« (24.4.9) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか ヨーロッパ編 | トップページ | (24.4.11) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか アメリカ編 »

(24.4.10) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか アジア編

Dsc01945

 ワールド・ウェーブ・トゥナイト
が特集を組んで放送した「世界経済は危機を脱出したのか」のアジア編は「世界を牽引できるか」がテーマだった。
リーマンショック後の世界経済はアジアの一人勝ちのような様相で、特に中国経済の発展が世界の牽引役になってきた。

 問題はこの牽引役だった中国経済にかげりが見え始め、温家宝首相は全人代で本年度のGDP成長率の目標を7.5%に引き下げた。
従来8%の成長がないと中国人民に失業問題等が発生するので、8%が最低目標だと言っていたのが嘘のようだ。

 実際中国経済を見ていると多くのひずみが発生しており、とてもこのままの成長を続けられないことが分かる。
特に大きな問題は労働力不足農民工が安い賃金で働かなくなったのが大きい。
番組では正社員の確保ができなくなった中小企業人材派遣会社から短期の派遣労働者を受け入れている様子を放映していた。

 農民工としては企業が倒産して賃金を踏み倒されるのが怖いので(中国では企業主の夜逃げが日常的に起こる)、確実な賃金を得るのが目的で派遣労働者になっている。
派遣会社がきっちりと賃金を払ってくれるからだ。
さらに派遣会社が企業と賃金交渉をしてくれるのであたかも組合交渉のような形になり、最近の労働力不足を反映して昨年度より20%賃金は上昇している。

 もはやかつてのような低賃金だけを武器にした企業経営は成り立たないため、中国政府は地方政府に産業構造の転換を求めて、高付加価値企業の誘致をするように指示を出している。
江蘇省丹陽市では特に日本の中小企業の誘致に熱心になっていた。

 日本では輸出産業が崩壊しその子会社や関連会社は国内の仕事が加速度的になくなり国内で存立できなくなっている。
しかしこうした中小企業は今までの日本経済を支えてきたバックボーンであり技術力は抜群だ。

 そうした日本の中小企業(特に自動車部品メーカー)を誘致するための工場団地を建設し、そこの管理運営会社の社長に日本人をすえて、その知恵をかりていたのには驚いた。
そこまでやるのかよ」と言う感じだ。
工場はレンタル方式で、この6月までに進出を決めれば3年間はレンタル料を無料にし、さらに仕入・配送は管理運営会社が共同で行うと言うのだから日本の中小企業にとっては願ってもない話だろう。

 もしこうした産業構造の転換に成功すればなお中国の輸出産業はかなりの期間成長を維持できそうだ。
国内では不動産バブルが崩壊し、物価高は解消されず、公害問題は国民の健康を脅かしているが、日本の中小企業の力を借りて立て直そうと言うのだから中国はしたたかだ。

 一方で現在生産拠点としてもっとも注目を浴びているのが、民主化を推し進めてアメリカ等の制裁解除を目前にしたミャンマーである。

 ミャンマーは人口6000万人、賃金水準は中国の約3分の1だから中国に進出して賃金上昇に悩んできる企業にとっては夢のような場所だ。
性格は中国人と比較してはるかに温厚だし、日本に対して「歴史の反省を求める」なんていう人はいないし、教育水準は相応に高い。

 このミャンマーアメリカとの雪解けが急激に進んだのはアメリカとミャンマー相互の理由による。
アメリカにとって21世紀最大の仮想敵国は中国で、かつてのソビエト包囲網と同様に中国包囲網を形成したかったが、今までは中東のイラクアフガン問題で手一杯だった。

 ここにきてようやくイラクやアフガンからの撤退が始まり、今まで手をこまねいていたアジア政策を強化する余裕ができたが、もっとも緊急な課題はミャンマーだった。
ここは経済制裁を行っている間にすっかり中国の植民地のようになってしまい、軍事的にはインド洋を中国が抑えてインドを脅かす拠点になっている(中国がインド洋に進出してくると中東の石油ルートを脅かされる)。
この劣勢をどうにかして挽回する必要があった。

 一方ミャンマーの事情はあまりに中国の影響力が大きくあたかもチベットウイグルと同じような中国の完全支配下に置かれそうになっていることだ。
しかも中国人は権力志向者が多く、ミャンマー人を蔑視してあごで使う。
これではわが国の主権が脅かされる。ここはアウン・サン・スーチーさんと和解して、アメリカの経済制裁を解除してもらおう

 ミャンマーとアメリカはひそかに協議を開始し、スーチーさんの政治参画を条件に手を握った。
スーチーさんもアメリカの説得に応じたので補欠選挙は予想どおりスーチーさん率いるNLDが圧勝し(45議席中43議席を獲得)、制裁解除の条件が整った。

注)なおミャンマーの国会議員の総数は上院224、下院440.

 玄葉外務大臣クリントン国務長官のミャンマー訪問の後を受けてミャンマーに出向きODAの再開を約束したのだが、これは明らかにできレースと言える。
アメリカが制裁解除の地ならしをするから、ミャンマーのインフラは日本の資金で整備せよと言うことである。
アメリカにとってはミャンマーは軍事面で中国の覇権を抑える重要拠点だし、日本にとっては日本国内で崩壊した輸出産業建て直しの拠点になるので利益が一致した。

注)現在は中国や韓国企業が積極的に進出しているが、これを日本の輸出産業の基地に変えるのが日本の戦略でアメリカが後押しをするということ。
なおなぜアメリカが日本の後押しをしているかというと、日本の輸出産業が崩壊して日本はあまりに非弱になってしまい、パートナーとしての役割を演じられなくなっているため。
あまりに弱い日本は戦略的な同盟関係を維持できない。


 こうして中国の植民地支配から逃れたいミャンマー、中国の軍事力がインド洋に及ぶのを防ぎたいアメリカ、輸出産業崩壊を立て直したい日本の3者の思惑が一致して、ミャンマーの制裁解除が始まった。

 アジアは世界を牽引できるか。ヨーロッパ、日本、アメリカといった先進国経済はすでに拡大の極点に達している。

注)ただしアメリカはIT産業でなお成長余力を持っている

 一方でミャンマーのような貧しい国は成長余力が十分すぎるほどあり、日本の資本が入り込めば中国のような急成長は間違いないだろう。
中国自身は今後も成長するとしても中成長の段階に入ってきたので、生産拠点としては多くを望めない。
これからはミャンマーバングラディッシュのような国をテイクオフさせるのが一番効率的だ。

 私の正直な印象は西欧や日本はだからといってこれ以上の成長は望めず今貧しい国がそこそこに成長すると言うところまでではないだろうか。

なお、中国経済については以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html

また、ミャンマー経済についても以下に纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat47221757/index.html

|

« (24.4.9) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか ヨーロッパ編 | トップページ | (24.4.11) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか アメリカ編 »

評論 世界経済 ミャンマー経済」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (24.4.9) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか ヨーロッパ編 | トップページ | (24.4.11) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか アメリカ編 »