以外でも社員と一緒であれば利用させてもらえる。
食事も豪華だし寮の温泉からは富士山も見渡すことが出来る絶景のロケーションだ。

 私は合宿と言っても学生とは違うし、もう65歳の老人だから適当に走っておけばいいのだと思っていたがまったく違っていた。
今回の参加者は8名で男性5名女性3名だったが、だれもが実にまじめに走るのだ。
合宿は3日から4日にかけて行われた。
この日日本中に猛烈な低気圧が通過し箱根のあちこちで道路が封鎖されていた。
こんな大雨の日に本当に箱根で走るのかしら」かみさんが心配したほどの荒れた天候でアルプスでは遭難者が続出していたが、幸いにも仙石原には問題なく入ることが出来た。

 初日は箱根ビジターセンターに自動車を置いて金時山のトレイルを予定していたがさすがに雨が強く登山道が荒れていたのでこれは取りやめた。
その代わり芦ノ湖から流れている早川の横に設置されている仙石原サイクリングロードを使用してのトレイルランに変更された。
雨は小降りになっており、片道8km程度だが、あちこち寄り道をしたので20km程度のトレイルランになった。

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  ランナーは習性として走り出すと競争になる。
ちはら台走友会にはもっちゃん吉さんと言う猛者がいて、ランナーズのフルマラソン年齢別100番に、トップ10までは行かないがその次のクラスのレベルの成績を上げている。
だから「なんとしても日本人年齢別で10位以内に入ろう」と練習に余念がない。
特にもっちゃんは走ることにシリアスな考えを強く持っていて手抜きで走ることを許さない。
ランナーは強くならなければいけないし合宿では相応の成果を挙げなければならない」と言う。
えらいことだ。私もあおられて目いっぱいの走りを強要されてしまった。
年寄りなんだから許して頂戴」なんて雰囲気ではない。

 会長の謙さんも飛ばすし、その中に混じって青息吐息になってしまい、寮に帰ってからしばらくソファーで寝込んでいた。

 翌日の朝は天候も回復し青空が出ている。
早朝寮から大涌谷までの登り一本道をダッシュさせられ、帰りは舗装路を箱根駅伝のくだりのイメージでかけ降りた。
朝食後は昨日昇れなかった金時山のトレイルランをするのだから全員タフだ。

 私はトレイルランはとても好きなのだが、合宿となるとそれなりに気合を入れて走らなければならない。
この合宿ですっかりつかれきってしまい家に帰ったらさっさと寝ていた。
翌日も疲労困憊で、しかしまあ大変な合宿だった。

なお、ちはら台走友会の記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44088639/index.html

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(24.5.5) BSドキュメンタリー 癒しロボットで認知症治療 ドイツの現状

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 いやはや驚いてしまった。日本のロボット技術が世界最高であることは知っていたしアシモ君が走ったり踊ったりしているのは知っていたが、癒しロボットのパオが現実の介護に使用されているのは知らなかった。

 癒しロボットのパオ
とは産業技術総合研究所の柴田博士が開発したアザラシ型ロボットで人工知能が内蔵されていてあたかも本物の子供のアザラシのように動き鳴く。
この癒しロボットパオドイツのブレーメンにある認知症患者専門の病院介護のサポート役として導入の実験をしていた。
このドキュメンタリー番組はドイツで2011年に制作されたものである。

 日本でも認知症介護施設でこのアザラシ型ロボットを使用している介護施設はあるようだが、ドイツではもっと本格的にロボットを介護現場に導入しようとしている。
とうとうロボットが本格的に人間とかかわるようになってきたのか・・・・」
鉄腕アトム世代としては感無量だ。

 この介護施設には重症の認知症患者やそれより症状の軽い認知症患者が80名程度療養介護されていたが、特に重傷者になると介護士の働きかけにまったく反応しない。
このため介護士も精神的に疲れてしまって悲観的になることが多いのだそうだが、このアザラシ型のロボットパオがいると、ちょうど患者と介護士の仲介の役割を演じてくれて介護がしやすくなるのだそうだ。

