(24.3.13) 週間エコノミストの警告 「円安時代の到来」は本当か?
週間エコノミストが「円安が来た」という特集を組んだ。現在の状況は「長く続く円安時代の始まり」だとの判断だ。
確かにこのところの日本経済の実態は「円安時代到来」と判断してもおかしくない兆候がある。
貿易収支は11年度は赤字で、これは輸出産業が日本から逃げ出してしまった結果だから今後とも継続する可能性が大で、本年1月も大幅な赤字になっている。
もっとも貿易収支が赤字でも所得収支が大幅黒字で結果的に経常収支が黒字であれば何も問題ない。
ちょうど定年退職者が給与所得がなくなっても年金といままでのたくわえが十分あれば生活にはなんら支障がないのと同様だ。
問題はその経常収支に赤ランプがともったことだ。
12年1月の経常収支が4373億円の赤字になったことに世界中の投資家が腰を抜かさんばかりに驚いた。
日本経済は少なくとも経常収支は黒字と判断していたからだ。
「どうしたんだ、円も駄目なのか、かえって米国の経済のほうが底堅いのではなかろうか・・・・・・・・」
注)12年1月の財務省統計によると貿易収支は▲1兆3816億円、所得収支が+1兆1326億円だった。
経常収支=貿易収支+所得収支+サービス収支+その他
このところ資金はドルとユーロに向かい円安の傾向はますます加速しそうだ。さっそく「豪ドルやブラジルレアルが上昇しそうだ」と外貨資金に目が移りだした。
週間エコノミストの判断は日本は輸出産業の弱体化で経済が弱り、過去のたくわえだけでは生活できないので円安に推移し、2014年には180円の円安もありうるというものだ。
確かに実体経済だけを見ると週間エコノミストの判断も無理からぬところがあるが、私は必ずしもそうはならないと見ている。
その最大の理由は現在の為替相場の動きは実体経済を反映しているだけでなく、各国の金融政策により多くディペンドしているからだ。
アメリカは11月の大統領選挙をひかえて景気対策一辺倒になっている。
GMやフォードの復活はオバマ政権のトヨタつぶしの結果だが、これが功をそうしてGMは過去最高益をあげるほどになった。
失業率も徐々に低下の傾向を見せ悩みの住宅価格の低下も底に到達してきたような兆候も見える。
「見よ、米国景気は力強く回復してきた」オバマ大統領は鼻高々だ。
しかしこうした米国景気の一見回復基調にある状況はFRBのバーナーンキ議長が史上最大規模の金融緩和策を続けてきた結果だ。
ドルは止め処もなく印刷されて市場にばら撒かれているので(これをヘリコプターで札をまくという)少しでも需要が逼迫したと見られている原油などにはなだれをうって資金が流れ出した。
これに輪をかけた金融緩和策はECBが行った100兆円規模の金融緩和で、おかげでEU各国の金融機関はユーロでジャブジャブになっている。
もちろん日銀も10兆円規模の緩和を行った。
こうした中央銀行の金融緩和策はその規模が大きい通貨ほど通貨安になる。
その結果実体経済と金融緩和策との綱引きがおこなわれ、為替相場の変動として現れる。現在は日本経済のあまりの悪化に世界の投資家が度肝を抜かして円安が進んでいるが、アメリカの場合は選挙が終わった段階で化けの皮ははがれそうだし(金融引き締めに入る)、EUは再びギリシャやポルトガルの問題が表面化してユーロ安に進むことは大いに予想される。
繰り返すが外国為替相場は実体経済を反映するだけでなく、各国の金融政策を色濃く反映する。
特に最近のような超金融緩和策をアメリカ、EU、日本が競争で採用すると実体経済より金融政策によって為替相場は左右されやすい。
だから週間エコノミストが言うような一方的な円安局面を予想することは間違いだと私は思っている。
なお為替相場に関する記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45690596/index.html
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コメント
週刊エコノミストといえば、節操のない表紙、主張で最近話題になりましたよね(笑
http://www.j-cast.com/2011/10/07109330.html?p=all
投稿: こっそり | 2012年3月13日 (火) 12時22分