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(24.2.23) NHKドキュメンタリーWAVE ケニア・ナイロビのスラム一斉撤去

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 衝撃的なレポートと言える。昨年末から今年にかけてケニアの首都ナイロビにある巨大スラムの撤去がつぎつぎに行われ、首都人口の約半分160万人と言われるスラム人口がナイロビから追い出されようとしている。
信じられるだろうか、約半分がスラム暮らしなのだ。それをすべて追い出すという。

 私のようにケニアと言えば陸上王国でめっぽうマラソンが強く、また自然公園の宝庫だぐらいしか知識のなかったものにとって、この人口310万人の都市で起こっていることは衝撃だった。

 ここには一箇所で人口100万人世界最大のキベラスラムがあるのだが、ケニア政府は何十年にもわたってこうしたスラムを放置してきた。
道路も上下水道も学校も、その他公共施設は何一つ政府は建設しなかったが、住民が自然発生的に自治組織をつくり小学校の建設等を行ってきた。

 また日本からはNPO法人の無料医療チームが派遣されて、宮田さんと言う医師が実に献身的な医療活動を行って、乳幼児の死亡率を劇的に改善させていたという。
ところがそのスラムで昨年末から急に強制的に取り壊しが始まり次々にスラムが消え始めた。
政府の発表では「テロリストがスラムを根城に暗躍しているので、その根を断つ」のが目的だというが、これは明らかに虚偽である。

 現在ケニアはいわゆる新興国の仲間入りをするテイクオフの段階にあり、ここ数年のGDPの伸び率は5%程度で、この発展を支えているのは外資である。
有り余る外資が投資機会を求めてケニアに流れ込んでおり、首都ナイロビは建設ラッシュで沸いている。

 ところがこの建設ラッシュにとって一番の障害は国有地や鉄道用地無許可で次々に拡大しているスラムで、ケニア政府にとってこの建設用地確保が最大の政治課題になっていた。
外資は当然ケニア政府の大統領周辺に多額の賄賂を提供して建設許可を求めてくるし、結果的には先進都市に生まれ変われるのだから大統領としては願ってもないチャンスだ。
そこでテロ対策を理由に強制撤去をはじめた。

注)ケニア政府の要人は昔から汚職にまみれているが、アフリカではこれが常識で賄賂がないと何も始まらない。

 特に中国インドがこのスラムの再開発事業に積極的に乗り出していたが、強権でスラムの住民を追い出してその後に近代的なビルを建てるのは中国の専売特許のようなものだ。
大統領、ここは国有地なのですから国家が土地を取り返すのになんら支障はありません。警察力を持ってすれば必ず成功します。これは中国で実際に行ってきた開発手法です」なんてサジェスチョンをしているのだろう。

 確かに近代的なアパート群が林立すればそこには新たに生まれている中産階級が住み着き、また外資系企業の職員が住むことになる。
一方スラムの住民はさらに郊外のスラムに移動するか故郷に帰るしか道はない。

 無料医療チームのリーダーの宮田さんが「かつてはスラム住民のための医療を外国に依頼していた政府が、今では外資を呼び込んで今度はスラムを取り壊している。人間のやっていることとは思われず、気が狂いそうだ」とポツリと話していたのが印象的だった。

 現在アメリカ、日本、EU諸国の中央銀行が資金を市場にジャブジャブに流している。
そうした資金は先進国に留まることはないが(したがって日本もEUもアメリカも景気は回復しない)、一方発展途上で成長余力があるケニアのような国には怒涛のごとく流れ込んでくる。
その資金が最も集中的に投資されるのが近代的なアパート群で、中産階級が多くなればなるほどアパートは瞬く間に販売されて行く。

 ケニアは1970年代以降国家財政が疲弊し、スラム対策を何一つ行ってこなかった。それがここ数年の外資の導入を契機に一気にスラム取り壊しに進んでいる。
新興国と言われる中国レベルになれば何らかの補償や、新たな住居の提供といった懐柔策が採れるが、ケニアはまだそこまで到達していない。
そのため政府は単にスラムを取り壊して住民を追い出すことしかできない。
住居を取り壊された住民の一人が「俺はテロリストになってやる」といっていたが、ここケニアでは資本主義経済の最も初期段階の露骨な生存競争が行われている。

 大統領周辺は賄賂で潤い、また成長の恩恵を受けた中産階級は瀟洒なアパートに住むことができるが、都市人口の半分のスラムに住む貧困層はただ耐えることしかできないようだ。

なおNHKのドキュメンタリーシリーズは以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/nkk/index.html

 

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