 このロボットの日本名のパオを、ここドイツではドイツ式にオーレという名前が付けられていた。
施設には介護犬も導入されていたが、本物の犬は長時間の介護は無理で2時間程度でお役ごめんになる。人間と同じで介護犬もストレスに弱い。
それにウンチや毛が飛ぶ問題もあってオーレのように充電さえすれば何時間でも介護に携わってくれない。
ロボットは介護士や介護犬や認知症患者と違ってまったくストレスを感じず、いつまでも愛らしく振舞うので仲介役としてはもってこいのようだった。

 この介護ロボットが認知症を改善するかどうかはまだ実験段階で結論は出されていないが、薬を使った実験と違って副作用がないのがいいと開発者の柴田さんが言っていた。
ロボットを使った介護がここまで進んでいたのは驚きだが、この試みは日本の新しい産業芽生えを感じさせた。
特に
人間型やアザラシ型のようなロボットは日本の独壇場と言っていいくらい開発が進んでおり、ドイツのように日本でも積極的に使用すべきだと思う。

注)海外のロボットは機能優先で人間や動物の形をしていない。

 しかし問題はあって、ここでもロボットを介護に入れてはならないとか、ロボットを使用した治療は保険対象ではないとか、そういった規制が存在して特に日本ではせっかくの新産業が花開いていないことだ。
かえってドイツで花開こうとしているのは皮肉だが、どこの国でもいいから積極的に使用してその効果を確認してくれたら日本でも大々的な導入が可能になるだろう。

 日本では新産業が育たず、経済は萎縮の一方だがこのロボット産業には大いに期待が出来そうだ。

なおBS海外ドキュメンタリーシリーズは以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/nkk/index.html

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(24.5.4) 加曾利貝塚訪問 縄文時代最大の貝塚

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 私の住んでいるおゆみ野から直線距離で10km程度の所に加曾利貝塚がある。かつて2回ほど見に行ったことがあるが、最近この貝塚を世界遺産に登録しようとする運動があると聞いてびっくりしてしまった。
あの程度の規模の貝塚で世界遺産の登録が出来るのだろうか」という疑問である。
紹介した毎日新聞の記事では日本最大級の貝塚で縄文時代を代表する遺跡なのだそうだ。

よし、それなら本当に価値ある遺跡かどうかもう一度確認しよう
先日加曾利貝塚まで歩いていってきた。最近はどこに行くのも歩きだから縄文時代人とさして変わらない。

 ここには二つの大きな貝塚があり、北貝塚直径130mの環状型で、一方南貝塚は馬蹄形をした長径170mの貝塚である。
作られた年代が異なっており何世代にわたってここに住居があったが、いちどきに存在した住居の数は数世帯の規模で(20~30人程度)、こうした単位が村を形成していたのだと言う。

 貝塚博物館に入ろうとしたら縄文時代の服装をしたボランティアの案内人が近寄ってきて実に丁寧な説明をしてくれた。
発掘された土器の展示があったが初期の土器は厚手でとてもユニークな装飾が施されており、後期になればなるほど薄手で機能中心の土器になっていた。
初期には土器すらもなにか宗教的崇拝の対象だったが、後期になればなるほど単なる茶碗に変容しているようだ。

 展示品の中で最も驚いたのは漁業用の網で、これはもう現在の網と寸分違わないレベルに到達していた。網の繊維は野に生えている植物からとったものだと言うが現在でも十分使えそうだ。

 説明を聞きながら私が一番不思議に思ったのは、なぜ縄文時代が1万年の永きにわたって継続したかと言うことだった。
1万年とは実に長い。キリストの誕生から見ても2000年しか経っていないのにその5倍だ。
人口は最大でも30万人程度で何回かの増減があったが、おそらく気候変動の影響だろう。

