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(24.4.26) 漢方バブルと伝統医療の覇権争い クローズアップ現代

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 とうとう漢方医療までバブルが始まった。クローズアップ現代が報じたところによると、漢方医療の原料である生薬しょうやく)の値段がここ10年で約3倍になり、特にこの2年間程度の値上がりはすさまじいものがあると言う。
生産国は主として中国だが、対ヨーロッパに対する輸出が11年度対前年比で86%増加、対アメリカが67%の増加になっている。

 原因は漢方薬の効果が見直され西欧やアメリカでサプリメント等に大量の生薬が配合され始めたからだと言うが、この説明をまともに受け取るわけには行かない。
現在世界的に資金がありあまっており、ヨーロッパもアメリカも日本も歴史的規模で金融緩和策を行っている。
こうした資金は少しでも需要が増大するところに集中的に集まり、それが金であろうが石油であろうが、また漢方薬であろうが何でもかまわない。

 特に漢方薬については今後確実に需要増が見込まれるために格好の投資対象先になっている。
最大の理由は当の中国が中医学中国では漢方医学をこう呼んでいる)による医療を、西洋医学と並んだ近代医学と位置づけ、政府が大々的に支援を始めたからだ。
漢方薬は西洋医学の医薬品に比較して元々安価木の根や皮を配合して作るため)だったが、さらに漢方薬を保険対象にしたため患者が中医学の病院に押し寄せるようになった

 中国政府としては医療費の削減と、元々生薬は中国産なので国内生産の活性化にも役立ち一石二鳥の効果を挙げている。
さらにこのような中医学の隆盛にともなって、世界の漢方医学の標準化を中国主導で行い、生薬やその配合法、および治療法までを中国方式にしようと動き出している。
国内市場の増加に伴いさらに世界に打って出ようとの戦略だ。

 こうした中国の動きに対して日本の漢方医療は完全に劣勢にたたされていると言う。
日本では漢方医学は西洋医学の補助的な位置づけであり、通常の医師が必要と認めれば漢方薬を処方する。
たとえば高知大学付属病院では肝臓手術のあと必ず漢方薬の大建中湯という漢方薬を処方するが、この効果は腸閉塞の予防で入院日数が平均で3.5日短縮するそうだ。

 現在の生薬の高騰と中国の中医学の世界標準化の動きは日本にとって大きな問題点をはらんでいる。日本の問題点を列挙すると以下のとおり。

① 生薬の高騰は保険対象外の場合、それ自体患者負担の増大となり実際ここ1年の間に2倍から5倍ほど価格が高騰している。

② 生薬が保険対象の場合は薬価基準が引き下げられており、一方で生薬の価格が上がると漢方薬で利益を出せなくなる。こうなると薬局ではこの生薬を扱わなくなり薬が消える。

③ 日本は生薬の8割強を中国から輸入しているが、レアアースとまったく同じ状況になり入手が困難になってきている。このため日本の漢方製薬メーカーは日本国内での生産拡大に乗り出し、休耕田やタバコ作の代替に漢方薬の原料栽培に取り組みだした。
こうした取り組みはかなり期待できるが中国でしか出来ない生薬もある。

④ 中医学が世界の標準化になると日本独自で開発してきた漢方薬が中医学の漢方薬で駆逐される可能性がある。
また原料を中国独自なものに限定されるとレアアース問題と同じく中国に漢方薬の原料を握られる。

⑤ 日本では西洋医学の補助との位置づけで医師免許があれば漢方薬の処方を出来るが、中医学では西洋医学とは別の医師免許が必要になっている。
日本の医者も海外では中医学の免許がないと漢方薬の処方が出来なくなることが予想される。


 上記のような問題をはらんでいるためISO標準化部会で中国、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパの23カ国が標準化制定に取り組んでいる。
現在漢方医療の先進国は中国、日本、韓国の3カ国だが、中国と韓国が自国の漢方医療を世界標準にすべくISOで対抗している。
一方日本は現在蚊帳の外の状況だ。
このまま推移すれば漢方は中医療一色になり、原料も中国に完全に押さえられてしまう可能性が高い。

注)なお韓国では韓医療という。

 もっとも日本では携帯と同様にガラパゴス化して生き延びる道もあるが、今から1500年前に中国から導入し、その後日本独自の漢方として発展してきた漢方医療を日本国内だけに閉じ込めておくのは世界遺産を海外に開放しないようなものでまことに惜しいことだ。

注)残念ながら日本では戦略と言う発想が乏しい。ガラパゴス化して日本国内だけの市場を確保すればいいと考えるが、中国はアメリカと同様戦略の国だから、中医療を国際標準にして世界の漢方医療を中国の支配下におこうとする。
そして日本は泥縄式に中国への対応に追われている。


なお、クローズアップ現代の記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/nhk_2/index.html

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