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(24.4.16) ドキュメンタリーwave 嘆きのギリシャ 700ユーロの世代の真実

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 今回見たドキュメンタリーwave嘆きのギリシャ 700ユーロの世代の真実」はなかなか見ごたえがあった。
700ユーロの世代とは月収が最低賃金に近い約7万円で、かつこの賃金でも「若者の二人に一人は失業者だと言うレポートだった。

 「月収が7万円か」感無量だ。
と言うのも私が60歳で退職した5年前、さらに職場に残った場合の賃金が20万円だったからである(61歳から65歳までの賃金水準)。
私はそのあまりの低さに驚いて、「そんな低賃金で働くなら働かないほうがましだ」と思い退職したのだが、この水準は60歳以上の一般の働き手の水準であることを後から知った。
そして私が働く気を失った20万円は今のギリシャの若者にとっては破格の賃金水準になっている。

 このドキュメンタリーは2月13日にギリシャ国会で緊縮財政法案が可決され、それと見返りにEUから1300億ユーロの資金援助が行われた日の前後のギリシャの若者の行動を追ったものだ。
番組に出てきた若者はELEという国の債務を監査する会のメンバーだった。

 ELEは国の債務を調べ、それが公的な債務私的な債務かを分類し、私的な債務は返済義務がないという運動を起こそうとしていた。
私的な借金は返すな、踏み倒せ」と言うことだが、貸した側からすると私的であろうが公的であろうが貸し出しは貸し出しだから返済してもらわなければ金融行為が成り立たない。

 ギリシャの債務が膨れ上がったのは2001年のユーロ加盟からである。
それまでのギリシャ国債はまったく信用がなかったが、ユーロの一員になったことでユーロ圏が後ろ盾になった(ギリシャをユーロ圏が救うと思われた)。
それ以降ギリシャはいくら借金をしても市場が応じてくれたが、それが不動産バブルを発生させた。

 ギリシャでバブルが最盛期だったのは2004年のギリシャオリンピックの頃で、ギリシャ中に高速道路や競技場や飛行場を作りまくっていた。
資金はギリシャ国債を発行すれば湯水のように集まったので、日本の不動産バブルと同じで地方公共団体も不動産投資にのめりこんでいた。
土地を購入すれば何倍にも収益が上がる。借金をしないのは馬鹿だ」。

 しかし2008年のリーマン・ショックがすべてを暗転さしてしまった。持っていた不動産が値下がりし、企業は倒産ラッシュとなり、投資物件は焦げ付いて塩漬けになり借金だけが膨らんだ。
さらにこの状況を複雑にしたのは09年に政権をとったパパンドレウ首相が「前政権の債務残高は粉飾があって実際は債務はさらに多い」と公表したからだ。

 元々ギリシャの経済数字が粉飾があるのは公然の秘密で、公表したパパンドレウ首相もその程度の感度で「だから選挙公約を守る資金がない」と言いたかったのだが、市場のほうはパニックに陥ってしまった。
それまであえて知らないことにして舞い上がっていた市場に「本当の事実」パパンドレウ首相が知らせたことによって格付会社がギリシャ国債の格付の引き下げに走ったからだ。

注)市場は格付という虚飾の上で取引がなされており、格付会社は明確な事実が公表されない限り虚偽の事実を元に格付けを決定している。

 以来ギリシャ国債の利回りは30%以上に上昇し、実際はギリシャ国債を購入する金融機関が消えてしまった。
一方でギリシャ国債の返済日はほぼ3ヶ月ごとに迫り、この借換えができなければギリシャは倒産する運命に陥っている。

 ギリシャは巨額の債務が発覚したあとはトロイカと称するIMF、ECB(欧州中央銀行)、EUの実質的な管理下におかれ、トロイカが提示する、① 最低賃金の引き下げ、② 賃金カット ③ 公務員の削減、を飲まなければEUの支援は一切受けられないことになっている。

 番組ではELEのメンバーの女性が20億円の借金を独断で行った市長に「借り入れは合法か?」と詰め寄っていた。
この20億円トロイカの裁定で国の借金と認定されたものだが、この女性にとっては私的な債務で許しがたい汚職とみて追求していた。
一方前市長は「無担保で支払期限が25年と言う破格の条件だったので借り入れを実施し、不動産を購入してショッピングセンターを建設する予定だった」と弁明していた。
商業施設が建ったらすぐにでも返済できる。市民のためだ」とあくまで強気だったが、実際はそのような建設は金輪際できそうもない。

 ギリシャで起こっていることはバブル崩壊後の日本と同じだから別に驚くことはないが、日本との相違は市長と言う公職についている人が独断で借金をしまくっていたと言うところだろう。
こうした借金は経済が好循環にあれば問題がないのだが、反対に悪循環に陥るといっぺんで問題が表面化する。
日本で言えば第3セクターの倒産がそれだ。

注)ギリシャでは日本の自治体がしたような第3セクターを作ってそこで自由に借金をするような手間を省いて直接市長が借金をしていた。

 
ギリシャで起こっていることと日本で起こっていることはいづれも不動産バブルの崩壊で変わりがない。
相違はギリシャは国の借金の約8割が外国銀行であるのに対し、日本の場合は外国銀行の割合が10%以下と言うところだろう。
さらにギリシャは金融政策をECBに握られているのに、日本は日銀という日本の中央銀行が行っていることだ。

注)このため日本は独自のインフレ政策を採れるがギリシャにはそれができず残された手段は緊縮財政しかない。
なおインフレ政策とは実質的に消費税の値上げと同じ効果をもつ。
毎年1%インフレが発生すれば5年間で5%の消費税増税に当たり、国債は5%相当分減価される。

ELEのメンバーがいくら騒いでも結局はギリシャ債務はギリシャ政府トロイカの間で決められていく。
若者は無力感にさいなまれて自殺をしようとしたり、あるいは「残された道はギリシャを出て行くことだ」と言っていたが、実際破綻した国家の若者は19世紀のアイルランドの若者がそうであったように他国で働き場所を見つける以外に生きる手段はない。

注)
トロイカとの交渉で金融機関は50%相当の棒引きに応じたから実質的にはELEの運動は実ったことになる。


なお、ギリシャ経済については以下に時系列的にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44468201/index.html



 

 

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