 あまりに縄文時代が長いので土器の形態から6期に分けており、中学生時代縄文早期だとか中期だとか晩期だと教えてもらったが何のことかさっぱり分からなかった。
所詮は縄文式土器の時代だろう・・・・・
私には狩猟と採集の世界が延々と1万年も何も変わらずに続いたと言うイメージで、弥生と縄文を分ける稲作文化狩猟文化のような決定的な違いがないから土器が好きな人以外は縄文の時代区分があやふやになる。

 説明者が「縄文晩期になると貝塚が小さくなって縄文人がいなくなったことが分かる」と説明していたが、私が興味があるのはなぜ縄文人が最終的には東北北海道を含む)と沖縄と言った僻地にしか残らなかったかと言うことだ(DNAの鑑定をすると東北人と沖縄人のDNAは縄文人の特色を残している)。

 北部九州から中国、近畿、そして関東にかけては弥生人が席巻して縄文人を追い出している。
縄文人の一部は弥生人と混血したり山奥に逃げて山人になったり、あるいは弥生人と抗争して死に絶えたのだろう。
なぜ縄文人が弥生人に駆逐されたかの最大の理由は人口問題だと思っている。
縄文時代の狩猟と採集生活では最大でも30万人程度しか人口を養えなかったことに対し、米作集団の弥生人は人口が爆発的に増えたからと思う。
アメリカインディアンと西欧からの移民の増大のような関係だろう。

 特に縄文晩期の人口は10万人程度だったが弥生時代に入って60万人に増加しその後100万単位の人口爆発になった。
縄文晩期になぜ人口が急減したかはよく分からない。
おそらく弥生人に駆逐されたからだと思うが、説明者は「千葉県から東北地方に縄文人が逃げて東北には縄文時代が残った」と言っていた。
しかしこれは当時の交通手段から見てかなり難しく、千葉の縄文時代人は駆逐され、一方東北までは稲作が出来ず弥生人が進出しなかったので縄文人が生き残ったと私は思っている。

 いづれにしろ貝塚の訪問はなかなか面白く古代のロマンを想像するだけで楽しいひと時を過ごせるものだ。

なお郷土史に関する記事は以下にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43139758/index.html

 

 

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(24.5.3) BS歴史館 日本を変えたリーダーたち 会津藩主 保科正之

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 最近の私のお好み番組はこのBS歴史館で、日本を変えたリーダーのシリーズ第一回目が西郷隆盛だったが、二回目に保科正之ほしな まさゆき)が選ばれたのはびっくりした。
一般的に日本人は保科正之を知らない。この番組のキャスターの渡辺真理さんでさえ知らなかったと言っているくらいだからほとんど知名度はないといっていい。

 私は井沢元彦氏の逆説の日本史16 江戸名君編を読んでいたので保科正之のことは知っていたが、今回の放送を見て「これほどの名君だったのか」と驚いた。
保科正之は二代将軍秀忠の子供だが正室お江の子ではない。お江は最近のNHKの大河ドラマに出てきた信長の妹、お市の方の娘でめっぽう気が強く秀忠に側室を認めなかった。
あんた、私の目を盗んで他の女に手を出したら承知しないわよ

 しかし秀忠も男だ。大奥に上がっていた町人の娘で気立ての良いお静に手を付けた。お静が懐妊するとお江に知られるのを恐れた秀忠はそっとお静を気丈で見識の深かった武田信玄の娘の見性院に預けた。
どうかお江の魔手からお静と子供を守ってほしい秀忠も情けない。
その後お江から子供を殺す目的で差し出せとの強い要求が来たが見性院はこれをはねつけ、正之7歳のとき武田家ゆかりの高遠3万石藩主保科正光正之をあずけることにした。

