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(24.4.9) ワールド・ウェーブ・スペシャル 世界経済は危機を脱出したのか ヨーロッパ編

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 ワールド・ウェーブ・トゥナイトが特集を組んで放送した「世界経済は危機を脱出したのか」はなかなか興味ある番組だった。
番組は3部構成になっていて、①広がる域内格差 ヨーロッパ、②景気回復は本物か アメリカ、③世界を牽引できるか アジア、となっている。

 このブログもそれぞれについて記事を書くことにするが、最初の①広がる域内格差ポルトガルドイツの例を挙げていた。
南欧と北欧に地域間格差があり、特にギリシャの例は日本にも良く知られているがポルトガルについてはあまり知られていない。

 ポルトガルもご他聞にもれず財政再建の只中にあり、増税と社会保障費の削減でGDPは低下の一途をたどっている。
21世紀に入ってからはGDPはまったく伸びず、本年度の見込みは▲3.4%失業率は15%程度若者だけで言えば50%近くになっている。
また貿易もまったく振るわず経常収支は90年代の半ばから悪化の一途だ。
このためポルトガルでは職を求める若者を中心にポルトガル国内から脱出し、旧植民地のアンゴラブラジルに職を求めて移住している。

注)ポルトガルの実質GDPの推移は以下参照
http://ecodb.net/country/PT/imf_gdp.html#index01
  経常収支の推移は以下参照
http://ecodb.net/country/PT/imf_bca.html#index01

 アンゴラは中央アフリカの小さな国だが石油とダイヤモンドの産出国で中東のカタールのようなイメージの国だ。
治安状況は極度に悪いが石油や天然資源の採掘作業員の需要があり、ポルトガルの賃金の2~4倍の収入を得ることができる。
失業したポルトガルの特に技術を持たないブルーカラーの格好の働き口になっているらしい。

 一方ブラジルは押しも押されぬ新興国の一員であり、ワールド・カップオリンピックを控えて東京オリンピックの前の日本のような活況を呈している。
経済が高度化しているが一方で金融・保険・経理・法律・医者といった専門家がブラジル国内では十分供給ができず、これがポルトガル人のエリート層に格好の職場を提供していた
番組に出てきていた弁護士の女性は「国を思い出すことはない」と言い切っており、すっかりブラジル人になりきっていた。

 母国ポルトガルは金融政策と財政政策のハザマで呻吟しており、国債の信頼を得るためには財政再建が必要だし、一方財政再建をすればするほど経済は失速してしまう。
国内は失業者であふれかえっているため、コエーリョ首相は「職がなければアンゴラやブラジルなどポルトガル語が通じる国で職を求めるべきだ」と国内での職場の創設を諦めてしまった。

注)旧植民地で職を求めるのは日本でも同じで韓国や台湾の大手IT企業に日本の大手企業にいた技術者が職を求めて移動している。

 一方で好調な経済状況なのはドイツだ。大手自動車産業は過去最高益をあげ、フォルクスワーゲントヨタを抜いて世界第2位の自動車メーカーになった。
失業率も低下しヨーロッパではまれな5.7%程度(通常は10%程度が普通になって若者の雇用も生まれている。

 こうした好調の最大の原因はユーロ安である。リーマンショック前まで170円相当していたユーロが100円程度まで低下したのだから、4割もドイツ製品は安価になった(韓国が輸出市場で席巻しているのと同じ理由)。
今ドイツ製品は世界中に売れまくっている。

 元々ドイツは日本と同じで製造業に特化した国作りをしてきたが、東西両ドイツの統合後90年代を通じて国際収支はマイナスだった。
東ドイツ経済の重石が取れずドイツは西欧の病人とまで言われていたものだ。

注)ドイツの経常収支の推移は以下参照
http://ecodb.net/country/DE/imf_bca.html#index01

 しかしユーロ圏(1999年)ができてからのドイツ経済は順調そのものになった。通貨が共通になって市場が拡大したために元々強かった製造業が息を吹き返し、他のユーロ諸国の製造業を駆逐してドイツの一人勝ちの様相を呈した。
もっとも通貨ユーロは高めに推移したため、ドイツの強さはユーロ域内での強さであって、域外については日本と同様ユーロ高に悩まされていた

 このためドイツではさまざまな製造業の優遇策をとった。

① 法人税率を40%から15%に引き下げ
② 企業の社会保障費負担の軽減
③ 組合との特別な賃金協定(好景気のときに資金を蓄え、不況時にはそれを賃金に充当して雇用を確保する)
④ 低賃金労働者の技術習得策


 こうした措置は構造改革といわれたが、その最大のポイントはドイツ製造業をドイツ国内にとどめて雇用を確保し失業率の増加を抑えることにあった。
ほっておくとドイツ企業が他の賃金の安いユーロ諸国やEU域内に工場を移転して、企業としては高収益だがドイツ人労働者は貧困に陥るからである。

 しかし何が幸いするかわからない。リーマンショックでEU諸国も大きな打撃を受け当然ドイツ経済も低迷したが、ユーロ安が幸いしドイツ経済は急回復した。
急にドイツ製品は4割も安価になり、かつ構造改革で法人税が15%に低減していたためドイツが再び生産拠点として復活したからだ。

 現在のドイツは順風漫歩だ。南欧諸国から見たら自分たちの職を奪ってドイツだけが繁栄しているように見える。
そのためギリシャポルトガルスペインが財政危機に陥るたびにドイツに支援の要請が来る。
ドイツの繁栄はわれわれの犠牲の賜物だ

注)ドイツの実質GDPの推移は以下参照
http://ecodb.net/country/DE/imf_gdp.html#index01


 確かにドイツがマルクのままだったら日本と同様のマルク高に悩まされて国内産業は空洞化しただろう。
しかし幸いに通貨はユーロでユーロ圏の財政危機によりユーロ安が定着している。
ユーロは弱いがドイツ経済は強い。
このためドイツは貿易収支をいつまでも黒字のままでいられる。
強い国内経済と通貨安と言う輸出産業にとってばら色のような状況だ。

 これをNHKの特集は「広がる域内格差」と呼んだが、ドイツはユーロゆえに繁栄している以上、他のユーロ圏の財政危機を今後とも救い続けなくてはならないと言う繁栄のジレンマに陥っている。

なおヨーロッパ経済については以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

またポルトガル経済について23年はじめにまとめた記事があります。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/23115-b2fa.html

 

 
 

 
 

 

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