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(24.4.29) ジャック・アタリ氏の提案 如何に市場を制御するか

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 ジャック・アタリ氏といえば最近NHKのプロジェクト・ウィズダムにしばしば登場し、世界の知性の一人として紹介されているフランスの経済学者である。このアタリ氏が毎日新聞に投稿した「ソマリア化する世界」と言う一文は非常に興味深い内容だった。

 氏によれば、現在の市場経済はまったくソマリヤと同じで市場を制御するルールも管理する主体もないという
市場のプレーヤーは主としてヘッジファンドだが、ソマリヤの海賊と同様にやりたい放題で世界経済のならず者だ。

 氏は「民主主義を伴わない市場のグローバル化はソマリヤと同じだ」と言い、この「グローバルな世界に何とか世界規模で手綱を付けないとますますヘッジファンドは凶暴になる」と言う。

 確かにそのとおりだが、だが一体誰がヘッジファンド民主主義を教えるのだろうか。

 氏の提案は国連の強化で、国連に武力と資金力を持たせようと言うものだ。
武力とはNATO軍を再編成しそこにロシアと中国と日本を参加させて、新国連軍にすると言う提案である。
武力なき国連はまったく張子の虎で、シリアのアサド政権の強権政治を誰も止めることが出来ない。
実際に軍隊を持っているアメリカNATOも軍事力でアサド政権を崩壊しようとはしない。
そのためアナン国連特使がアサド大統領と約束した停戦はもうすっかり破られて、相変わらず国民の圧殺が続いている。

注)なおなぜアメリカやNATOがシリアに対して軍事行動をしないのかの理由は以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-5855.html


資金力についてはIMFを国連の配下に置こうというもので、現在アメリカの実質的支配にあるIMFを世界に解放しようと言う提案である。
アメリカにとっては金融覇権の要を国連に移譲することになるのでおいそれとは同意できないが、中国やロシアの拠出金が増大すれば、アメリカだけの意思でIMFが運営できなくなるのは時間の問題だ

 こうして軍事力と資金力を国連に持たせて、世界の金融ルールを国連主導で締結しようと言うのがアタリ氏の提案だった。

 
リーマン・ショック以降の世界をみていると、市場は制御されることなくひたすら利益確保に走っており、だれもヘッジファンドと言う私的な怪物を制御できない。
だがヘッジファンドをここまでのさばらせている原因は皮肉にも各国の金融緩和策である。

 政治家は国家財政が破綻した責任をすべて中央銀行に押し付け、金融緩和とインフレ政策をとることを求めている(財政が破綻しているため)。
欧州中央銀行は100兆円規模の資金を金融機関にばら撒き、日本銀行は基金を70兆円に拡大した。
アメリカのFRBは価値のないサブプライムローン債権を担保に湯水のように資金を市場にばら撒いている。
そしてしこの資金は日本でもヨーロッパでもアメリカでも企業投資に向けられることなく、すぐさまヘッジファンドの銀行口座に振り込まれ、その資金で需要が見込まれる石油や鉄鉱石や最近では漢方薬のマネーゲームに使用されている。

注)日本の実情を見ても分かるように日本国内には投資機会はない。したがっていくら金融を緩和しても日本経済は上向かない。

金はいくらでも印刷するから、誰でもいいからこれを使ってインフレを起こしてくれ」これが経済政策だろうか。
確かに石油価格は上がり、天然ガス鉄鉱石食料も、今では漢方薬までも投資対象になり輸入価格が上がるので日本経済はインフレ体質になってきた。
希少資源を持っている国は輸入価格の上昇を輸出価格に転嫁できるが、日本のように資源小国はまったくのピンチだ。

 火力発電用の天然ガスの価格上昇を東京電力は消費者に10%UPして転嫁すると言う。
日本の金融緩和策は日本経済の成長にはまったく役に立たず、ただヘッジファンドの投機をますます増徴させ、輸入価格のアップと言う形で国民生活を苦しめている

 思い出してほしい。日本はバブル崩壊後何をやっても駄目だったし、EUも(ドイツをのぞいて)リーマン・ショック後は日本病に完全にかかっている。
なぜ日本とEUが経済成長から取り残されているかと言うと、新たな成長産業を持っていないからだ。
日本は輸出産業土建業で持ってきた国だが、円高で輸出産業は崩壊し、財政危機で公共投資が圧縮されて土建業も崩壊した。それに代わる産業は育っていない。

注)なぜドイツ経済だけが好調なのかは以下参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/2448-4d47.html


 アメリカでは不動産市場が長期低迷しているが、IT産業のアップルががんばっているため資金がIT産業の株式に流れ込んで株バブル状態だ。
アメリカ人は貯蓄を株式で運用しているのでこの株バブルで消費意欲がひところより沸いており、景気回復基調にあると言われている。
しかしその原因はヘッジファンドに流れた資金が株式市場に流れているに過ぎない。

 ジャック・アタリ氏の言うようにグローバルな経済をローカルな国家が制御できないでいる。
国家が苦し紛れに中央銀行に金を印刷させているため、金は湯水のようにあるがそれを使用しているのはヘッジファンドと言う怪物でこちらはグローバルに動き回っている。
1%が99%を搾取している」世界では、誰もヘッジファンドを止めることは出来ず、モンスターは更なるモンスターになっている。

 
 アタリ氏の言う国連に力を持たせる案は確かに魅力的だが現実性という点では残念ながら悲観的だ。
実際に軍事力も資金力も握っていて、さらにヘッジファンド(実際はアメリカの金融機関の別働隊を実質的に抱えているアメリカがおいそれと自分の覇権を手放すとはおもわれない。
日本とEUはヘッジファンドの餌食になってしまった
そしてアメリカが自国のヘッジファンドの餌食になり、ヘッジファンドと言うエイリアンによって腹を内部から食いちぎられて世界に助けを求めるまで、この不安定な世界情勢は続くのだろう。

なおプロジェクト・ウィズダムのシリーズは以下にまとめてあります。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/nhk_4/index.html

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