 通常徳川一門松平姓を名乗るのだが、保科正之保科正光が自分を保科家の後継者(正光には子供がなかった)にしてくれたことを感謝し、生涯保科の姓を変えることはしなかった。律儀なのだ。
この保科正之こそが江戸幕府の武断政治から文治政治に変えた最大の立役者で、家康に並んで江戸260年の平和の礎を築いた人であると今回改めて認識した。

 
 保科正之は三代将軍家光に気に入られたが、この腹違いの弟は決して自分が将軍の弟であることをひけらかすことなく、ひたすら臣下として忠勤に励んだからだと言う(家光は家光に逆らった実際の弟を切腹させている)。
その間正之は、高遠3万石から山形20万石、さらに会津23万石に出世した。
保科正之は家光の治世のときは主として藩政改革に取り組んだが、会津を江戸期を通じて最も民生が安定し平和な藩に作り変えた。

 具体的な藩政改革は以下のとおりだった。

① 検地をやり直して農民の負担を軽減させた。それ以前の藩主が過酷な取立てをしていたので領民はびっくりして隠し田を自ら申請したと言う。
一般に税率をあげるとかえって税金が減り、税率を下げると税金が増える)

② 社倉制度(
米備蓄制度)を創設し、冷害が発生すると備蓄していた米を領民に2割の利息で貸し出したが、もし2年続けて冷害が発生すれば借金をチャラにした。
(
東北地方は常時冷害が発生したがこの制度で会津藩では餓死者が出なかった

③ 90歳以上の年寄りには米を与える生涯年金制度を設立した。
これによって会津藩は年寄りを大事にする気風が芽生えた。

④ 他国から来た商人が病気になった場合は無料で医療行為を施した。
このため会津には商人が安心して商取引に訪れた。

⑤ 家臣団は土地を与える地行制でなく米を現物支給する蔵前制に改めた。
これにより家臣団は藩主に忠誠を尽くす機能集団になり一致団結の気風が生まれた。


 こうした地方政治の改革を行い、会津は人口が11万人から幕末には17万人まで増加し、東北きっての大都市にまで発展したと言う。

 だが保科正之が本当の意味で日本史に足跡を残したのは1651年家光が臨終の間際に4代将軍の11歳の家綱の後見人に保科正之を指名してからである。
これ以降保科正之は内閣総理大臣として幕政改革に取り組んだ

 実はこの時期は幕藩体制が武断政治から文治政治に変わる過渡期にあたった。幕府の基礎が固まると今までの戦闘集団としての武士は必要なくなり、官僚組織としての武士に代わる必要があった。
それを強力に推し進めていったのが保科正之で、保科正之の3大改革という。

① 末期養子の禁の緩和

藩主に子供がない場合はその藩は取り潰されたが、藩主が死に際に誰かを養子にすると指定すればその養子を藩主として幕府が認めるという制度。
実際にも藩主が急死することが多く、しかも後継者がいない場合が多くあり(藩主が特に若い場合)藩取り潰しになっていたが、届出さえあれば末期養子として認めることにした。
これによって武士の浪人化が防がれ社会が安定した。
由井正雪の乱の3ヵ月後に発布している

② 大名証人制の一部緩和

それまでは大名の正室と嫡男、および家老の正室と嫡男を江戸に住まわせ人質としていたが、このうち家老の証人を不要としたもの。
人質は藩主の正室と嫡男だけで十分と緩和した。

③ 殉死の禁止

それまでは殉死が当たり前に行われており、家光の老中堀田正盛、安部重次も殉死している。
これは主君に対する忠義を意味しているが今後は江戸幕府に対する忠義を求めることに変え、有能な武士が殉死するのを防いだ。

 こうした3大改革は時代の推移を的確に把握して実施したもので、多くの武士集団から高く評価された。

 さらに保科正之が本領を発揮したのは日本最大の大火10万人の死者を出し、これに匹敵するのは関東大震災東京空襲ぐらいといわれる明暦の大火の対応である。

 このとき保科正之は信じられないようなリスク管理を行った。東北大震災でパニックに陥った菅首相とは雲泥の差がある。

① 将軍家綱を江戸城から避難させると言う案をけって、江戸城内に災害対策本部を設置し将軍が最高責任者として災害対策に当たらせた。この時江戸城の天守閣が焼け落ちている(責任者があちこち動き回るようでは対策にならない)。

② 浅草にあった米倉庫を開放し「米蔵の米取り放題」と布告した。焼け出されていた江戸市民はこの浅草に集まり米蔵を火災から守るとともに緊急物質を手に入れることが出来た。餓死者を出さない緊急措置といえる。

③ 災害復興費としてご金蔵にあった16万両を一気に放出し、火災から強い都市の建設に取り掛かった。上野広小路はこのときに出来た道路で火事の飛び火を防ぐ目的で作った。
また隅田川に新たに両国橋を建設したが、これは逃げ遅れた江戸市民が隅田川に落ちて多く溺死したことに対する対応であった。
それまでの幕府政権は川にはなるべく橋をかけないようにしていた

④ さらに江戸幕府の象徴であった天守閣の再建は無用な公共工事だといって取りやめさせた。ヤンバダムを復活した今の民主党政権に聞かせてやりたい決断だ。
その後江戸ではしばしば火災が発生したが、この明暦の火災のような大災害に及ばなかったのはこの広小路と両国橋の成果である。

 聞いていて驚いてしまった。今回のゲストは漫画家の黒鉄ヒロシ氏や「武士の家計簿」を書いた磯田准教授たちだったが、保科正之を絶賛し黒鉄ヒロシ氏などは感動して声を詰まらせていた。
私も思わず保科正之東日本大震災のときの総理であってくれたらどんなに日本人は助かったことかと思ったほどだ。
保科正之は実に魅力にあふれたリーダーだが、その功を誇らず59歳で引退するときに自らの事績の記録はすべて焼却してしまった。
すべての功績を将軍家綱のものとしたのである。
確かに西郷隆盛に比すべき人材だ。

なお日本史に関する記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat47308511/index.html
 

 

 

 

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(24.5.2) BS世界のドキュメンタリー 絶食療法の科学

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 前にNHKで放送された番組で食事制限をするとサーチュインという長生き遺伝子がONになって長生きできるようになると言う番組があった。
長生きしたければ飽食をするな」と言う番組で私もずいぶん影響を受けたが、今回のドキュメンタリーは2011年フランスで製作された番組で、内容はもっとラジカルで「絶食をすると病気が治る」という番組だった。

注)サーチュイン遺伝子に関する記事は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/23614.html


  この絶食の研究は旧ソ連40年以上も前から行ってきたのだが、実際は食事を拒否する精神病患者に手を焼いた医者が、「もういい、ほっとけ」と見放したことに始まる。
旧ソ連の医療で特に精神病患者に対する医療行為はひどいもので電気ショックなどを平気でやっていたが、重度の食事を拒否した患者がその後急回復し通常の生活に戻れたことに担当の精神科医が注目した。

 その後系統的に8000人の精神病患者に絶食療法を施したところ、約70%患者で改善が見られ、その後も47%の患者の経過が良好なままだった。
ロシア科学アカデミーが本当に絶食が病気治療に効果があるのか追試をして、その結果、精神疾患、気管支疾患、心臓疾患、胃腸疾患、内分泌疾患、消化器疾患、関節疾患等に効果があることが確認されたと言う。

 私などでも胃腸消化器が何か変だとしばらく何も食べなければ直るから胃腸疾患消火器疾患はそうだろうと納得いくし、過食すると精神がいらいらするから精神疾患にも効きそうだと言う感じはする。
だが気管支疾患心臓疾患まで効果があると言うのが良く分からない。
医学的な説明では飢餓になるとホルモンの分泌が変わり自己調節機能が働きだすからだそうだ。

 そもそも人間は飢餓であった期間が圧倒的に長く、飽食になったのはせいぜい産業革命以来のここ2百年程度に過ぎない(ただし古代ローマのローマ人は飽食だった)。
したがって本来は飢餓の状態でホルモンのバランスが取れていたのが、すっかり飽食になりバランスが崩れてしまった。
今の状態が異常でこの異常な状態を元に戻してやれば、本来人間が持っている自己調節機能が働くのだという。

 たとえばなぜ精神病患者が回復するかと言うと、飢餓になるとセロトニンという精神を安定させる物質が出て、暴力的な態度やうつ状態を改善させるからだと言う。
どうやら人類は飢餓になってもすぐにパニックに陥らないよう落ち着かせるためにセロトニンが出るみたいだ。

 絶食療法で面白かったのは人類はどの程度絶食に耐えられるかの研究だったが、大体40日程度は水だけで生きられると言う。
日本の事例でも六甲山で遭難した西宮市の職員が24日間水以外はほとんど食べないで生還した事例があった。
人間を使っての飢餓実験は(死んでしまったら大変だから)無理だが、南極の皇帝ペンギンの雄の観察では冬何も食べずに4ヶ月間卵を抱いていることが知られている(プラネットアースで放映していた)。
ラットも同じく4ヶ月程度は何も食べなくても生きながらえるのだそうだ。

 この研究の結果から人間も大体4ヶ月程度は生きながられそうだが、このメカニズムは脂質を使って生き延びることだそうだ(熊の冬眠と同じ)。
血液に含まれるブドウ糖などは1日程度しか持たないので、次は筋肉を分解してブドウ糖を作るのだが、心臓も筋肉なのでこれも限界がある(心臓が働かなくなる)。
あとは体内に15kg程度(身長170cm、体重70kgの人の場合)ある脂質を分解して生きていればまず40日は確実に生きられるのだそうだ。

注)絶食療法で使うエネルギーはたんぱく質が4%、脂質が96%だという。なお超長距離走を行うと使うエネルギーはほとんどが脂質であることが知られており、走った後は体脂肪率が極度に下がっている。

 最も実際にこの絶食療法を行うと3日目ぐらいにアシドーシスという麻薬患者が麻薬が切れたときのような症状が出て病状が悪化するが、大抵の場合は1日程度でこのアシドーシスはおさまり、その後はまったく何も食べなくても平気だと言う。
このアシドーシスを乗り切るためには専門家の指導が必要で自分だけで絶食療法を行うのは危険だと番組では警告していた。

 絶食擬似絶食は先に見たサーチュイン遺伝子をONにして長生きしたり、またホルモンのバランスを整えて私が悩んでいる胃腸病に効果がありそうだ。
よしそれならがんばるぞ
数日前から食事を減らして間食はまったくしないようにした。
朝はパン1枚と紅茶、昼は牛乳だけ、夜だけまともな食事をしている。
おかげで頬は削げ落ちて、腹はぺちゃんこになっている。
お父さん、すこしやせすぎよ」娘から注意されてしまった。

 果たしてこれで効果があるだろうか。絶食療法では最低2週間、場合によっては3週間程度の絶食が必要だから、私の擬似絶食療法は5月いっぱい食事制限を続けてみることにした。

なお、老化対策にかかる記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44501378/index.html

 

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(24.5.1) NHKスペシャル いま年金に何が AIJ事件

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 さすがNHKだと感心した。AIJ事件の詳細についてよく調べている。
AIJ事件とは厚生年金基金を舞台にした投資顧問会社AIJの詐欺事件のことだが、社長の浅川氏はもちろん「詐欺などするつもりはなかった」と国会の証人喚問で否定している。

 そもそも厚生年金基金というものを普通の人はほとんど知らない。これは企業年金厚生年金のハーフのような基金で、政府に代わって民間団体が厚生年金と自から積み立てている企業年金を運用するシステムである。

注)なおこのシステムが出来上がった詳細は以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-8d0c.html

 私はほとんどの基金が企業年金が主で厚生年金の運用は従だと思っていたが、今回AIJの餌食になったほとんどの中小企業団体の基金厚生年金が主になっていたのには驚いた。
こうした運用は2000年以前は黒字の運用をしていたが、ITバブルの崩壊2000年、01年、03年と3年間にわたって利回りがマイナスになってしまった。
一方受給者には5.5%の利回りで年金を支払うことを約束していたため、当然のことに積立金が減少し始めた。
その後サブプライムローンバブルで一旦持ち直したが、再びリーマンショックでマイナスの利回りに落ち込んでいる。

 この様な情勢下で年金基金の担当者は血眼になって高利回りを約束する金融機関やヘッジファンドを捜し求めたが、そこに目を付けたのがAIJだった。
AIJリーマンショック後も8%前後の高利回りを実現していたと虚偽の数字を用いて勧誘していたからだ。

 実際のAIJの経営は火の車で、2003年以降負けっぱなしで赤字幅は06年250億円、08年200億円、10年501億円の損失を出していて、集めた年金資金1500億円をほとんど食いつぶしていた。
なぜこれほど浅川社長投資投機)に失敗し続けたのだろうか。
いくらなんでも常に負けということはないだろう。マージャンだってたまには勝つものだ・・・・・・・・・」とても不思議な気持ちがする。
これほどの無残な結果は浅川社長が本当の意味で無能だったか、あるいは資金を海外のどこかにそっと隠しているかどちらかだが、私は後者の可能性があると思っているNHKの番組では単に負け続けたと言うことになっていた)。

 損失拡大のメカニズムはAIJが主として取り扱った商品が日本国債の先物取引で、この先物取引では元手の数倍のレバレッジを効かせて取引を行うことが出来ることにある。
このレバレッジが何倍かはその企業の信用次第で決まるが、通常国内の投資顧問会社のレバレッジはそれほど高くない。

 そこでAIJレバレッジを最大限に効かすために国外からの取引を偽装した。年金資金から入手した資金をケイマン諸島に送り、そこからさらに香港に送って、香港の企業がシンガポールの証券会社に日本国債の先物取引を委託した形にした
こうすればどこにもAIJが取引しているとは思われない。
さらになぜシンガポールの証券会社かというと、この証券会社は数百倍のレバレッジをAIJに認めていたからだと言う。
AIJの国債先物取引の金額は18兆円規模だった。総額で1500億円の資金を18兆円で運用していたわけだ。

 浅川社長の弁では「今まで負けた分を一気に取り戻すために数百倍のレバレッジが必要だった」と言うことだが、予想は完全に裏目に出て2010年500億円規模の損失が発生した。
理由は逆張りに失敗したからだが、浅川社長は国債利回りがこの時期低下すると読んだものの実際は上昇し(この年国債先物は上昇傾向が続き、10月頃からようやく下がった)、投機に失敗したのだという。

 浅川社長はこうした失敗を隠してあたかもAIJが利益を出し続けていたとして年金基金の勧誘をし続け、さらに損失を拡大したことになっている。
私はNHKの調査に敬意を払うが、浅川氏が常に投機で負け続けたと言う説明はどうしても納得がいかない。
そんなに浅川氏は無能なのだろうか・・・・これでは私並みの投資センスだ・・・

 元大手証券会社やり手証券マンが一度も勝ことなく市場で敗退し続けAIJに多大の損失を残したと言う説明はどこかおかしい。
やはり浅川社長は、今回AIJをつぶした後再起を図るための資金ケイマン諸島香港に隠しており、AIJの赤字は年金資金から返還請求を受けないための偽装だと私には思われる。

なお年金問題については以下に記事をまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat48782298/index.html

またAIJについて過去に記載した記事は以下のとおりです。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/aij/index.html




 

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